10話ー可能性と羽撃き
「先によろしいんでしょうか」
「ドラゴン族だけではなく、リヴァイアサン族、ヒュドラ族、ナーガ族にも着てもらいどのようなことが起きるかわかりません。全種族問題なければ古代種様たちの服を作ろうかと」
オルム、ヨルム、テュポン、レビィ、ネーブ、オロチにモーセも新しく服を作った。
全員分の分ができるまでトンネルを掘れなかったのは痛かったが、喜んでいる姿を見ているだけでも良いことをしたと思う。
「着心地が良いです…。ありがとうございます」
モーセは感慨無量とばかりに涙を流している。
まぁ…手伝ったのは溶かしただけであとはハーカとレブレが作ってくれたんだけど。
この服があるだけでかなりの充実度がある。
オックの拳までも受け止める。
防弾チョッキにも近いのだろうか。
衝撃が全くないわけではないのだろうが、一撃必殺に近い拳を去なす服にはどれほどの価値があるのだろうか。
「実質物理攻撃は無効となるでしょう。神代様の斬撃以外は通さないみたいです」
実演を交えながら話をしてくれるレブレ。
本当こういうことになると生き生きとするなぁ…。
好青年だと思っていたがこういう趣味もあっていいだろう。
それにしてもこの土を溶かすほどの威力を持つ焔を誰かできるようにならないだろうか。
トンネルが全然進まない。
灯せておける物などがあればいいが…。
「難しいですね。溶かして置いておいてもその状態で固まってしまうのでずっと神代様の火力に頼るしか…」
フレアが…いや、ダメだ。子供が大きくなるまでの間は近づけるわけにはいかないだろう。
魔族の世界を諦めて子供達が生まれてくるのを待つか…。
「そうですね…それが賢明かと思いますが…ですが…」
「何年語…とかの話になるのか…」
「一つ可能性があるのが他の古代種様でしょうか。例えば古代悪魔族とか」
「あとは火の扱いが上手い、ドワーフ辺りですかね…」
「フレア以上の火力になるのか…?」
「わかりません。何せ戦ったことなどがありませんので…」
「それと失礼かもしれませんが、古代種様たちが大人しくしている間に外に出ないと、ついてきてしまう可能性が…」
それはヤバい。
「古代種様が龍の里を出ていくことなんて聞いたことがありません…。それこそ他の世界では天災級かと思われます」
「だよな…」
「早急に要件だけを終わらせて帰ってくるといいかもしれません」
「トンネル開通に約2ヶ月…。向こうに行くまでに1ヶ月くらい…。3ヶ月…くらいか。先に生まれそうだな」
「龍の里の拡大が少し予定外でしたかね…」
そうなんだよな…。オックが悪いわけじゃないんだけど、大陸が成長するとは思わなかった…。
この辺の感覚は捨てたほうがいいだろう。常識は通じない。
そうか…。そもそもドラゴンとかいる時点で常識を求めてはいけなかったのか。
「飛んで行こう」
『…え?』
「オックが幼龍だった時に20日ゆっくり行けば1ヶ月だと思っていたが…飛ばせばもっと早く行けるかなって」
「いえ…それもそれで向こうの世界にご迷惑をかけるかと…」
「ダメか…」
「ですが、どちらにせよ飛んでいくのには変わりなく…。それでなくともリヴァイアサンに乗っていくことになります。問題を先延ばしするだけで結局変わらないのではないですか?」
「あ…」
「船は作れるけど…ダメだろうな…。普通のこの世界の船がわからない」
「それを見るためにも行くべきかと。常識?と言うものを知るいい機会かと」
どうするか…。
「考えている時間が勿体無いかと。神代様の遣わされた理由が調停と言うことであればまずは力で示すことが早いのでは。と愚考致します」
「明日出立する。同行者はレブレ、テュポン、オック。移動は飛行。レブレは魔族の世界で情報調達。できれば魔物についてなどを重点的に。それでオックは魔物の世界に行き、レブレと情報交換しつつ、良さそうな魔物を見繕う。魔物を狩って、生計を立てている者もいるかもしれないから余程じゃない限りは殺さないこと。わざわざ相手を怒らせる必要はない。一度全員魔族の世界には行くが、そういう感じだな。テュポンは基本同行してもらう。1ヶ月以内には帰ってくる予定でどうだ?」
「問題ないかと。向こうで何が起こるかわかりませんが、このメンバーであれば問題はないでしょう。オックに関しては寝ることが必要ないので間違いないかと」
「テュポンの武器と荷物入れだけ先に作るか」
「私は武器というより布自体を武器にしたいと思っております」
「布を武器…?」
「殺傷は基本よろしくないと思うので相手を傷つけないものがいいかと」
「戦闘はしたくないけど…おそらく1回や2回は覚悟しておいたほうがいいだろうからね」
「すぐお作り致します。神代様、火を借りても?」
「わかった」
―
「テュポン。布はこれくらいで大丈夫ですか」
「普段は肩に掛けておくくらいですからこれくらいで大丈夫です」
「神代様、あとは入れるものですが…記憶にあった肩からかけるようなものでよろしいですか?」
「色は白で頼む」
「明日出るまでに太刀をお借りしてもよろしいでしょうか」
「構わない。頼んだぞ」
「お任せください」
「私は果実を持ってきますのでお先にお帰りください。そして古代種様たちにいろいろ話しておいてください…」
…。
―
「ということで魔族の世界に行ってくる」
「何となく話は聞いていたがわかった。気をつけて行ってくるといい」
意外だな…。てっきり思いっきり否定されるかと思っていたが。
「主様が負ける気がしません。それにオックたちがいるのであれば他の古代種たちにも負けることはないでしょう」
「私が行ければ問題ないのですが…」
ワダチ…契約のことか。
「特に魔族の中にいる悪魔は契約を行います。悪魔の契約は一方的なことが多く、言葉の誘いに気をつけなければいけません。頷く、喋る等の意思表示は気をつけなければいけません」
「悪魔か…一つ聞きたいんだが、魔族って龍種の劣化とかだったりするか?」
「どうなんでしょうか…。魔族は主に魔法を使います。私の能力、呪いなどを使ってくる魔族もいるかもしれません。そう考えると劣化種とも言えなくもないですが…」
魔法の権能が龍種…という形になるのかな…。
「その考えでも間違い無いかと」
「龍種の契約と悪魔の契約、どっちが上?」
「先ほどの理論ですと私の方が上かと」
「であれば先にこちらで契約を決めておけば良くないか?」
「…なるほど。主様、考えられそうな契約をしておきましょう。お時間を少しだけ頂いても」
「構わない」
「それでは早速していきましょう」
「以上の事柄でよろしいでしょうか」
「一見穴は無さそうに見えるが…この世界に完璧を求めるのは難しいと実感した。だから最後に一つ。契約を行使するときはワダチと念話ができる。これをすれば問題無いと思うが」
「私の血が混ざっているため余程では無い限り一方的なものの契約は難しいと思います」
「まぁ…完璧は難しいと思うから、その辺は柔軟に。最悪テュポンもいるから」
「であれば問題無いかと」
「それにしても、もっと色々文句とか言われると思ったんだけどな…」
「今まで文句は散々言ってきましたからね。それに子を成してからか、比較的皆さん性格が丸くなったといいますか、大体は他のものに言えば解決するので。問題はないかと。念話も切れるわけではないのであまり心配はしておりません。それにハクエ様が仰っていた通り、主様が負ける未来が見えません。少なくとも我々はグレール様がいらっしゃいます。大抵の未来はわかります」
「そういえばそうだったな…」
「グレール様の話では1年後も神代様が元気な姿で目の前にいた。と仰っていたので」
「自信があったのはそういうことか…」
「もちろん、未来は確定事項ではありませんが、生まれてからグレール様の予知が外れたことはありません。あ、こういうことを言うとフラグなるものが立つと言うのでしたっけ」
「そうだけど…」
「主様ならフラグなるものも圧し折ると思っていますので。そもそも物理・魔法が効かないのにどうやって主様を倒せるのかが教えて欲しいくらいです」
「そうだな…だけど何があるかわからないからな」
「大丈夫だと思いますが、おそらく言葉では主様は変わらないとは思っております。ですが我々は信じております。それだけは覚えておいてください」
「覚えておこう」
「それであれば大丈夫だと思います」
「付き合わせて悪かった。助かったよ」
「こちらこそ、それでは。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
―
この世界に来て新しい世界。
龍峰に落とされ、すでに半年以上経った…と思う。時間感覚がかなり狂っていると思う。
この辺りは季節という概念が無いのだろうか。
何日か寝ていても起こす相手がいない。
起こさない限り起きてこない。
そもそも龍族が1日で起きることが珍しい…らしい。
どうなっているんだか…。
「おはようございます」
誰だろう…。珍しい。
目を開けると人化した龍族が全員揃っていた。
「いってらっしゃいませ」
彼女らに両頬にキスをされる。
モーセ、オロチ、お前らはしなくていい。
「留守は任せたぞ」
『はっ』
「いよいよか…」
「神代様、話にあった鞄というものです。レブレ、テュポンには肩掛け用、オックには両手が空くようにリュック?というものを作ってみました。内容量は少ないかもしれませんが、果実は10個ほど入ります」
「助かる。ゆっくり寝てくれ。留守を頼んだ」
「かしこまりました」
―
「テュポンはどうやって行くんですか?」
『…』
「海を走ります。問題ありません。リヴァイアサンの湖で実証済みですので」
「山は?」
「登ります。全力で行けば2時間もかからないかと」
「まぁ…テュポンなら行けそうだから大丈夫か」
「我々が山の反対側まで運びましょう。オックと一緒であればすぐかと」
「いえ、問題ありません。自らの足で進みます」
「こうなると聴かないだろう。少し遅れても構わない。怪我しないでくれ。モーセ、一応リヴァイアサンも付けてくれ」
「そうしたいのは山々ですが、恐らく海中最速の私でもついて行くことは無理でしょう」
「それでは先に行っておりますので。魔族の世界でお会いしましょう」
消えた…。
「いえ、もうすでに麓におりております。我々もそろそろ旅立ちましょう」
「それでは行ってくる」
『お気をつけて』
全員に見送られ、翼を生やす。
白と黒の3対の翼を成す。
山越えを狙い、全力で飛翔する。
―
「一羽撃きで着いてしまったようだ…。オックとレブレはまだかな…。龍峰…大丈夫かな」




