八節ノサン
終わった……
何もかも、全てが……
私はただ一人、自らの所有する大学の部屋の一角にて崩れ落ちた。
部屋の片隅にはこの生気の無い部屋には似つかわしくない物が多くおかれている。
私はそんな乾いた部屋の中心でからからと音を立てて点滅する豆電球を見たがら涙をこぼして居た。
あの子に全てが知れた……
まず最初に思ったのはこの事である、
あの子は常に気丈に振舞って居るがその実とても繊細な心の持ち主である事を私は知っていた。
あの子に、
私の孫娘にこの全ての事を教えたのはおそらくあの男……
英雄、宇津木だろう。
そうでは無いのならばもしくは自らの息子さへも捨て駒の様に扱う『ダヴィデ』であろう。
だが、そのどちらで有ってもあの子にはなんの関係も無い事だろう。
今のあの子にとって最も重要なのは『真実』、
ただそれに限る事だろう。
いや……
そしてもう一つ、彼女の弟の事か……
草月くんと私は直接的な血のつながりあいがあるわけではないが勿論孫娘同様に愛している。
だけれど、今はその優先順位が優香の方が高い……ただそれだけの話だ。
宇津木はかつての私の弟子だった……
お互いでの年齢差は私の方が少しばかり歳を食っていると言うだけの話であまり関係が無かった。
彼は、私の元で多くを学んで行った、
確かあれは勇者と魔王が戦う前の話で有ったと記憶する。
そして、彼は私の元で培ったその知識にてある事を確信して居た。
それは、勇者がいずれこの世に齎すであろう神への冒涜だった。
そして、宇津木はそれを阻止せんと私の元から離れて行った、
しかし……結局はその事は完全には無かった事にはできなかった。
確かに、最悪の自体はまぬがれたかもしれ無いが、
それでもその勇者の振りかざした劔によって我らの神は血を流す事と成った。
最初は英雄達を憎んだ物だ、
そして、その悲劇を回避する事のできなかった宇津木に対しても。
そこまでの事を思い返して居たら突然私の居る部屋の扉がゆっくりと開かれた。
薄暗い部屋に開かれた扉からの光が筋と成って伸びてくる。
「今晩は、神父様」
光の中から現れたのは特徴的な赤毛を持った12歳程の少女だった。
その顔は満面の笑みで彩られており、目は本当に楽しそうに爛々と輝いて居た。
私はそんな少女の様子を見て苦笑することを我慢することは無かった。
少女は永遠に少女であり続ける、
それが、私の愛しい娘に課せられた宿命……神への償いだからだ。
「ご同行願えますか?」
少女はその師たる老神父に語りかけた、
表情も目も先ほどと変わらない様で有ったが、
その声は意味は任意での出願を要請して居る様であるが、
その実有無を言わさ無い強制力のある言葉を届けて居た。
「イヤ……といったら?」
私はわかりきった質問を少女へとぶつけた、
少女は不思議そうに首をかしげる。
ただ、そう見える、
だが、彼女は全く自らの力で思考して居無い。
そもそも心がない。
その心、思考は全く偽りの物、
その動かぬ身体に仮初めの自由を与えたために生まれた歪な眠り。
神から祝福されぬカナしき生、
自身の歓びのためだけに生み出してしまった存在。
コレは私の罪の結晶だ……
だがそして、最初の神への勝利の明かしでもある。
ーーまって居るが良いさ。




