第6話。誰、それ?
「うぉーい、メシだぞー!」
できた裂け目から、前に見た獣人が顔を出す。その手にはまるで町のレストランの従業員のように盆を持っていて、そこから湯気が立ち上がるのが見えた。
「……今度は宝箱じゃないのか?」
警戒しながら声をかけてみれば、フンと獣人が鼻を鳴らした。
「ンなめんどくさいこといちいちやってられっかよ。
だいたい、お前もたいした反応してなかったじゃねぇか」
サービス精神ってのを分かんねぇヤツはイヤだねーとかブチブチ言いながらこちらに近寄ってくる。
「おらよ」
獣人が腰を下ろし、土の上に盆を置く。……そこには何故か2人分のメシが載っていた。
「……なんで2人分?」
「オレも食うから」
……さいですか。
剣を構えたままでいると、獣人が眉間に皺を寄せた。
「メシが冷めちまうだろうが。
とっとと来い」
そう言われても、そんな言い分を信じるわけがない。
そのまま獣人を睨み付けていると、獣人がハァとため息をつき――次の瞬間、目の前に立っていた。
「なっ…!」
驚く間に、手首に手刀が叩き落される。
「ッ……!!」
落ちた剣が裂け目に向かって蹴り飛ばされ、取りに行こうとした瞬間に手首を掴まれた。爪が食い込み、痛みが走る。
その手を、グイっと引っ張られ、尻餅をついた。
「おとなしく食えよ。
あーあ、土ぼこり被ってんじゃん……。こっちお前のな。
……って、痛ッ…!」
そう言って獣人が盆の向きを変えた瞬間、天井から石が落ちてきた。
獣人が両手で頭を押さえて蹲っている。
呆然とそれを見ていると、舌打ちした獣人が盆の向きを戻した。自分の前に来た肉をパンパンと手で払い、かぶりついている。
獣人がチラッとこちらを見て、顎をしゃくった。我に返って、……同じように肉を軽く払い、かぶりつく。……うまい。
俺が食べ始めると、おもむろに獣人が立ち上がった。手にはコップのような器を持っており、そのまま水の流れるくぼみに近付いていく。
「おらよ」
汲んだ水を渡されて、頭を下げた。
そのままお互い会話することなく目の前の肉にかぶりつく。
「なぁ……」
「んァ?」
もう肉もお互いの手の中にしかなくなった頃。
我慢できずに俺は獣人に声をかけた。
「お前は……なんだ? なんでメシを持ってきてくれるんだ? それに……一体ここはどこなんだ?」
「……ンなこと、必要か?」
「必要だろうが。一体なんなんだよ、これ。どういう状況なんだよ」
あー……。
そう声を上げて獣人が天井を向いた。そのまま口を動かす姿に俺も天井を見てみる。でもただの岩壁だ。一体そこになにがあるんだろう?
「……俺はルナウ、狐人だ。メシ持ってきてんのは、頼まれたからだ。メシ持ってったらオレも食っていいって言われたしな」
「い、言われたって、誰に?」
「そりゃー……」
そう言って獣人……ルナウは少し耳を倒し、再び天井を見上げる。つられて見るが、やはりそこには岩壁しかなかった。
そのまま「んー……」と声を上げたルナウが、こちらを見る。
「メトラ?」
……謎の名前がその口から出てきた。




