十二節ノイチ
☆草月の目線☆
姉ちゃんを助ける……! オレが今まで何度も抱いてきた想いだった。
その度にオレは、自分自身が無力なのだと想い知って、悔し涙を流したりした。
でも……! 今は、もう今度こそは……姉ちゃんを、助ける!
ーー
姉ちゃんを抱擁する“闇”は相変わらず部屋の中央に鎮座して居た。
オレがそんな“闇”を見上げていると、久遠寺がオレと同じ様に姉ちゃんを見上げて居た。
「……ソーゲツ、なんでユーカが“闇”を残しているかわかるか? 」
意味不明な言葉をオレに投げかけて。
なんで姉ちゃんが“闇”を残しているか……?
そんな事……考えた事も無かった。
オレはただ首を横に降るしか出来なかった。
そんなオレを見て呆れた様に溜め息をつく久遠寺。
……なんだよ。
「未練だ……ユーカはまだ、この世界に留まって居たい、って思ってんだよ。それが、なんでかは知らんけどさ」
まぁ、自己を否定しきれていないんだな。そう言ってまた溜め息を吐く久遠寺、
姉ちゃんがこの世界に留まって居たいと思わせる未練……
オレはふと、同じく久遠寺の話を聞いて居たであろうイズルに目線を向けた。
その瞬間に、何故だかオレと同じタイミングでオレを見てきて居たイズルと眼が合った。
……ッ! ? そうかよ。
オレは一瞬前の……イズルと目が合った瞬間のイズルの顔を思い出した。
多分……いや、絶対にあの時のオレも同じ顔をして居た……。
期待に満ちた、絶望者の眼……
自分が無力だと、知っている人間の顔だった。
そんなオレ達の姿を見てか、久遠寺が失笑を漏らした。
「なんだよ……ッ! 」
オレは思わずそんな久遠寺に怒鳴ってしまって居た。
ふと見れば、イズルも口には出さないながらも文句を言いたそうな顔をしている。
「いや……お互いで他力本願のママなんだなと思ってな……
そんなお前ラに、ユーカを助ける資格があるのか? 」
姉ちゃんを、助ける……資格?
「どう言う……事だよ……? 」
オレの声は異常な程にかすれていた、
口も乾いて、何故だか息苦しい。
そう、
本当は気づいていない筈が無いからだ。
オレは、オレ達は久遠寺の言葉に俯くしか無かった。
姉ちゃんを護る、
そんなオレの覚悟はあまりに無様なモノだった。
護るって……! 絶対護るって決めたのに……!
もう、姉ちゃんを不幸にしないって……! 決めたのに……!
そう思うと後から後から悔し涙が出てくる。
情けない、自分でそう思っていても止める事が出来ない。
「ハァ……俺が言いたいのはだな、ソーゲツはユーカを救うだけじゃダメなんだよ」
心底呆れた……そう言うテイを全身に出しながら、久遠寺は続ける。
「もちろん、そこの……イズルもな。お前ラにしかユーカは救えないぞ?もう神父様はいないんだしさ」
神父様……か、
『ダヴィデ』の話を聞くところの、姉ちゃんの……オレのお祖父ちゃん。
銀縁の向こうの優しい瞳。
姉ちゃんが世界の誰よりも信頼していて、『ダヴィデ』に殺された、
全ての元凶とも言えるヒト……。
確かに、あの時……姉ちゃんが最初に“闇”に飲み込まれた時は、神父様が助けてくれた。
でも、その神父様は、イナイ。
「だから、お前ラがガンバルしかねえんだよ。俺じゃあ出来ないからな」
そう言った久遠寺の顔にはわずかな陰りが在った。
何もかもか……。
わが岩、わがあがないぬしなる主よ、どうか、わたしの口の言葉と、心の思いがあなたの前に喜ばれますように。
サブタイトル訂正♪
十一節ノヨン→十二節ノイチ




