第25話。……なんで?
「……っ、ててて……」
突然転がり出した体が止まる。
あちこち痛む体にうめきながら目を開ければ、昨日見た広い空間にいた。
「……なんで?」
昨日ルナウに連れ出されてここに来た。それからバーロンにからかわれ、助けられながら湧き水のように湧いて出てきたゴブリンを何匹も倒して……それで?
「……いつものとこに戻ったら風呂があって、風呂入ったらメシが出てきて……。
メシ食った後の記憶がないな……」
というか、メシ食いながらも頭がガクガクしてた気がする。寝落ちなんていつ振りだろう?
「……で、なんで今ここにいるんだ?」
それが一番分からない。
振り返っても昨日通った通路も見えない。いつもの場所みたいに、広い空間に閉じ込められていた。どうやってここまで来たのかは分からないが、体は痛い。……歩いては来てないだろう。そもそもいつもの場所から出られないんだから。
指先になにかが当たり、下を見る。そこには、剣があった。
「え……?」
俺のじゃない。目の前にあるのは刀身がキラキラと光り、柄に石が埋め込まれた立派な両刃の剣だ。俺が持ってる木刀に毛が生えたような剣じゃない。
これは、なんだ? どこから来た?
マジマジと見ていると、「ぐぎゃ?」「ぎゃぎゃ……ぎゅ!」と、昨日嫌と言うほど聞いた声が聞こえる。
慌てて見ると、離れたところにゴブリンが二体立っていた。一体がこちらを指差している。
「ッ……!」
考える暇なんてない。
手近にあったその剣を引っ掴み、立ち上がる。ゴブリン達がこちらに向かって走ってくる。手が震える。大きく息を吸った。
(落ち着け……!)
昨日は倒せた。バーロンに助けてもらったけど、昨日まとめてやってきたゴブリン三体を倒すことができた。今日は二体だ。
(大丈夫……!)
何度か息を吸い、ゴブリンを睨む。
ゴブリンがこん棒を振り下ろしてくるのを、もう一体がいない左側に避けてかわす。体勢が崩れたところを、
「てぃ!」
振りかぶった剣で切り下ろした。
「ギャッ!」
ゴブリンが声を上げてのけぞる。少し浅かったのか、ゴブリンの体からは緑色の体液が流れた。
「グギギ……」
傷を押さえたゴブリンがこちらを睨んでくる。ヤバい、と思った瞬間、
「グギャッ!」
「!」
右側にいたゴブリンがこん棒を振り下ろしてきた。
とっさに剣で受け、こらえることなく滑らせる。
「ギャッ!」
ゴブリンが体勢を崩した隙に、後ろに下がった。
息をするたび肩が上がる。
ゴブリンが再びこん棒を振りかぶってきたのを見て、右側に避けた。剣を振りかぶらず、槍のように突き刺す。
「ギャッ……!」
ゴブリンが光となって消えた。
それを見た、緑色の体液を流すゴブリンが慌てて逃げ出そうとする。が、
「ギャ……?!」
何故か突然動きが止まった。
その背に追いついて、先程同様剣で突き刺す。
「ギャ……」
ゴブリンが光となって消えた。
大きく息を吐き、ふと地面を見る。そこにはまるで上から見た壺のように盛り上がった土があり……見る間に消えた。




