九節ノニ
☆草月くんの目線!☆
姉ちゃんが五十嵐さんの家を出て行ってから一週間が経った、
既に暑い季節は過ぎ去ったと言うのに今だ厳しい残暑が汗を流させる。
しかし、
そんな熱気すらも、オレの心をよりしすがに、凍て付くようにして行った。
今だに耳の向こうに残る言葉、
ーー「サヨナラ……」ーー
その言葉を最後に姉ちゃんはオレの目の前から姿を消した。
「草月くん……」
今でも青々とした葉を残す桜の樹を縁側で眺めて居たオレの後ろにそっと誰かが近づいた。
聞き覚えのある声だ。
「桐乃……さん?」
オレは後ろを振り返って中学からの友人の顔を仰ぎ見た。
今は茶色に染められた髪の毛が一つに束ねられている、
そして、そんな桐乃さんの後ろには彼女を守るようにして立つ久遠寺の姿があった。
「おい、ソーゲツ。お前いつまで腑抜けてるつもりだよ……」
久遠寺は眉一つ動かす事なくオレに問いかける。
わかんねぇよ……
そんなのわかんねぇよ!
「オレだって……!好きで腑抜けてるわけじゃねぇんだよ!」
つい怒鳴り声をあげてしまった、
それに驚いたのか桜の樹に止まって居た数羽の雀が飛び立つ。
オレの声にビクリとする桐乃さんを見て自己嫌悪に陥った、
しかし、そんな現状を止めてくれたのも桐乃さんだった。
「ま、待って久遠寺くん……私達が今日来たのはその……優香さんの事なの……」
控えめながらも告げられた言葉に思わず反応する、
この一週間、ずっと求めて来たものだ。
久遠寺も頷いている。
「どういう……事だよ」
絞り出した声は思いのほか枯れて居た、
それだけオレが……臆病者だって事だろ。
「……キリノは、優香と連絡を取り合って居た事が在るらしい……それで……」
久遠寺の説明を、途中で引き継いだのは、
久遠寺からの視線で促された桐乃さんだった。
「そ、それで、昨日も着信があって……その相手が……」
姉ちゃん……って事か。
「所でキリノ、それはどんな内容なんだ?」
どうやらそのメールの内容は久遠寺でも知ら無い物らしかった、
久遠寺は急いで携帯を取り出して操作する桐乃さんの手元を傍から興味深かそうに覗いて居た。
恐らくちょうど桐乃さんの首元 (うなじかな?)に久遠寺の息がかかるぐらいの所だろう。
それに桐乃さんは熱でもあるのか、後ろから覗き込んでくる久遠寺の事が気になるのか、
視線が落ち着いて居ないし、中々メールのページを開けないでいるようだった。
顔も赤いようだから前者かもしれない。
「あ……やっと開けた」
桐乃さんはやっと開けた、と言う表情を全面に出してオレと久遠寺にそのメール画面を見せてくれた。
そこには、姉ちゃんらしい簡潔な文章が乗っていた。
ーー[「草月を頼みます」]ーー
たったそれだけの文章、
しかし、その文章を打ったのは他でもなく姉ちゃんだった。
「……姉ちゃん」
そのメール文を見て居ると何故だか胸が締め付けられる思いがした。
姉ちゃんは俺の事を嫌っている、
その事に思い至ったのはいつの事だろうか……?
多分、中学へ入る頃には既に姉ちゃんとオレとの間になんなかの壁がある事を自覚していたと思う。
しかしそれでも、
オレは姉ちゃんの事が大好きだ。
例えどんな理由とか思惑とかあっても、
姉ちゃんは、オレにとって、最っ高の姉ちゃんだから……
「で、どうすんだ?ソーゲツ」
ニヤリと、
ヒトの悪い笑顔を浮かべてくる久遠寺、
それにつられてオレもニヤリと笑った。
「決まってんだろ?迎えに行く!」
オレと久遠寺が笑あっている中、一人だけオロオロとしている桐乃さんに、また二人で笑った。
☆☆☆
☆優香ちゃんの目線!☆
「……本当によかったのか?」
私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た、
良かったのか……?
こう成るように仕向けたのは自分自身だとら言うのによく言う物だ。
「ふ……そんな目で睨むなよ、姪と叔父同士じゃあ無いか」
気持ちの悪い笑顔を浮かべながらゆっくりと私の元へ近づいてくる叔父さん。
「近寄らないでいただけますか?『ダヴィデ』」
私は勇者の兄であるこの男には心を許すつもりはない、
いや……理由は決してチチオヤの兄だから……と言うわけでは無いか。
「所で、本当にアノ話は本当なのですか?」
その事がなかったら私は今、こんな所にはいないだろう。
そうも思っていたら叔父さん……
『ダヴィデ』は鷹揚に頷いた。
「あぁ、本当だ。イズルは……生きている」
なんとー!
勇者の兄がダヴィデだったわけですね、作者もびっくりです(え




