第3話。ここは一体……?
……なんか口の中がうまい。
(ああ、夢だな……)
噛めば噛むほど、口の中でほどけていく。こんなうまい肉が食えるなんて、そんなの夢でしかない。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。
夢中で口を動かしていると、口の端からなにかが落ちる感覚がする。――それで、目が覚めた。
「……ンあ?」
パチリと目が開いた。
「夢か……」
そうだよな、やっぱり夢だよな。
でも不思議と口の中は幸せで、ほっぺたが落ちそうな気がした。
よっと勢いよく体を起こせば、なにかが胸元に落ちた気がする。
拾い上げてみると、端っこがかみ切られた肉だった。
「え? 肉?!」
匂いを嗅げば、夢で嗅いだ幸せ臭と同じだ。
衝動のままガブリと噛み付いた。噛んだ瞬間に蕩け、唾液と一緒に消えていく。
今、俺は、高い肉を、食っている……!
止められない止まらない。溶ける肉は次々口の中に消えていき、
「あ……」
幸せな時間は、終わってしまった……。
でも、頬が落ちそうな余韻は残っている。
「うまかったなぁ……」
ほぅ……と息を吐き、だが「あれ?」と考えた。
なんでこんな肉を食ってたんだろう?
寝てる間になにがあったんだろう?
時折幸せな余韻に絡め取られながらも思い出し……
「あっ……!」
思い出した!
「獣人が……!!」
そうだ、宝箱が急に出て。良い匂いがして、気がついたら獣人がいて。
なにやら怒鳴った後、人を押さえ込み、口になにかを突っ込まれたんだった。たしかその手に持ってたのが――
「……食っちゃった……」
背中がサァァァ……と冷たくなる。でもうまかった。これで死んでも後悔しないかと聞かれると後悔する。でも……うまかった、本当に。
ため息を吐いて俯く。その時に、なにかが目に入った。
「……ん?」
見直すと、土と同じ色をした器が置いてあった。少し這って近付くと、中には液体が入っている。
そっと匂いを嗅いだ――無臭だ。
「……水?」
なんでこんなところに?
しかもなんで器入りで?
辺りを見回すと、ダンジョンに入る時に持ってきた荷物が落ちているのを見付ける。
荷物に近付いて中をゴソゴソと漁れば、落ちる直前まで持っていたモノが全部入っていた。水も携帯食料もあるが、節制しても2~3日保つかどうかだ。……ダンジョン攻略に来たんじゃない、低階層に鉱石を採りに来ただけなんだ。備えている訳がない。
キッと器を睨み付け、立ち上がった。毒を食らわば皿までだ。
「~~~~ッ!!」
器を掴み、口を付ける。
普通の、水の味だ。それが口の中に残った肉の味を流して、さっぱりさせていく。
(気にしすぎたのかな……?)
いや、でもおかしいだろう?
突然壁がなくなって落ちた先で、肉と水がある。
これは一体どういうことだ?
だがホッとしたのも事実で。
「あ、やべ」
壁に近付き、ズボンの前を開ける。途端、ゴゴゴ……とダンジョンが揺れた。
「な、なんだ……?!」
慌ててズボンの前を閉じて一歩下がる。
すると、目の前で信じられないことが起こった。
「はぁ?!」
壁と床の間に溝ができ、そこに水が流れてきたのだ!
呆然と見下ろすが、できた溝は右から左へと流れていく。……平地に見えていたけど、実は傾いていたんだろうか?
「……なんなんだ、ここ……」
突然のことに体が動かない。ただ水の流れる音だけが耳に聞こえていた。




