第4話 セカイとガルダと大きな口
俺は気絶しているマーフを
坑木にロープでぐるぐる巻きにして
縛り付け、ガルダに話しかける。
「なぁ、100ゴールドってどんくらいの価値なんだ?」
「街で働いてる人間の月収が
20ゴールドより少しあるくらい。」
月収が20ゴールドちょっと……
1ゴールドあたり日本円の1万円と同じくらいなのか?
つーことは、100万円くらいになるのか。
半年近く働いて給料全てを返済にあてて、
返し切れるレベルか……
そりゃきついな。
「返す算段はついてんのか?」
「正直、厳しい。
私の武器はなかなか売れないし……
けど、それよりもマーフに手を出したのがまずい。
数日後には別の取立て人が来る。
しかも今度はより多く、強い奴が。」
まーそりゃそうだよな。
借金取りをやっちまったらそうなるか……
「わりぃ。ガルダ……
なんの考えもなくやっちまった。」
「平気。
セカイの行動はとっても嬉しかった。
腕、手当てしないと。」
掠っていた攻撃は思ったより深かったみたいで、
それなりに血が出てる。
今更、めちゃくちゃ痛くなってきた。
「これくらい問題ねぇよ。」
「ダメ。ちゃんと応急手当てする。」
ガルダはそう言いながら
俺が入ってた、木箱から包帯を持ってくる。
ちょっと包帯がくすんだ色をしてて、
衛生面が気になったが、口には出せなかった。
「マーフが目覚める前にここを出ないと。」
ガルダは急いで包帯を巻きながら、
マーフの方をチラチラと見ている。
「なんでだ?
あんなに縛ってるんだぜ?
目が覚めても何もできねぇだろ。」
「獣人は力がとても強い。
マーフはセカイのことを
すごく舐めてたから良かった。
マーフが本気なら
最初の一撃で剣ごと両断されてた。
あんなロープも目が覚めたら自分で千切れる。」
そういいながら、ガルダは荷物をまとめ始める。
マジか……
体から血の気が引いていくのを感じる。
そんなやばいのと戦ってたのかよ。
「平気?
顔が真っ青。
怖くなった?ふふふ。」
小さな布袋を持ったガルダに話しかけられて
我にかえる。
「こ、怖くねぇぜ。
怖くはねぇけど、荷物がまとまったなら
さっさとトンズラだ。」
「怖いんだ。
隠すことないのに。」
からかうガルダを無視しながら、俺らは外に出た。
「行く当てはあるのか?」
「一応ある。
ここから南に行ったところに、
色々な亜人が住む場所がある。
取り敢えずそこに行ってみる。」
「一応?」
「私も噂に聞いただけで、
その村に行ったことはない。
結構歩くから、頑張ろう。」
「マジかよ。
ほんとに大丈夫か?」
「多分。」
「かっー。
急激に不安になってきたぜ……」
まぁ、人がいるところに行けば、
檄哲がいるかもだし、頑張るか――
洞窟が出てから体感4キロくらい歩いたか?
今の俺たちは森の中を歩いている。
「ぜぇ、ぜぇ……
なぁ、ガルダ……
そろそろ、休憩に、しねぇか?」
「そうしてあげたいけど
この森は危ないから休憩に向いてない。
限界なら、おんぶしてあげようか?」
おんぶか……もう足は限界だし、
ドワーフのガルダは
力持ちらしいから遠慮もする必要はないが
女に背負われるのは流石にダサすぎるな。
「いや……おんぶは……遠慮しとく。
てか、この森危ないのかよ。」
「遠慮しなくて良いのに……
そう。この森は噂だと、巨大な蛇が出てくるらしい。
通りかかった人を丸呑みするとか。
本当はあまり通りたくなかったけど、
ここを避けるとかなり遠回りになるから。」
「まぁ、それなら仕方ねぇか。
しかし、巨大な蛇ねぇ。
……なぁ、それってもしかして、
なんか縦縞模様だったりするか?」
「うん?
噂を聞いただけだから、見た目は知らない。
なんで?」
「あっちによ。
なんか、赤と黒の縦縞の壁みたいなのがあるからさ。」
俺は数メートル先を指を指す。
よくみるとその縦縞は少しずつ動いている。
「……ほんとだ。
動いてる。」
縦縞の移動先を見ると、
大きな目玉と目が合った。
目玉だけで俺の体と同じくらいはあるか?
目の下には大きな口と蛇特有の細い舌が出て、
舌なめずりをしている。
「……おんぶしてもらって良いか?」
「……うん。」
俺は急いでガルダに背負ってもらう。
巨大蛇は俺らの方に口を開けながらやってくる。
「走れー!!」
ガルダは一生懸命、走ってくれるが、
力は強くても足が速いわけではないので、
木々を薙ぎ倒しながら進んでくる蛇からは
逃げられそうにない。
「なんか、武器ないのかよ!」
「布袋のなかに、折りたたみナイフが入ってる!」
「そんなもんで勝てるかー!」
俺の文句も虚しく、俺らは足元の地面ごと
蛇に丸呑みされた。
蛇の舌によって、胃袋の方まで押し込まれる。
胃の中は生暖かくて、酷い匂いが鼻につく。
また、暗いところに逆戻りかよ。
って、呑気なことを言ってる場合じゃねぇ。
胃液が服を溶かし始めやがった。
「おいおい!どうする?
このままじゃ、消化されちまうぞ!」
「……短い付き合いだったけど、
セカイと一緒で楽しかった。」
「諦めてんじゃねぇ!
なんか方法はあるはずだ!
その袋、何持ってきたんだ?」
「家族の写真。
あとは、ハンマーとナイフ。」
「うーん、ナイフはどうだ?
体内で引っ掻き回したら、なんとかならないか?」
「ダメ。
壁はブヨブヨしてて刺さりもしない。」
「マジかよ……
じゃあ、魔法は?」
そういうと、辺りが明るくなる。
「私の魔法はこうして、暗いところを照らすだけ。
体内で使っても何もできない。
ごめんなさい。」
「謝んなよ。
しかし……どうするか。」
「……そうだ。
セカイの魔法は?」
「俺の魔法?
魔法なんて使えねぇよ。」
「もしかしたら使えるかもしれない。
セカイからはうっすらと魔力を感じる。」
「マジか?
でも魔法の使い方なんて、わかんねぇよ。」
「目を閉じて、集中してみて。
何かを感じたりしない?」
俺は言われた通り、目を閉じて
集中する。
体の中を流れる何かを感じる。
それを掴もうとした瞬間、
手のひらが熱くなった。
気づけば何かを握っていた。
ずっしりと重い、
どこか落ち着く懐かしいような感触。
「これは……銃!?
しかも、この形……ショットガンか!?」
俺は目を開けて、驚く。
いつのまに、こんなのを?
俺が魔法で出したのか?
「すごい。
セカイは創造系の魔法を使えるみたい。
でも、その、ショットガンって何?」
ガルダも俺の方を見て驚いてる。
武器屋のガルダが知らないってことは
この世界に銃は流通してないのか?
「詳しい説明は後にするが、
とにかく強力な武器だ。
武器屋なら興味湧くと思うぜ。」
俺は手に持ったショットガンを確認する。
二連式で弾は装填済み。
口径がバカみたいにでけぇ。
檄哲のおかげで使い方はバッチリだ。
「今から、こいつの威力を見せてやるから
下がって、よーく見とけ。
あと、耳は塞いでろ。」
「う、うん。」
あー。本当は俺も耳を塞ぎたいけど、
そんなこと言ってる場合じゃねぇ。
俺は蛇の腹に向けて引き金を引いた。
瞬間、鼓膜を殴りつけるような轟音が響く。
発射された弾は見事に蛇の腹を貫き、
大きな穴を開け、外の光が差し込む。
撃った後にどう、カッコつけようか考えてたが、
銃の反動で数メートル後ろに飛んだ俺は、
それどころじゃなくなった。
肩もいてぇし、とんでもねぇ威力だ。
フィクションでしか見ない飛び方しちまった。
「す……。セカ……」
キーンという耳鳴りが鳴り止まず、
ガルダになんて話しかけられてるのか
聞き取れない。
体に穴を開けられたせいで
蛇は苦しみだし、暴れ出す。
足場が不安定で、
なかなか立ち上がれずにいる俺は、
ガルダに抱えられ、蛇の中から脱出した。
蛇の様子を見ると、
最後の抵抗か、
外に出てきた俺らを顔で押し潰そうしている。
そうはさせるかよ。
「もう一発撃つぞ!
耳塞げ!」
ガルダに声をかけて、
俺は銃を構えようとするが、目眩が起き
体から力が抜け、銃を落とし、その場にへたり込む。
気持ち悪ぃ……
酷い車酔いしたときみてぇだ……
まぁ、車酔いしたことねぇけど……
思えば、銃を出した時点で少し気分が悪かった。
蛇の体内の匂いのせいかと思ったが、
もしかして、魔法を使った反動か?
俺が焦って銃を拾おうとすると、
ガルダが銃を拾いあげた。
「おい、まて!
素人が使えるもんじゃ、」
「もう、だいたいおぼえた。」
耳鳴りのせいで聞こえづらかったが、
もう、覚えたって言ったのか?
そんなわけ……
ガルダはすぐに蛇に向けて構える。
扱ったことのないはずの銃を、
正しく構えている。
マジか……さっきの一回で?
蛇をギリギリまで引きつけ、
蛇の顔が目の前に来たところで
ガルダは発砲した。
その瞬間に蛇の頭は熟れたトマトみてぇに吹き飛び、
蛇は動かなくなった。
至近距離でぶっ放したせいで、
俺たちは大量の返り血を浴びた。
血の匂いと胃液の匂いで最悪な気分だぜ。
具合も悪いしよ……
しかし……ドワーフってのは本当に怪力なんだな。
あのバカみたいな反動をものともせずに
ガルダは銃を肩に掛け、
俺にドヤ顔をしながら、親指を立ててきた。
お前そんな顔できるんだな……
血まみれのドヤ顔は怖ぇよ。
俺はガルダを鼻で笑いながら、
親指を立て返し、気を失った。
「ここまで読んでくれて、ありがとう。」
「セカイが気を失ったから、今回は私一人。」
「あのショットガンって武器。すごい。
あんなに大きな蛇を簡単にやっつけた。」
「セカイが起きたら、作り方を聞いてみる。」
「気に入ってくれたら、
感想やブックマークをしてほしい。」
「また、次回も見に来て。」




