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十節ノイ


☆神父様目線☆


娘、

そして孫娘、

かけがえの無い、私の宝。


この身を切り刻んでなお愛おしい。


だからこそ、そんな二人が、

あの男……勇者のものになっているその事実が酷く許せない。


だからこそ、私は利用した、

やつの兄を、支配した。

そのつもりに成って居た。


しかし、支配されて居たのは私の方だった、

言葉匠に、巧妙に、彼は私に鎖をかけて行った。


……優香、

お前は賢い子だからね、

本当に愛するべきものは分かって居るだろう?


……、

私は、幻想の少女に手を引かれながら、ゆっくり償いの湯を飲んだ。


☆☆☆


☆優香の目線☆


……信じられなかった、

テレビから聞こえる音声が本当の事を言っているとはどうしても思えなかった。


新聞にかいてある事が事実なのだと飲み込む事は余りにもひどすぎた。


いまや、この目で見る全ての事が疑わしかった。


……今朝、

神父様が死んだ。


死因は服毒自殺、

個人の所有する家の中で、誰に看取られるでも無く、ただひっそりとしんでいたらしい。


発見者は警察、

それもあの時、私の事を放火魔だといったあの若い刑事だった。


彼はどうやら前日に神父様から家にまぬかれて居て、その約束の時間に行ったら神父様はしんで居たという。


若い刑事は神父様に利用されたのだろうと思う。


だけど、神父様がなんであんな事をしたのかが信じられなかった。


いつも神父様は口癖のように、死ぬな、死んでは行けない。


と言っていた。

それなのに、何故……みずから命を立つような真似を……。



「このところノイローゼか?優香」


ふと、何時の間にかは言って来て居た『ダヴィデ』に話しかけられた。


本当に何時の間に来たのだろうか?

不思議なことにわたしにはその感の記憶がなかった。


「はぁ……ショックを受けるのはしかたがないだろうが……」


ショック、

神父様。そして、死。

この二文字、たったふた文字の言葉がわたしの頭をグルグルと回って居た。


奥、瞼の向こうに見えるの銀縁のメガネをかけながら私に優しく微笑んでくれる神父様。


シワの刻まれた顔、

お父さん……最初。いまでも思って居るけど、神父様のようなお父さんが欲しかった。


違う、目を背けては行けない、

私はわかっている、知っている。

何もかも。理解で来て居る。


いまこそ私は知るべき、

自分の目の前に立ちふさがる壁の名前を。


それは。

現実。


「叔父さん……今朝、おじいちゃんが死んだんです」


「⁈……へ、ぇ……」


目に見えて明らかな狼狽を見せる『ダヴィデ』、

私が知ら無いとでも思って居たのだろうか?


私がこの事を知ったのはいつの頃だったろうか?

何もかもが希望に溶けて居た幼い頃。


神父様の能力がいつだったか私に流れ込んで来た。


いまもそう。


そして、いまならばわかる。


「今は、おじいちゃんは自殺した、って言われて居るんですけどね?私はそうは思わないんですよ……」


神父様が自殺なんかする訳がなかった、

なんで私がその事に気づけなかったんだろう?


わからずに毒を飲んだのかもしれ無いし、

もしかしたら何かが入って居る、っていう事はわかっていたのかもしれない。


でも。

それだとしても。


神父様は死のうとはしていなかった。

だったら、とこることはただ一つ。


「私はね、誰かに殺されたんじゃないかと、そう思って居るんですよ」


氷のような空気、

張り詰めたような緊張感。


だけれど、そこには奇妙な安心感すら有った。

なぜだか、包まれて居るような。そんな気持ちがする。


「……まさか、オレを疑って居るんじょないだろうな?」


急に目つきを鋭くしながら驚かしてくるダヴィデ、

もう遅い、もう遅すぎる。


「はい」


私がそう答えた瞬間、

ダヴィデの、叔父の腕が、私の細い首を締め上げた。


最後に見たのは、

イズルの笑顔、そのものだった。


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