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十節ノサン


地面、冷たい床にその長い髪を乱して横たわる娘を見て思う。


無力。


それが勇者であり、父であるイマリの心境そのものだった。



「“チク……ショウ‼”」


なんで……、

なんでオレは何時(イツ)も無力なんだ……!


救えた筈の命達、

自分のエゴの為に刈って来た命達。


そして、

ただひたすらに愛した娘。


全てが、渇いた砂の様に其の手からこぼれ落ちて行く。


サラサラと落ちるそれを、

オレは見ている事しか出来なかった。


だから。

だから!攻めて優香は助けたかった!

草月も救ってやりたかった!


なのに……⁈


「余りに無力……か?イマリ」


その時、

俯く彼の後ろ、イマリと草月が入ってきたドアの方向。


そこには、その二人のよく知る顔が有った、

その男を『ダヴィデ』は憎々しそうに睨む。


「宇津木……、なぜ貴様がココに?」


そう、それはかつてイマリとともに世界を救った英雄の一人。

最年長の、宇津木だった。


その顔を見て、イマリは心底の恐怖と、同時に安堵に包まれた。


それは草月も同じだった。


「う、宇津木さん!」


父子、図らずに同時にその名を呼ぶ。


「おいおい、この大学の元々の所有者は俺の元・師匠たんだぞ?俺が鍵を持っていないとでも思ったのか?」


そう良いながら振り回されるのは、他ならない、鍵。


その様子は余裕に溢れていて、

過去の因縁を差し引いても『ダヴィデ』に怒りを植え付けた。


「貴様ぁ……⁈」


今や『ダヴィデ』の眼は燃える石炭の様に燃えており、

復讐の業火に満ちて居た。


だが、

宇津木はそんな『ダヴィデ』をの事をあえて無視をすることにした。


「おい、伊万里……」


その宇津木の声はひどく低い物で、聞く物に恐怖を与える物だった。


事実、名を呼ばれたイマリの身体は石の様に固まってしまって居た。

決して宇津木の能力では無い。


「情けなく無いか?たかが自分の娘に拒絶為れただけで何をそんなにヘコむ?まさか、本当は自分が愛されると、受けいられる斗でも思って居たのか?」


老いた目を鋭くしながら宇津木はイマリを責める、

それは、夢中に成った子供を諌める様でも有った。


「…………」


イマリのそれに対する返答は無言、

ただ、唇を引き結び、耐える様にしている。


しかし、わかっているのだろう、

決して自分が違うと言えないと言うことを。


「お前は分かって居た筈だろう、あの時から、知って居た筈だろう拒絶為れることを」


世界の始まりと、終局の魔法の言葉、

その言葉を言うだけで、優香は壊れてしまう。

そして、自分自身も壊れた優香を見ることに耐えきれず、壊れてゆくだろう。


そのことを理解したのは優香が8歳に成った頃だった、

その時には既に優香の笑顔は草月ただ一人が独占する物だった。


そして、イマリが自らの事を無力だと悟ったのも、その時だった。



「宇津木ぃ!!!無視するな!」


だけど……

それは、その事実は草月を傷つける物でしか無かった。


そのことを知っているのは今は亡き神父、

英雄の宇津木、海江田、大井川、


そして、イマリ本人だけだった。


「宇津木ぃぃぃ!!!」


迫る、

走る、


圧倒的な、恐怖。

恐れる物、それは絶望を産んだ。


無力な存在、自分自身、

自分の無力さに、

無力な自分に、絶望した。


だが、それは希望でも有った、

ヒトは0からは何も作れない。

だが、この世界に0は無かった。


ゆえに。

1は希望、全ての始まりであり、

愛すべき世界だから。


その日、あなたがたは言う、「主に感謝せよ。そのみ名を呼べ。そのみわざをもろもろの民の中につたえよ。そのみ名のあがむべきことを語りつげよ。




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