第19話。最初の一歩。
ニコニコしていた顔がきょとんとし、そして眉を寄せられる。
分かりやすいヤツだな――次々と変わる表情にそう思って見ていると、はぁ……と目の前でため息を吐かれた。
「……しけた顔してんなぁ」
「……うるさいな」
久しぶりに会うなり言うことがそれか。
ムッとして眉を寄せれば、ルナウが肩をすくめてやれやれと言わんばかりに首を振った。
(……めんどくせぇな、コイツ)
眉間に力がこもる。
そのままルナウを睨んでいると、近付いてきたルナウが俺の目の前に来て座った。
「久しぶりに会ったヤツに失礼だな、お前」
「お前が言うな」
そのままピシャリと返してやる。
口を曲げて「なんでだよ」とか言ってる辺り、自覚はないらしい。天然かよ。
「……なにしに来た」
「お前の顔見に来た」
「じゃあもう見ただろ? 帰れよ」
「……ひねくれてんなぁ」
はぁ、とまた目の前でため息を吐かれる。
はぁ? と睨み付ければ、ルナウは口の端を上げて目を細めた。
……なんとなくにやけて見えるその顔に、無性に腹が立った。
「……ンだよ」
「俺が帰ったら、お前後悔するぞ?」
「……なにが」
「暇だろ?」
「…………ッ!」
ルナウの言葉にグッと唇をかむ。
うんうんと頷き、ルナウが立ち上がる。
「じゃ、行くか」
そう、なんでもないことのように口にした。
「……どこに」
「この部屋の外。行きたくないか?」
首を傾げて聞いてくるその姿に一瞬ためらう。
この部屋の外に行きたい? 当たり前だ。出られるものならさっさと出たい。だが――……そんなうまい話があるのか?
こちらを見ていたその顔がニッと笑う。
「大丈夫だって! なんてたってこの俺がいるんだからな!」
そう言って差し出された手を見――しばらく悩んでから掴んだ。
……ルナウがいるから大丈夫かは分からない。結構おっちょこちょいだし、しょっちゅう上から石が落ちてきて当たってるし、落とし穴に落とされてるし、天然だし。
コイツは俺より強い。だがそれ以上にとんでもない姿ばかり見てきた。……そんなヤツを、誰が『大丈夫』だなんて思える?
(……それでも)
ルナウに手を引かれ、立ち上がる。
引かれるまま、ルナウの後ろをおとなしくついていった。一歩、また一歩、隙間に近付いていく。
(こんなところから、早く出たい……!)
太陽が見たい。両親に、マーヤに……みんなに会いたい。
ついに、俺は閉じ込められていた部屋から一歩外に出た。




