3話
あの倒木の下で、俺は何日か過ごした。
何日、と言ったが、正確なところはわからない。明るくなって、暗くなって、また明るくなる。それを何度か数えるのをあきらめた頃には、穴の中の匂いが自分の匂いになっていた。腹は減り続けていたが、不思議なもので、減り続けていると、あるところから先はそれほど暴れなくなる。静かに、底のほうで、俺を削っていくだけになる。
水は、夜のあいだに飲みに行った。あいつが——最初に俺を追ったやつが——昼に水場を使うのを、俺は陰から見ていた。だから昼は動かず、暗くなってから、音を立てないように水際まで這っていった。
そうやって、いくつかの夜をやり過ごした。誰かに教わったわけじゃない。ただ、見ていて、そうするのが良さそうだと身体が決めた。俺の身体は、俺よりずっと賢かった。
だが、水だけでは、底のほうの削れは止まらない。
ある朝、俺は穴を出た。腹がそうしろと言ったからだ。何かを食わなければ、この静かな削れがいつか俺を全部削り終えてしまう。それくらいのことは、言葉がなくてもわかった。
最初に狙ったのは、大きな下草の葉に止まっている虫だった。拳ほどもある、緑色の、丸っこいやつだ。動きは鈍くて、手を伸ばせば届きそうに見えた。
実際には三度失敗した。鈍いくせに、俺の手が近づくと、そいつは短い脚で葉の裏へ回り込んでしまう。速くはないのに、俺の手のほうがもっと遅かった。
四度目に、俺は手を伸ばすのをやめた。伸ばすと逃げるなら、伸ばさなければいい。そいつのすぐ横に手を置いて、動かさずに待った。腕が痺れて痛みに変わるまで待っていると、そいつがようやく油断して、こっちへ脚を進めてきた。その一歩ぶんだけ、手を閉じた。
手の中で暴れられて危うく放しそうになったが、放さなかった。ここで放したらまた一からだと、今度は頭のほうが言った。生きるために頭が何かを決めたのは、たぶんあれが初めてだった。
捕まえたはいいが、どうやって食うのかがわからない。硬い殻に包まれていて、とても口に入るものには見えなかった。困った俺は、とりあえず近くの石にそれを叩きつけた。手の中のものをどうにかしたくて、いちばん手近な硬いものにぶつけただけだ。
殻が割れて、中から柔らかいものが見えると同時に匂いがした。腹の底がその匂いにぎゅっと反応した。うまそうという言葉はまだ知らなかったが、身体はその匂いをはっきり歓迎していた。
口に運ぶと、ひどい味だった。それでも飲み込むと、腹の底で俺を削っていたものが少しだけ大人しくなった。俺は殻の中身がなくなるまでそれを食った。
食い終わって手のひらの空の殻を見ていたとき、妙な感じがした。さっきまで手の中で暴れていたものは、俺が食ったからもう暴れない。俺が生きるために動かなくなった。腹がそうしろと言ったんだから正しいはずなのに、胸のあたりに収まりの悪い何かが残った。それにも名前はなかったから、俺はその収まりの悪さを胸の底にそのまま置いて、殻を捨てて、次の獲物を探しに動きだした。




