第16話。……このおっさんをなんとかしてくれ。
「で、アンタは……」
「アンタじゃないだろぅ? さっき名乗ったじゃないか」
「…………バーロン、さんは」
「うん、よくできました」
……満足そうに頷くおっさんを殴ってやりたい。
ぐっと拳を握りしめると、何故か違和感がある。驚いて手を開くとパラパラとなにかが落ちた。……土? ずっと立ってたのに、手の中に土?!
「いけないなぁ、少年」
先程までと変わらない声。そのはずなのに、背中がゾクリと冷えた。
「なにを考えたぁ? いけないなぁ、そんな性根じゃぁ長生きできなぃ」
ポンと肩に手を置かれ、ビクリと体が震える。
置かれただけの手が妙に重い。何故かそのまま体が震え始め、自分でも抑えられなくなった。歯の根も合わずガチガチと音が鳴る。なのに、バーロンはなにも言わない。
ポンポンと肩が叩かれる。フッと息を吐く音がして、妙な圧力がなくなった。
……助かった。
ホッと息を吐くと、クククと笑う声がする。視線を向ければ、バーロンの方が小刻みに揺れていた。
「まぁ、分かるよ。殴りたくもなるよなぁ、こんなうさんくさいのはなぁ……」
(自分で言うのかよ)
それなら直せばいいのに――そう思った時。
「だが、油断するだろぅ? 馬鹿にするだろぅ? それも手さぁ」
心を読まれたようなタイミングで言われてギョッとした。
こちらを見たバーロンと目が合う。
「ひぃぁっ、はははッ! あっ、ははははははは!!」
また大声で笑い出した男に、冷や汗が出た。
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「いやぁ、笑った笑った。一週間分ぐらい笑ったんじゃないかぃ?」
目元を拭う動きをする男をうんざりと見る。
なにがそんなに面白かったのかは知らないが、こっちは全然面白くない。
最初こそヤツの様子をうかがっていたが、いつまでも笑い続けるその姿に飽きてしまった。
こちらが動いても、剣を取っても構わず笑い続ける男に構う気もしなくて、とりあえず素振りをしていた。こちらが100回振るまで笑い続けるとか、一体どんな体力だ。
「……楽しそうでなによりだな」
「あぁ、おかげさまでねぇ」
……嫌味を言っても通じない。
はぁ、とため息を吐いて、くぼみで水を飲んだ。……一瞬、飲んだ途端に水がかかるんじゃないかと警戒したが、そんなこともなかった。
ホッと息を吐くと、「なにもしないって言っただろぅ?」と声をかけられる。
振り返ると、男が肩をすくめていた。
「きみにはなにもしなぃ。……いやできなぃ。誰だって、自分の身がかわいいだろぅ?」
……一体なんの話だ?




