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望まぬ転生をした俺は、三度目の生を生きる  作者: 放浪猫
緑の怪物

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14/40

14話

いまだ2回目の生の話が続きます…

 日が過ぎていった。

 動かなかったもう一人——憎しみの目をした、あれは、少しずつ動けるようになってきていた。頭の傷が癒えてきたらしい。起き上がり、壁づたいに数歩なら歩けるまでになった。だが、俺への目つきは変わらなかった。俺が食い物を持って戻るたび、あれは俺を睨んだ。俺はあれの前にはあまり出ないようにした。食い物は剣を教えてくれたほうに渡して、あとは木の陰に退いた。それが俺たちの暗黙の決まりのようになっていた。


 剣を教えてくれたほうとは、逆に、近くなっていった。

 毎朝、俺たちは剣を交えた。交えるといっても、俺が教わるばかりだ。だが、日を追うごとに俺の振りはまっすぐになっていった。こいつはそのたびにうなずいた。時々、あのかすかな笑みを見せてくれた。それが見たくて、俺はいっそう剣を振った。


 あるとき、俺は腕に深い傷を負った。

 狩りのときだ。手負いの獣に爪で腕を裂かれた。かなり深かった。血が止まらなかった。俺はそれでも、大したことだとは思わなかった。傷は放っておけば治る。俺の傷はいつもそうだった。だから俺は、その腕のままねぐらへ戻った。


 剣を教えてくれたほうが俺の腕を見て、顔色を変えた。駆け寄ってきて、俺の腕を掴んで傷を検めた。何か慌てた様子で言葉を発した。それから、自分の服の布の切れ端を裂いて、俺の腕に巻こうとした。手当てというものを、俺はそのとき初めてされた。


 くすぐったいような、変な感じだった。誰かに傷の手当てをされる。そんなことはもちろん初めてだった。俺の傷はいつも俺一人のものだった。痛いのも、治るのも、一人。それを、こいつは自分の服を裂いてまでなんとかしようとしている。俺はされるがままに、その手を見ていた。丁寧な手つきだった。傷に障らないよう、そっと布を巻いていく。その真剣な横顔を、俺は間近で見ていた。


 だが——手当てが半分ほど進んだところで、こいつの手が止まった。


 布をそっとめくった。傷をもう一度検める。そして、こいつは俺の顔と傷とを交互に見て、何か信じられないものを見るような、そんな目をした。

 俺には、なぜこいつがそんな目をするのか、わからなかった。

 だが、今ならわかる。あのとき俺の傷は——ついさっき負ったばかりのあの深い傷が、もう塞がりかけていたのだ。手当ての布を巻いている、そのわずかな間に。血が止まり、肉が盛り上がってくる。そんな傷の治り方を、こいつは見たことがなかったのだろう。人間の傷は、そんなに速く治らない。


 俺はそれが普通だと思っていた。だから、こいつが驚いていることの意味も、そのときはわからなかった。こいつはしばらく俺の腕を見つめて、それから、何か考え込むように口をつぐんだ。

 その日から、こいつは時々、俺のことをあの考え込むような目で見るようになった。


 言葉を教わりはじめたのは、そのすこし後だ。

 きっかけは些細なことだった。ある日、こいつが水を飲みながら、その水を指さして何か短い音を口にした。俺を見ながら。もう一度、水を指さして同じ音を繰り返す。


 俺には最初、何をしたいのかわからなかった。こいつは根気強くそれを繰り返した。水を指さし、音を発する。俺を見る。何度も。やがて俺は気づいた。こいつはあの音が水のことだと、俺に教えようとしているのだ。

 俺は真似て、その音を口にしてみた。うまく言えなかった。俺の喉はそういう音を出すのに向いていないらしい。ひどく歪んだ音しか出なかった。それでも、こいつはうなずいた。そして、嬉しそうに笑った。


 それから俺たちは、時々そうやって言葉の真似事をするようになった。水。木。空。火。こいつがあれこれ指さしては音を発する。俺がそれを下手に真似る。ほとんどの音はうまく言えなかった。俺の口ではどうしても、あのなめらかな響きにはならなかった。それでも、その時間が俺は好きだった。


 通じ合うということが、こんなにも嬉しいものだとは知らなかった。言葉がひとつ、またひとつと、俺とこいつの間に積もっていく。そのひとつひとつが、俺とこいつとを細い糸で結んでいくようだった。俺にはもう、こいつがただの「剣を教えてくれたほう」では、なくなっていた。


 それが誰なのか。こいつがどこから来て、どこへ帰るのか。俺にはまだ何もわからなかった。わからないまま、ただ俺は、この、水や木や空の名を教えてくれる者と過ごす時間を、一日でも長く続けたいと、そう願うようになっていた。


 ——だが、その願いがどれほど身勝手なものか、俺はまだ知らなかった。


 こいつには帰るべき場所があった。守るべきものが待つ場所が。俺の願いは、それを知らずにいたからこそ抱けたものだった。

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