第5話。やることがない
……正直に言おう。暇だ。なにもやることがない。
採掘しようにも見回す限り岩だらけだし、そもそもこれ以上荷物にも入らない。
ここでゴロゴロ転がると土で汚れるだろうし、なにがあるかも分からないんだ。そんな危険なこともしていられない。
……悩んだ末、素振りすることにした。
「せっ! はっ!」
剣を学んだことはない。ただ子供の頃、村にいた元冒険者だというおじさんに聞いたら素振りしろと言われて、それ以来毎日剣を振っていた。
「やっ! ほいっ!」
最初のうちは薪でも50回も振れず、次の日には筋肉痛になって泣いた。泣いたら怒られた。痛くてもやれと言われて、また泣いた。でも渋々やり続けていたら100回以上できるようになって、今では剣で素振りすることもできるようになっている。続けることで成長するのだ。でも――
ここでこうして素振りをしていても、意味があるんだろうか?
そう思ってしまうと、手が止まった。
「……! せっ! はっ!」
頭を振り、手に力を入れて素振りをまた始める。
何回振ったか分からなくなった頃、剣を落としてへたり込んだ。
「はぁ、はぁ……」
喉が乾いて、荷物から取り出した竹筒を傾ける。ホッとして、はぁ、とため息を吐いた。
ようやく立ち上がり……再び急にできた水場に近寄った。腰の高さにあるくぼみに手を差し込み、顔を洗った。やっぱり普通の水と同じで、冷たくてさっぱりした。
「ふぅ……」
ブルブルと頭を振って水を切る。
そして改めて――どうしようかと思った。もうやることがない。時間も分からないし、眠気もない。あえて言うなら……
「少し、腹が空いてきた?」
今頃村では日が沈む頃だろうか……?
「…………ッ!」
滲みそうになる涙をグッとこらえた。
泣いてる場合じゃない。どうするか、考えないと。
鼻をすすり、息を整える。はぁと息を吐けば、今度こそ腹が鳴った。
「……腹、減ったなぁ……」
腹をさすりながら荷物を見る。干し肉かな、やっぱり。っていうか、それしかないしな。
そう思って足を荷物に向けた、その時だった。
またしても、ゴゴゴ……とダンジョンが揺れ出したのだ。
「今度はなんなんだよ!」
叫んで見回し……止まった。
壁に裂け目ができ、ゆっくりと隙間が空いていく。その方向は、さっき宝箱? があった方で……
「……また?!」
慌てて剣を拾い、構える。
ゴゴゴ……と鳴り響く音に唾を飲み、震える腕にいつも以上の力を入れた。




