十一節ノニ
唐突とも思えるほどに語られる真実。
そう、叔父『ダヴィデ』は私のママ、ミサトを愛し、そして痛みを覚えた。
「俺が何故ミサトを愛したか……今回の事は遡れば其処に行き着くだろう……
まだ、優香や草月が生まれる前、俺が始めてミサトに在ったのは小学5の時だった。
其の時は全く彼女を意識して居なかった……」
意識し始めた時は、
もう遅かった。ママは、パパの事を愛する様に成って居た。
「俺はどうしても其の事が許せなかった!勇気を振り絞り彼女に己の気持ちを伝えた時はもう既に遅かった!
ミサトは伊万里に誑かされて居たんだ!」
だが、叔父は其の事を認めなかった、
そして、其の時は魔王が全盛を極めた時代でも在った。
そして、『ダヴィデ』はその時代そのものを利用した、
魔王を……イズルのオカアサンを……。
「そうして伊万里は旅に出たよ、魔王は自分が倒すと愚かな夢を見てな……
だが、この事は俺にも幸運を運んできた、俺が魔王を退治する!
そうすればミサトは俺に振り向いてくれる!俺にだけ微笑んでくれる!
もう、伊万里なんかを相手にしなく成る!」
そして、叔父は先回りをした、
パパよりも速く魔王を倒す為に。
ただ一人、ママの……ミサトの笑顔の為だけに。
己の欲望を満たす、それだけを胸に抱いて。
「俺は魔王に勝ったよ、彼女は確かに地上最凶の能力者だった……だがな、愛の前に全ては無力だったんだ。
鈍間が着いたのはその3ヶ月後だったな……まぁ、俺は魔王の事は再起不能のレベルでボコボコにしてやったが、生きて居たからな、
その時にどんな茶番が繰り広げられたかは知らんな。
それでも結局は封印だったらしいがな」
そう言って侮蔑の目線をチチオヤに向ける『ダヴィデ』、
私もそれは初耳だった。
草月もわからないなりにチチオヤを見つめていた。
重々しく口を開いたチチオヤ、
曰く、「魔王は身篭っていた」
故に殺せ無かった。
……身篭って居た……
私はそっと、暗闇の視線を這わせる。
イズルを気配だけで見つめる。
その姿は悲壮感と悔しさに満ちているように思えた。
「だからお前は甘いんだよ、イマリ……なのに、なのに!ミサトは俺じゃなくお前を選んだ!……あいつの父親もびっくりしていたよ、ナゼ神を否定したお前が愛されたのか、ってな……
まぁ、よかったさ、
……お前とミサトとの間に子供が出来るまでわなぁ!!」
イマリと、ミサトとの間の子……
私だ。
草月の息を飲む音が聞こえる、
ゆっくりと上下している筈の胸が急に弾む。
ダメ……。
「だからな……イマリが勇者と呼ばれるように成った後に、イマリの事を好きに成った女を利用為せてもらったよ……御し易い、馬鹿な女だったな……
そう、草月お前の母親だよ、
ミコトとか言っていたな……
フッ……イマリに媚薬を盛れば一発だったよ、
ほんっと、女だったら誰でも良いのになぁ……、
なんでこんなに想っている俺じゃあなくて、お前を選んだんだろうなぁ⁈」
ダメ……!
このままじゃ……草月が壊れちゃう……ダメ!
「わかるか、草月、お前はなぁ、不祥事で産まれた、デキソコナイの子供なんだよ、愛されて居たわけじゃ無いんだよ!
俺とイッショでな……」
違う……!
違う、違う、ちがう!
草月は、愛されていた、
私以上に……
むしろ、オカアサンに嫌われていたのは、
私の方。
「それでもお前等は別れなかったよなぁ、イマリ……だからな、俺は絶望したよ、だから旅に出たんだ……。たどり着いた場所はな、あの魔王が住んで居た場所だったよ……其処で、自力で産まれて死に掛けている子供を見つけた。
直ぐにわかったね、あぁ、こいつは俺の子だ、産まれた時から地面に這いつくばって、虫けらみたいな俺の子だ。
だけどな。ソレは同時に俺の希望にも成ってくれたんだ。
魔王から這い出た希望。
だからお前の名前はイズルなんだよ!」
名前の由来。
出生の秘密。
降る絶望、
愛されていない真実。
重く深く乗りかかる。
雪のように真っ白な悪意。
誰もが黙っていた、
何も音を発しなかった。
ただ、それだけにこの空間は闇に満ちて居た。
……そう思っていたら、
ふと、パパが口を開いた。
「一つ、聞いていいか……?」
質問の先はただ一人、
この闇の大元、兄。
「ミサトを、あいつを愛して居たんだったんなら……!なんで魔王を犯したんだ!あの人は関係無かった筈だろ!それに……なんでみんなを傷つける様な事を言うんだよ!」
激昂する父親、
しかし、その兄はぞっとする程冷淡に告げた。
「気まぐれだ……」
どうか、望みの神が、信仰から来るあらゆる喜びと平安とを、あなたがたに満たし、聖霊の力によって、あなたがたを、望みにあふれさせて下さるように。




