第17話。……え、アンタなにしに来たの?
「……どういう意味だ?」
このおっさんに遠慮なんていらないだろう――そう思って聞いた。
バーロンはまた肩をすくめた。
「そんなことは言えないよぅ。埋められるだろぅ?」
なんで。誰に。
意味の分からない言葉に眉間が寄るが、バーロンは首を振るだけだ。
……なにも分からない。コイツの意図も、この状況も。
「俺にはなにもできないって。自分がかわいいってどういうことだよ」
「言葉通りだよぅ。誰だって自分がかわいぃ。当たり前だろぅ?
だから。君にはなにもできなぃ、このダンジョンにいるものみんな、ねぇ」
「みんな……?」
「そう、みんな。みんなだよぅ? みんな、主には逆らえない」
(……主?)
主って誰だ。いや、聞いたことがある。ルナウが前に……硬い岩石と鉱石のダンジョン『ログ・メトラ』。その主は――
「メトラ……?」
「そうだ、メトラだ!」
バーロンが叫ぶ。
その次の瞬間、バーロンの体が一瞬沈んだ。
「……おっと!」
声とともに、バーロンの体勢が少し戻る。いや、戻るというか……
(浮いてる?!)
驚いて足元を見れば、バーロンの足元には真っ暗な穴ができていた。その上で落ちることなく、バーロンが浮いている。
「……まったく、あぶなぃなぁ……」
やれやれとため息を吐いたバーロンが別の位置で足を下ろそうとすると、そこにも穴ができた。またバーロンが「おっと!」と言いながら宙に浮く。
そのやりとりを、唖然としながら見ていた。
「ま、とりあえずそんなところだ。
じゃあ私は戻るとするよぅ」
そう言って頭を下げたバーロンがそのままふわふわと壁の方に向かっていく。杖で壁をコツコツと叩くと、ゴゴゴゴゴ……と音が鳴った後に裂け目ができる。
そこを通ろうとするバーロンに「待て!」と声をかけた。
「……アンタそもそもどこから……」
来た時には壁に裂け目はなかった。いつの間にか後ろにいた男が、今こうして出ていこうとしている。というか、そもそもアンタはなにをしに……
裂け目の前で男が首を傾げた。
「面倒だろぅ、いちいち魔術使うのも?」
じゃ、と男が潜り抜けた後、ゴゴゴゴゴ……とまた壁が埋まっていった。
そして、誰もいなくなった。




