27.エミリー・ブライトウェル「家政婦は名探偵」シリーズ
先日、たまったま手に取ったのですが、おもろかったのでご紹介なのです。
舞台はヴィクトリア朝後期らへんのイギリス。
ポンコツだけど無類に人の良い警部補を、家政婦を中心にした使用人たちがサポートして、どうにかこうにか事件を解決させる(ただし、ご主人様には気づかれずに!)というお話なのです。
シャーロック・ホームズとほぼ同時代&コージー系の雰囲気ながら、捜査もしっかりやるよ!という素晴らしいバランス。
公式のシリーズ解説はこちら。
担当編集者自身によるシリーズ紹介——エミリー・ブライトウェル〈家政婦は名探偵〉シリーズ(東京創元社・M)
https://honyakumystery.jp/1477903141
原作は2016年時点で35作まで出てるとかで、大シリーズですね。
ま、翻訳目は4作までなんですが。
翻訳ミステリ、そんなに売れないから…
ただ、35作まで出てるっていうのは、非常によくわかるのです。
主人公チームのバランスが、鬼のように良いんですね。
チーム型のミステリやるなら、これ読んで勉強するしかあるまい…ということで、そのへんをご紹介していきたいと思います。
<主人公チーム>
・ご主人様:ウィザースプーン警部補
伯母さんの遺産として、屋敷を相続した独身の警部補。
雰囲気的にアラサーくらいの感じなのかな?
内気(特に女性には)、めちゃくちゃ人がいい、色々とポンコツ…という人。
あと、死体がめっちゃ苦手。
もとは、警視庁の記録室勤務で、文書管理をしていたのに、なぜか捜査に異動させられたのだけど、第一作だと、事件関係者になにを聞いたらいのかもよくわかってなかったり。
たぶん実際には書かれてない事件で、彼が難事件を解決してしまった流れになってしまった的なアレなのかな?
めっちゃ素直でいい人なので、こりゃもう使用人一同、応援するやろ感。
・ジェフリーズ夫人
家政婦(屋敷の家事を取り仕切る人)。いかにも穏やか、朗らかな見かけのコミュ強。
50代の未亡人なんだけど、亡くなった夫はヨークシャーの警察官で、めちゃくちゃ有能&わりと捜査のやり方を話してくれるタイプだったようで、警察の動き方を完全に把握。
案外アクティブで、「ご主人様の忘れ物を届けに〜」を言い訳に、事件現場にもおでかけしちゃいます。
まあ出勤前にこっそり抜いてたんですけど。
「この事件、なにもかもわからないよ…」って、しょんもりしがちなご主人様を温かく励ましながら、巧い具合に誘導していきます。
・ベッツィ
親を失い、路頭に迷っていたところ、警部補に拾われ、なにもスキルはないのにメイドとして働くようになった女の子。
下町訛りが抜けなかったり、難しい言葉はわからなかったりするんですが、でも頭が良くて機転も効くタイプ。
・グッジ夫人
料理人。台所からほぼ出ないけど、出入りの商人とか屑拾いとかを通じて、ロンドン中の噂を知っている人。料理めちゃ巧い。
・ウィギンズ
警部補の伯母さんに仕えていた、まだ若い従僕。といっても、ご主人様の身の回りの世話ではなくて、外回りの掃除とか、力仕事系が中心なのかな?
そこまで頭が良くないのか、他の人の話についていけなくて、「それどういうこと??」とか聞く場面も多いけど、たまにめっちゃ鋭いことを言ったり。
・スミス
警部補の伯母さんに仕えていた御者。警部補は、自前の馬車を使うことはあんまりないので、馬や馬車を売ってスミスを解雇しても良かったのに、引き続き雇ってくれてるので、恩義を感じてる。
パブでの聞き込みとか、治安の悪いところ担当。
この6人に加えて、サポートメンバーが執事つきでやって来たりするのですが、ちょっとバレがアレなので内緒ということでででで。
事件は、「なんかえらい評判の悪い医者が毒殺された」とか、「知り合いのメイドが行方不明になって、どうもきなくさい」とか「強権型の裕福な女性が殺された」とか「テムズ川に射殺された遺体が浮いていた」とかとかそんな感じの古典ミステリあるある系。
降霊術とかが絡んできたりするのもお約束!
そんな事件を、ジェフリーズ夫人以下使用人チームが、ポンコツがなんで難しい殺人事件を解決しまくれてるの? と疑ってくるニーヴンズ警部補を巧い具合に躱したりしながら、びしばしと解決していくのですが……
以前、篠田真由美の「レディ・ヴィクトリア」シリーズがnot for meだったという話をこの連載で書きました( https://ncode.syosetu.com/n6586ia/17 )。
読んでいくうちに、なんでアレが自分にはダメだったのか、わかってきたりもしました。
こっちの「家政婦は名探偵」は、チーム内で揉めたりもするんですよ。
手柄争いみたいな時もあるし、そんなところに捜査に行ったら危険だろうとか怒っちゃったり、なかなか帰って来ないんで、心配のあまり半ギレしたりとか。
ジェフリーズ夫人がとりなしたりするんですけど、夫人も全部介入するわけじゃなくて、まぁちょっとこれは放置しとこで、そのままにしとくこともあるんですよね。
全員でご主人様のためにー!で一丸となって動けて、しかもみんな有能で、仲が良くて、揉め事が起きない、みたいなのって、結局リアルじゃないんですよ。
ちっちゃい揉め事や行き違いって、人間がいれば絶対発生するし、そういう時にこのキャラはどうするかってのをやらないと、キャラが立たないし、薄っぺらく見える。
最近、なんでかロボットアニメを解説するYouTubeチャンネル「メカ部」さんにくっそ嵌っているのですが、テレビアニメの場合「1話で問題の提示&問題解決があると、その話の満足感が高い」(例として上がっていたのは、確か初代ガンダム16話「セイラ出撃」の塩のエピソード)みたいな話をされていて、なるほどと思ったりしたのです。
コージー系ミステリが強いのって、こういう人間関係のドタバタを描きやすいので、大筋の解決以外に、「いやこれどーすんの?」をちょこまか入れられるところにもあるのかな? と思いました。
というか、ご主人様はその後結婚できたのかとか知りたいので、創元社さんはそのあたりの話だけでも出してー!
35作まで行ってるなら、絶対、素敵な女性との出会いとか求婚とか結婚とかやってるはずー!




