↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンコアに懐かれた結果、外に出られなくなりました  作者: 末野愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/28

第15話。凍る布と笑う男

 涙目で頬を押さえながら、目の前で布を差し出す男を睨み続ける。

 男は首を傾げた後、「ほら」とさらに布を近付けてきた。


(そんなモン受け取れるか……!)


 受け取ったらなにが起こるか分かったもんじゃない!

 だが男は「ほらほら」と言いながらどんどん迫ってくる。おもわずのけぞると、男はにやりと口の端を上げた。


「気持ちいぃよぅ?」


 今の少年にはピッタリだろぅ――そう言って手に当てられた布は、すごく冷たかった。

 ビクリと体が震える。なにが起こったのかと男を見上げると、ニヤニヤと笑っていた。


「ほら、気持ちいぃだろぅ? 頬に当てるといぃ」


 差し出された布に、手を伸ばす。触れた瞬間、「だが」と声が聞こえた。


「気を付けないと。凍っちゃうかもよぉ?」

「ヒッ!」


 布が急に凍り付いた。

 おもわず手を離せば、布が落ちる。


「ひぃぁっ、はははッ! あっ、ははははははは!!」


 男が腹を抱えて笑い出す。

 やっぱりこんなヤツの言うことを聞いちゃダメだったんだ――そう思いつつ再び睨み付ける。

 しばらくヒーヒー言いながら笑い続けた男が、「あぁ、苦しぃ……」と言いながら起き上がった。

 布を拾い上げてパンパンと叩く。その布はもう凍っておらず、そして……男がボソッとなにか呟いた瞬間、付いていたはずの土汚れすらなくなった。


「え……?」

「ほら、使いなよぅ。今度は大丈夫だからサ」


 呆気に取られるこちらに構うことなく、男が布を押し当ててくる。今度は驚くような冷たさではなく、凍りもしなかった。

 おそるおそる布を手に取っても、ひんやりしているだけだ。

 そっと、頬に当てると、おもわず息が漏れるほど気持ちよかった。


「いやぁ、悪かったねぇ。つい面白くてさぁ……」


 男はクククと笑う。


「少年はルナウに似てるねぇ。素直でどんくさいところなんて、そっくりだぁ」


 いやぁかわいいもんだぁ。

 そう言われたところで全然うれしくない。『素直でどんくさい』って、絶対褒め言葉じゃないだろう。

 冷たい頬を布に押し当てながら口を曲げれば、男は口の端を上げたままこちらを見ていた。


「挨拶できた子にはご褒美だぁ。

 はじめまして、少年。私はバーロン、それ以外の名は捨てた男だぁ」

「それ以外の名って……」

「それ以外の名はそれ以外の名だよぅ。それで少年、きみの名はぁ?」

「俺は……」


 言いかけてためらう。ここでこの男に名前を言ってはダメなんじゃないかと――


「名前を言ったところで、盗らないよぅ? なにもしないさ、きみには誓って、ねぇ」


 だから安心して名乗るといぃ――そう言われて誰が安心できるのか。

 だが、首を傾げて待っている男の姿に、さっきの記憶が蘇る。……また、頬を引っ張られたらどうしよう。


「……クリフ」

「クリフかぁ! よろしくなぁ!」


 ぼそりと小声で言ってみたが、男の耳にも聞こえたらしい。残念だ。

 上機嫌で人の名前を呼ぶ男に、なんとも言えない気分になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。