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十一節ノサン


☆→イズル


『ダヴィデ』の……父さんの告白は続いた。

ヒトを傷つけて……。

草月くんを傷つけて……。


そして、優香までも、傷つけた。


僕の我慢はもう限界だった。


だが、それだけでは無かった。

暗転した。世界が。


嫌、僕や、草月くんの世界では無く、

……優香の世界が……。


ーー


「姉ちゃん……⁈」


突然、草月くんに抱きかかえられて居た優香の身体に闇が集まり出した。


……違う、闇を集めているんじゃ無くて、周りから光が逃げて行ってる……!


「い、一体何が……?」


僕はそうつぶやきながらも、既にあたりをつけて居た。


『エリコ』だ。


僕が、かつて反勇者の組織を率いて居た頃に聞いた、優香の能力。


誰もが踏みいる事の出来ない、聖なる領域を作り出す。そんな防壁。


そして、その“壁”を壊す事ができるのも……『聖櫃』

すなわち草月くんのチカラだけだ。


……僕の全ての能力をもってしても、彼女を助ける事は、出来ない。


☆→草月


また……だ。


オレの頭の中に浮かぶのは、たった今、闇に呑まれる寸前に見せた姉ちゃんの表情だった。


泣いている様な、笑っている様な、そんな表情。


だけど、オレにはその表情がどんな表情か、すぐにわかった。


……姉ちゃんとオレの、母さんが違うって、姉ちゃんが父さんの事を嫌いだって。


そう知った時、その時にオレも、さっきの姉ちゃんとおんなじ表情を浮かべて居た。


それの表情の名前は“絶望”……。

哲学者 キュルケゴールも記した。古の表情。


ーー姉ちゃんは、“絶望”して居た。


☆→★


イズルと草月、彼らの意見を裏付ける様にして、優香を包んだ闇は浮かんだ。


それは、優香による徹底的な光の拒絶。


……草月の言う通り、彼女は確かに“絶望”して居た。


しかし、それは草月に対してでも、イズルに対してでもない。

ましてや、『ダヴィデ』に対してですら無かった。


彼女が“絶望”したのは、他成らぬ彼女自身。


自分がそこに居ても、他人(ヒト)を傷つける事しか出来ない己自身にたいする“絶望”だった。


☆→草月


「ーーちく……しょう!」


オレは、自分の腕からゆっくりと離れて行った姉ちゃんの温もりに、言いようの無い後悔の感情に襲われた。


俯いて居たオレの眼に、見覚えのある靴が映る。

久遠寺だ。


「どうしたんだよ、ソーゲツ」


遅れて現れた久遠寺は、知らないはずが無いのに、態々オレに聞いてくる。


どうしたもこうしたもねぇよ!!


「……また、姉ちゃんを……苦しませちまったんだ……」


オレのその言葉に、ピクリと肩を震わせる魔王の息子、イズル。


あぁ……お前もなんだな。


そんな事がドロドロと、色々な事の混ざり合った頭の中で掠める。


イズルは、肉親としてのオレとはまた別の“愛”を姉ちゃんに持っている。


その事が、オレには面白くない。


「はぁ……ソーゲツ。お前、顔洗ってきたらどうだ?酷い顔をしているぞ?」


ッ……?

久遠寺はいつだってそうだ。


なんでも無い様なのに、それでも確かに気を使っている。

今でも、オレに……。


「ムリだよ……姉ちゃんをおいてはいけない」


この部屋の中心で鎮座する。

闇に包まれた姉ちゃんをおいては。


イズルの方も……多分、オレもあんな顔をしているんだろう。

生気の抜けた様な顔をしている。


そう思ったら、オレを若干に見下ろす様な形に成る久遠寺がため息をついた。


「ハァ……別に、俺の言えた事じゃあ無いんがさ、少しばかり内罰的過ぎないか?別に必ずしもお前ラが悪い訳じゃあ……」


久遠寺が尚も続けようとした、

その言葉を遮ったり、答えたのは意外にもイズルだった。


「ボクのせいだ!ーー僕の、せいなんだ……僕が生まれてこなければ、優香はこんな目に……」


そこまでイズルが言った瞬間だった。


オレと、イズルの決して小さいとは言えないそんな事間合いを一瞬で詰めたかと思うと、


そのイズルの胸ぐらをつかんだ。

ハァ!?


「だからさぁ……お前ラの、そう言うのがムカツクんだよね……、別にヒトのせいにしろっては言わないけどさ、少しぐらい気楽に生きられないの?」


「ーーッ⁈コッチの気も知らないで!!」


イズルが大声で叫ぶ、

その目は心なしか潤んで居る様だった。


……イズルの叫び、その事についてはオレも、同じ気持ちだった。


「ハァ……、まぁ、お前ラはそう言うかもしれないけどさ、ユーカも含めて」


「「えっ……?」」


イズルの胸ぐらを放しながら呟かれる一言。

その言葉に返したオレ達の言葉は偶然には重なって居た。


「……大方、ユーカの奴もお前を傷つける事しか出来ない、そんな事考えたんだろ、だからユーカは自分自身を世界から否定した。その結果だろう」


どこが呆れた様な目をしながら姉ちゃんを抱擁する闇を見つめる久遠寺。


「自己の……否定?」


その事を言ったのは、全く予想だにしなかった人物。宇津木さんからだった。


そんな宇津木さんを半ば睨めつける様にしながら、久遠寺は返した。


「えぇ、ユーカは責任を自分に帰結する、典型的な奴ですからね……抜け出せないですよね、負のスパイラルから」


……じゃあ、オレが、オレ達が……!

「姉ちゃんを、助ける!」


あなたがたの心の目を明らかにして下さるように、そして、あなたがたが神に召されていだいている望みがどんなものであるか、聖徒たちがつぐべき神の国がいかに栄光に富んだものであるか、




久遠寺クーン!

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