二節ノニ
五十嵐さん目線に成りましたー、
まぁ、あまりにも阿久津さんが書きにくかった物で…
優香の過去話かな?
☆五十嵐さんの目線
「っな…⁈優香が居無いだと⁉」
俺はほんのついさっき襲撃の有った庭で怒声をあげて居た、
襲撃自体は簡単な物で、
駆けつけてくれた阿久津と共に退ける事が出来た…が、
その後、家に上がり、
優香になるべく家を出ない様に忠告しようと思ったら…
「えぇ、やはり、何処を探しても見つかりません…おそらく出かけたか…」
「阿久津!優香が行きそうな場所、徹底的にさがすぞ!草月は俺と一緒にこい!」
☆
それから街を草月と共に探したが、
先に家に戻って居たらしい阿久津から連絡が有って再び家に戻った。
そこで、
一度家に帰って来たのだが、
そこで俺は驚きの物を見た。
それは、
伊万里と草月の母親、優香の義母との結婚式での引き出物としてもらった皿の粉々にされた破片だった。
「これ…」
草月はまだ見て居無い、
今は休んでもらって居る、
それが今は幸運に繋がった様に思える。
「えぇ、伊万里さんと美琴さんの結婚の時の引き出物です…」
目の前の阿久津は苦い物を見る様な目で砕かれた皿を見つめて居た、
もしかしたら俺も今俺も同じ様な顔をして居るだろう。
「まさか…優香さん、気づいて居たんじゃ…美琴さんが本当の母親じゃ無い事に…」
まさか…そんなはずが無い、
これは俺たち伊万里とパーティーを組んだ奴らしか知らない事だし…
まさか誰かが教えるわけが無い。
「でも…そうとしか考えられないじゃないか!そう考えたら今までの優香さんの態度も説明が着く!だって!優香さんは…!」
「阿久津!これ以上はよせ!」
これ以上言ったらいけない、
それこそ誰かが聞いて居るとも限らない、
だが確かに今までの優香の事を考えれば…
俺は二年前の…美琴の葬式を思い出して居た、
今生きていれば俺たちと同じ、四十一だった筈だ。
それが二年前に、
ふとした事でその命を奪われた、
交通事故…それこそ不幸な…だ、
警察や俺たちは最初こそ反勇者派の陰謀を疑ったが、
その自動車に乗って居た女も即死だったと言う。
そして、葬式の時に、
当時中学生の優香と草月は学生服に身を包み、
母親の葬儀に参列して居た、
母親の亡骸に縋り付いて泣いて居た草月…
そして、それを冷めた目で見て居た、優香だった…
正直あの時の優香の目を見たとき、
俺は何も声をかけられなかった、
母親の死で呆然として居る、
草月の様に感情を表に出すのが上手く無いのだと、
その時はそう思う事にして居たのだが、
あの氷の様な目は今思い出しても気味が悪いと言わざる得なかった…
いや、それだけじゃ無かった…
これは俺だけ知ら無い事なのだが…
優香は母親の亡骸を目にして、
唇だけでこうつぶやいた様に見えたのだ…「やっと、死んだ」と…
その時は気のせいだと思っていたが、
今こうしてバラバラに成った皿を見て見ると、
伊万里よりも美琴の方が念入りに砕かれている様にも見える。
「一体…どう成ってやがる…」
例えそうだとしても、
何故伊万里の事を嫌うのかわからなかった、
草月の様に会わずとも慕うことが普通じゃないのか?
だけど…確かに今思えば草月が父親を…伊万里を慕う様な言動などを見せれば優香の顔からは表情は消えて居た、
いや、俺は…
まてよ⁉
「おい…阿久津…」
「ん?どうしたんですか?青い顔をして…?」
今や俺の心臓は異常に鳴って居た、
もしかしたら俺達は優香に、伊万里の娘に大変なことをして居たかもしれない。
「お前…一番最近に優香の笑ってる顔見たの…いつだ?」
瞬間、
阿久津の顔も、青ざめて居た。
☆
昔…それこそ十数年ぐらい前、
まだ草月や優香が小さかった頃…
優香はよく笑う女の子だった、
優香が生まれた時は母親ににて美人に成ると、
伊万里を冷やかして居た物だ。
だが…
いつからかそんな優香の笑顔を俺達は…阿久津も俺も、全く見ない様に成って居た。
たまにしか会えない俺は、
行ったら「五十嵐おじさん」と言ってこちらに駆け寄ってきてくれた物だった、
無邪気な笑顔に包まれて…
阿久津もそうだった、
阿久津の場合は必ず手土産などを持って行って居た様なので当時の優香や草月には俺以上に懐かれて居た筈だ。
他の英雄の面子にも、
優香は分け隔てなくその天使の様な笑顔を振りまいて居た、
だが…
やはり、いつしか俺達は優香の笑顔を見なく成って居た、
その時はその優香の笑顔が遠退いて行って居る事に気がついもしなかったのだろう…
だからこそ、いま気がついたのだ。
阿久津はブルブルと唇を震わしながら応えた、
「す、少なくとも…この二年間は…一回も見ていない…そもそも、顔を合わせる事自体が…年頃の女の子だから…って思って居て…」
違う…
二年ばかりじゃ無い筈だ…
それこそ、草月や優香がもっと押さなかった頃から…
徐々に俺達から優香が離れて行った時に…
「そうだ…優香さんが教会へ自分の足で行く様に成ってから…6歳ぐらいの時からはもう…既に…?」
⁈教会!
そうだ、まだ教会を探してなかった…だけど、まだ気になる事が有った。
「それに、いつからだ!優香が草月の事をあんな目で見る様に成ったのは…あれも、ほんのつい最近始まった事じゃない!もっと前…それこそ!」
そこまで言って俺は後ろからの気配に気がついた、
まさか!
後ろを振り向けばそこには、
案の定草月の姿があった、
目を見開いた姿の…伊万里によく似た草月の姿が…
「姉ちゃんが…」
絞り出した様な声で言う草月、
最悪だ…ここでは究極の悪手を打ったとしか言えない…
こんな話、聞かせるベキでは無かった、
それこそ、まだ能力の発言して居無い思春期の少年の前で…
「そ、草月くん…ちがう!いまのは!」
阿久津が必死にフォローを入れようとするが草月にはそれは耳に入って居無い様子だった。
頭を抱えて何かを思い出す様にして居る、
まるで…忘れてしまった何かを。
「違…う、あ、アレは…姉ちゃんは、お、オレ…姉ちゃんを護りたくて…其れだけだったけど…あ、アアアァァ…!」
そして、
草月は気を失った。
☆
俺達…俺と阿久津は今、普段優香が行って居たという教会に足を走らせて居た、
草月は悪いがソファーの上で寝てもらって居る。
元々の優香達の家はこの教会からは遠く無く、
十分六歳の少女でも行ける場所に有った、
それに…優香の本当の母親もこの教会を利用して居たらしい、
優香がお腹に居る時も…
クッ…!
そうだ、常に優香のアイデンティティの中心は聖書だった、
ある意味では生きる望みそのものだったかもしれない…
そして漸く教会の開かれた門の前にやって来た、
今は人もおらず、中で神父が俺達に背を向ける様に佇んで居たるだけだった。
俺達は靴のまま教会の中心に敷かれた質素な絨毯を踏んだ、
その音に気がついたのか、
十字架に磔に合ったイエスの事を眺めて居た男…神父がこちらに振り返った。
神父は優しそうな光を銀縁眼鏡の向こうから覗かせる老人で、
俺達とは風格を一線を画す空気をまとって居た。
「いらっしゃい…我れらが父の家にようこそ…と言うわけではないようですね…」
神父はシワの刻まれた顔に微笑みを浮かべたまま断言する。
「ここは教会…来る物を拒ままぬ我らの聖なる祈りの場…御用が有るのは…私かな?」
歳の割りに張りの張った声で、
背筋もしっかりと伸ばされて俺達に聞いて来た、
確かに、俺達が用が有るのは神父の方だ。
「優香が…勇者の娘が来て居無いか?いつも来て居る、高校生ぐらいの女の子だ」
俺は走った為に少しだけ乱れた呼吸を直ぐに整えると聞いた、
其れ以外にも聞きたい事は山ほど有った。
「そんなに聞きたい事があるのですか…よろしい、ではどんどん先に進みましょう、優香はまだ来て居ませんよ…」
こいつ⁈
俺の心を!
ッチ、まぁいい…
「じゃあ、次だ、あんた…何処まで知っている…?」
「気を悪くしたのなら謝ろう…最近では言葉と心の中と、区別がつかなく成って来て居てね…否が応でも入って来るんですよ…それと、何処まで…とは?」
ジジイは垢抜けた笑顔のままで飄々と言って来る、
向こうの方がこう言った心理戦では一枚上手らしい。
ッチ、
言える訳がないな…
かと言って…
「なるほど…『エリコ』の母親の事までですか…勿論存じておりますよ…貴方の知ってる全てを」
クッ…
また、考えている事を読まれた、
このままこいつの前に居るのは危険か…!
「帰るぞ!阿久津」
俺と阿久津は老人に背を向け、
そのまま出口の方へ向かって行った、
その神父の悲しそうな顔も見る事も無く…
「なるほど…アレがあの子の言う『ゴリアテ』…確かに、その名の通りの肉体と傲慢さか…彼らが、あの子を闇の淵から救ってくれれば良いが…」
☆
また俺達は家に戻ろうとしたその瞬間、
一人の男が現れた…
「始めまして、英雄…私はコードネーム『ダヴィデ』…そうだな、五十嵐…君を殺す者だ」
本日二度めの襲撃か…
丁度良い、こいつをぶちのめして…優香の場所を聞き出す…
☆
数分の睨み合いが続いた、
睨み合いと言っても『ダヴィデ』と名乗った男は涼やかに俺の事を値踏みする様に見て居るだけだった、
それが異常な程腹立たしく、
俺の神経を逆なでした。
「おい、てめぇ…なんで何にも仕掛けて来ねーんだ…なんか俺、そう言うのムカつくんだよ…」
怒気を、それこそ殺気含んだ声で挑発した、
やっぱ挑発は俺下手か…
奴は白い物の混じり始めた長い髪をかきあげて言う。
「ハァ…聞いた通り安っぽい挑発…か、これなら別に自分じゃ無くても良かったと思うんだがな…」
まぁどうせ今日は顔合わせだけだし…
とブツブツ言って居る奴、
確かにこいつからは今全く闘気を感じない、
それどころか…
「さて、じゃあもう良いか…僕は帰らさせてもらおうか…我らが姫からのご命令でね…」
そう言って背を向ける奴の背中を、
俺は、俺達は決して追いかける事ができなかった、




