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十一節ノイチ


大学の一室に殺伐とした空気が流れる、

だれも何も動こうとしない。


光に満ちて居るこの部屋には、しかし、その光では満たせないほどの闇が覆って居た。



イズルが組織を立ち上げたのもそう、

お爺様……神父様が死んでしまったのもそう、

そして、ママ……美沙渡が私の前から姿を消したのも、そう。


全て、

この部屋の空気を支配して居る男、私の叔父、イズルの父親、

『ダヴィデ』の仕業だった。


そして、このみんなの心の中に巣食う闇でさえも、

まるで深い、気持ちの悪い、叔父から湧き出た様にすらも感じる。


「兄貴……今まで、なんでこんな事を……⁈」


何かに耐えるように、しかし耐えかねたかのようにパパが叔父に聞き出した。


その瞬間に、闇に満ちたこの空間により緊張の糸が張り巡らされる。


私は、ただ一人、そんな糸の向こう、夢の世界からそんな光景を覗いて居た。



叔父は、真摯に見つめてくるパパ、

そして、それを取り囲むように立っている、宇津木や、

草月、イズルの事を強くニラメつけながらも、諦めた様に口を開いた。


「……何故か、か?そんな物、ミサトの為以外に何かあるか?」


……⁈

予想外の名前に私はとても驚いた。

眠っているはずの私の顔が驚愕にゆがんでいたかもしれない。


ミサト……、お姉ちゃん、ママの名前、

草月は知らない、私だけのママとの秘密。


しかし、それが何故?

この叔父に一連の事件の黒幕に立たせる様な真似を……?


しかし、叔父が次の言葉を吐こうとする前に言葉はを紡いだのはイズルだった。


「父さん……、もう、本当に母さんの事は愛して居無いんだな……!」


ギリッ、と、唇を噛む様に、見えない悪夢を噛み砕く様にイズルは呟いた。


それは独り言であると同時に厳かなる問いかけでも有った。


まるで血を吐く様につぶやかれたその言葉は、しかし『ダヴィデ』の心を打つには至らなかった。


「母さん……?あぁ、あの雌豚か、もうも何も、最初から愛してなど居ないさ、お前が生まれた事も予想外だ」


そう、吐き捨てる様に答えられた言葉に、イズルは顔を俯かせ、あげる事は無かった。


その眼からは草月と同じ様に涙が流されて居る事が、

寝そべる私の位置からはよく見えた。


……実の息子に対して、「生まれた事が予想外」だとは私はとてもじゃないれど言えない。


そもそも、イズルが組織を起こした理由はその母親を封印から解いて、

一度で良いから抱いて欲しかっただけなのだ。


そのぬくもりを、

せめて一秒でいいから、知りたかっただけなのだ。


なのに……!

それなのに!チチオヤであるはずの『ダヴィデ』はその一切を否定してしまった。


もっともやってはならない事を行った。


もう、どうしても私は眠りっぱなしだなんて事ができなくなってきた。


いまにも、自分自身の内側からせまりくるの様な怒りの感情に飲み込まれてしまいそうだった。


そして、今度はイズルが黙り込んだ事を良い事に、

宇津木がその口を開いた開いた。


その声はあまりに重々しいしく、

この場にさらなる闇を落とすには十分だった。


「ミサトの為……だと?どういう事だ?」


その声色には、多くの疑問と半ばの確信が同居していた。


しかし、

その答えは最初からわかり切っていた物なんだと私は思う。


それに、さっきのイズルの質問の意味も考えてしまえば、それ以外の答えなどもはや早々にでてくる事なんかかなわないだろう。


そう……、

叔父、『ダヴィデ』は、

私のママ、ミサトを……


愛して居た。



私のママは素敵なヒトだったと、幼い頃の記憶にすら残らない、

全て神父様に教えてもらった知識の内でだけれど知って居た。


そして、教えてもらったその9年後、

つまり、去年の今ぐらいの時期に、

神父様がママのチチオヤ、

つまり、私のおじいちゃんだという子事も教えられた。


そして語られたのは、おじいちゃんの一族の話だった。


その一環として教えられたのがこの大学の事。


パパが昔ここで学んだこたも聞いた、

ママがこのら大学の所有者としての証を次ぎたくないと駄々をこねた事も聞いた。


そして、おじいちゃんがママにそれを強要した事によってママが私の前から姿を消したという事も。


その事を始めて聞いた時はとてもショックだったかもしれない、


一年も前の事なんか覚えては居なかった、

ううん、本当は忘れたかっただけなのかもしれない。


それが、本当にだれにも話せない、

私だけにしか解決できない問題だったから、なおさらに。


だけど、今は違った、

今はまだわからないけど、私は確信していた。


……、

昔、草月が始めて能力をかくせ為せた時に傷つけられたそのお腹が、とても暖かかった。




どうか、わたしたちのうちに働く力によって、わたしたちが求めまた思うところのいっさいを、はるかに越えてかなえて下さることができるかたへ、





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