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七節ノヨン


「ン……」


「やはり……伊万里の事が、忘れられないのか……?」


深夜、

大学の一室で二人の男性の声が聞こえる。


「当たり前だ……あのヒトは、僕の初恋のヒトだったんだからな……」


口元をぬぐいながら半裸の男は既に四十台に入るというのに引き締まった身体を惜しみなく見せつけて居た、

その身体にはところどころにヤケドの後が在る。


「ふ……オトコがオトコを愛するか、優香が聞けば卒倒しそうな話だな……」


笑いながら言う円城寺に対して顔を顰める阿久津、

しかし、何故その顔をしかめるのか、本人すらもわかって居ない。


「……そうだな」


そういいながら椅子にかけて有った自らの上着を羽織る阿久津、

その目は暗闇で有っても確かなホノオを灯して居るのがわかる。


その熱は何を求めるが故の灯なのか、

それを知る円城寺は再び小さく笑い、

己の目にも灯が宿る事を感じ、

自嘲する様にまた笑う。



阿久津、円城寺達が現在寝泊まりする大学では、

主に能力研究を行っており、

戦後設立された国内初の能力研究機関……


しかし、昨今ではただ一人の占有機関と成り果てて居る。(それが誰のとは言わない)


とある人物がとある計画のため、とある組織と手を組み手に入れたこの大学……


かつての勇者、伊万里の幼馴染、優香の曾祖父の設立した大学。


その美佐渡の父親こそが現在のその所有者で在るが、

その所有者としての権利は既にない。


その人物がそのとある目的のために、美佐渡の父親と契約を結んだためだった。


そして、円城寺がこの大学にて研究者の立場で潜入しているのは、

いずれ、勇者やその勇者の息子たちにも被害を及ぼす可能性のある計画を潰すためでも有った。


だがしかし、

勇者伊万里が行方不明に成って15年、今だその計画の末端すらもわかっていなかった。


「手がかりは計画の存在だけか……」


円城寺は腕時計を見る、

先程まで阿久津とともに居た部屋ではない。


現在(イマ)は夜中の二時、

隣のベットで寝ているコイビトも静かに寝息を立てていた。


「呑気な物だな……いや、そうでもなければ生きていけないか……」


英雄のコイビト、

そしてコイビトの立場自体を考えればいつ殺されても、いつ死んでしまってもおかしくはないのだ。


コイビトの能力は『自己発火』、

過去では己の能力の為に死にざる終えなかった者が多くいる凶悪とも言える能力だ。


彼……円城寺がこの大学にて学ぶのは、潜入による調査だけではなく、

このコイビトを助ける方法はない物だろうかと考えたためでもある。


しかし、

彼は今安全で在るとは確証の取れないコイビトの為に、

否、確証が取れぬが故に彼はコイビトの近くにいる事はできなかった。


彼は、コイビトが深く寝ている事を確認すると、

机に元々備え付けられているコンピューターを起動させた。


画面から漏れる淡い光が部屋を薄く照らし出す、

やがて画面に映し出されたのは嘗て魔王と呼ばれた女性の姿だった。


おそらくは15年前のデータ、

今から考えるならば余りにも古すぎる日付がつけられて居た。


「やはり……この8秒の間に行った何が……?それにこの光、まさか『ケルビム』か?」


しかし、そんなはずはないと、

円城寺は頭を振った。


この能力が『ケルビム』のはずかない、

そんな事は自分も、寝ているコイビトもよく知っている事のはずだ。


しかし……その能力による光は余りにも彼らのよく知る能力ににて居た。


そう、嘗て魔王より世界を救いし勇者、

伊万里の能力『ケルビム』に。



また、大学の別の一室、

此方でも二人の男性が語らい有って居た。


しかし、その言葉にまるで意味が在る様には聞こえず、

辛うじて名前を言っている事が聞き取れる程度だった。





「ーー……『ダヴィデ』」









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