第13話。……夢、か?
目覚めて最初に線を引きに行く。
面倒だからその辺の石を拾い、岩壁を削った。これで――線の数は4本。……4本?
「あれ……?」
昨日5本になったと思うんだけど。
首を傾げながら溝に近付き、用を足す。くぼみの水で手と顔を洗って、ブルブルと水気を払った。
目が覚めると――つるっとした土の上だった。
たしか夕べは湯の中に落とされて、煮立たされるかと思ったら結構気持ちよくてそのまま……
「……アレが『風呂』ってヤツか?」
町にいる時に聞いたことがある。何杯も汲んだ水を溜めて、それに火で沸かしたものだと。実物を見たことなんてないけれど、きっとあの沸き立った湯はそういうことだったのだろう。まさかあんなに気持ちいいものだとは思いもしなかった。
(でもなんで湯がなかったんだろう?)
たしかに湯に浸りながらうとうとしたはずなのに、起きたら土の上ってのは……どういうことだ?
「そういや……服も濡れてねぇな」
夢だったのかな?
首を傾げていると、ゴゴゴゴゴ……とまた音がした。振り返れば、案の定土の台ができ上がっていた。
台に近付くと一部が崩れ、盆に載ったパンやコップが見える。盆を取り出して机代わりに台の上に置く。また立ったままもそもそと食べた。
「……ごっそーさん」
元の位置に戻すと、ゴゴゴゴゴ……と音を立てて土の台が元の床に戻る。……この繰り返しももう何度目だ?
はぁ、とため息を零し、『風呂』があったであろう場所へと向かう。つるっとした土の上を触ると少し温かかった。念のため後ろのボコボコした土を触る。そちらはじめっとしていて、つるっとしたところよりは冷たかった。
「やっぱりあったのかな? じゃあなんで服は濡れてないんだろう?」
「そりゃあ、アレだ。乾かされたのさ、じわじわと」
「?! 誰だッ!!」
聞き覚えのない声に振り返る。なにもない、だが声はたしかにした。剣は――しまった、離れている!
「まぁ、そうか。最初の挨拶は『はじめまして』かな?
よろしくなぁ、少年」
腕を伸ばせば届くような位置に、黒い渦ができ始める。それがだんだんと広がり――人一人の大きさになった。
渦から爪先が見える。杖を持った手が見える。片眼鏡を付けた男の姿が見える。
渦が消え、姿を現した男は、しゃれた様子でこちらに頭を下げた。




