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八百屋の箱が撤去の危機? 役人が聖女と王女と女騎士に詰め寄られた結果

いつも通りの営業を始めたカイ。

しかし、そんな平和な時間に水を差す男が現れます。

「なんでも屋」最大の危機……? いえ、ヒロインたちの怒りが爆発する瞬間です。



 「おい。ここの不法占拠者なんでもやは主か」


 五日目の昼下がり。

 路地裏に現れたのは、三人のヒロインではなく、派手な服を纏った肥満体の男だった。

 後ろには数人の兵士を連れている。見るからに態度の悪い、この区画を管理している下級役人だ。


「……不法占拠? 許可は市場の親父さんからもらってますけど」

「市場の管理人が何と言おうと、この路地の管理責任者は私だ。……ふん、汚い箱を置きおって。景観を損ねるのだよ。即刻、撤去しろ。さもなくば不敬罪で……」


 役人が俺の『仕事場』である八百屋の箱を、汚いものを見るように蹴り上げた。

 空っぽの木箱が、虚しく路地の石畳に転がる。


「……やりすぎじゃないですか?」

「黙れ! こんなゴミ箱に座る男の言うことなど聞かん! おい、お前たち、この男を引っ立て――」


 役人が兵士に命じようとした、その時だった。


「――今、その箱を『ゴミ』と言ったか?」


 路地の入り口から、凍りつくような冷徹な声が響いた。

 現れたのは、真っ赤な瞳を怒りに燃え上がらせた女騎士団長、アイリス。

 その後ろには、いつも以上に静かな、しかし圧倒的な威圧感を放つセレスティーヌ王女と、目が全く笑っていないリアナが立っていた。


「ひっ!? ア、アイリス団長……!? なぜこのような場所に……」

「質問に答えろ、小役人。……お前は今、私たちが国宝以上に大切にしているこの『箱』を蹴ったな?」


 アイリスが腰の長剣を数センチ引き抜く。金属音が、死の宣告のように路地に響く。


「ま、待ってください! 私はただ、景観を……っ」

「景観? この私が、ここで心を休めることが不服だと申すか?」

 セレスティーヌが一歩前へ出る。その小さな肩には、俺が贈った塩キャラメルの包み紙が大切そうに握られていた。


「この方は、私たちの恩人よ。……あなたのその足を、二度と歩けないように揉み解してあげましょうか?」

 リアナが指先をパキパキと鳴らしながら、聖女とは思えない暗い微笑みを浮かべる。


「あ、あああ……っ! 申し訳ございません! 誤解です、誤解なんですぅぅ!」


 役人は腰を抜かし、兵士たちも武器を放り出して逃げ出した。

 一国の要人三人を同時に敵に回す恐怖に、肥満の男は顔を真っ青にして這いつくばる。


「……主。箱は私が直そう。済まなかったな、不快な思いをさせて」

 アイリスが丁寧に箱を拾い上げ、俺の元へ戻す。

「カイくん、大丈夫? 怪我はない?」

「主……次は城の中に箱を置かぬか? あそこなら誰にも邪魔されぬぞ」


 三人に囲まれ、俺は「いや、ここでいいです」と苦笑するしかなかった。

 どうやら俺の知らないところで、このボロい八百屋の箱は、国を揺るがす聖域になってしまっていたらしい。



【後書き】

悪徳役人をヒロインたちが撃退!

「ざまぁ」展開、スッキリしていただけましたか?

カイを守ろうとする彼女たちの愛が、少しずつ重くなってきています。

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