11話ー脅威と金銭感覚の欠如
「オック…今の動きが見えたか」
「いや…見えなかった。そもそも何も羽撃いた痕跡が無い。それこそテュポンの移動のような…」
「そう言えば物理を完全に防御…ということは風の影響なども無いということでしょうか」
「何が何だか…」
「やっと見えた。神代様をお待たせしてしまった…」
―
「早かったね。10分もかかってないんじゃないかな」
「まさか一振りで世界を超えられるとは思いませんでした」
「それは自分でも驚いたよ…。全力なんて出すものじゃないね」
すでに目下の世界を軽く見ていた。
六芒星の一角だから三角の形をしているのはわかっていたが、龍の里よりかなり広い。
龍の里のおよそ何十倍…では足りないか。
何とかドーム何個分とか言われてもよくわからないみたいに実寸はわからない。
しかし、集落…集りみたいなものは10くらいありそうだ。
隣の世界への架け橋は魔物側へ1つ。亜人側へ3つ。
遠くに行けば行くほどに集落は減っていく。
それでも一つの集落が端に一つある。
「それにしても何かが集まって参りましたね」
「恐らく向こうからも見えていたのでしょう。それでなくとも神代様は途轍もないオーラを発していますからね」
「そういうことは…」
「先に言うべきでした。降りながら調整してください」
「調整とは…それにオーラとかわからないんだけど…」
「…」
「これは…仕方ないです」
「ちなみにどんな感じに見えているんだろうか…」
「火山の噴火と大津波、竜巻と雷雲に1000匹の龍が乗り込んできたようなものですね」
「天災だな…」
「とりあえず敵意が無いとお伝え致しましょう」
「話が縺れないといいけどね…」
「最悪滅ぼしましょうか」
「それはダメだ」
―
『何者だ!』
「何者…神の代行者とでも言っておこうかな」
『畏れ多くも神の名を語る不届者!殺せ!』
絶対手を出すなよー…。
槍兵隊の攻撃が襲ってくるが…。
槍が先端からひしゃげる。
「魔法を使わないのか…」
少し残念だ。
『強化魔法をかけた槍が…』
ああ…。それでこれか…。思っていたより弱そうだなぁ。
『攻撃魔法部隊!』
あー。やっときた。
火に水、氷に風、光と闇怒涛の攻撃が来るが…。
刀を少しだけ抜くだけで全て吸ってくれる。
オックの拳もレブレの槍も全ての攻撃を吸う。
極大魔法と聞こえたけど…。
こんなものかな。
弾幕のような魔法がいっぱい来るけど…これどうしたら終わるんだろうか…。
(全ての魔法は見終わりました。問題はないかと)
ん?見終わった…?レブレどういうことだ?
(ええ、昨日の話を聞いたのですが、龍種の劣等だと言うことであればその発動の陣さえ見てしまえばコピーは完了です。今再現しましょうか)
レブレが手を前に出し、何かを唱えている。
それ、必要なのかな。
(いえ、正直必要ありませんが格の違いというものを見せなければ攻撃は収まらないでしょう)
『極大魔法…重土火混成魔法:メテオ』
聞き間違いかな。メテオって隕石だよね。この箱庭って隕石とかの…あるのかぁ…。困るなぁ。
さっきの極大魔法とか言って来た炎がとろ火みたいじゃん…。
『逃げろぉー!』
魔族が散っていく…。
うん…これ失敗じゃないかなぁ。
「神代様。あのゴミを切ってください。それで終わるかと」
あー…そういうことか…。
太刀を一振りするとゴミは消える。
「やる前は先に言ってね」
「それでは調べに参りましょう。テュポンもちょうどついたので」
「本気で走って来たので大丈夫かと思いましたが…いつの間に抜かされていたのかわかりませんでした」
水滴一つ付いていないテュポンだが、額から一雫だけ汗のようなものを流していた。
「それでも早い方だと思うけどね」
それほど名付けというものが凄いということだろう。
「オロチ様からではなく、神代様から頂けばもっと早かったと思いますが…」
それは言ってやるな。おっさんの涙目が浮かぶ。
「まずは散開して情報収集。夜にまたここに」
『はっ』
音もなく消えるのは何なんだろうか。
「そういえば買い物とかも通貨がないと無理か…」
「であればこの世界にいるドラゴンのところへ向かいましょうか」
「ん?ここにもドラゴン族がいるのか?」
「オックが一度幼龍で訪れた際分体を産み落としているようです。本人はあまり覚えていないみたいですが、世界の端の方にいるみたいです」
「そう言えば…上から見た時に集落が一つあった気がするけど…。行って帰ってこれるか?」
「最悪、念話でどうとでもなるので」
「そうか…」
「それでは私は走っていくので」
「いや、もう連れていく。待っている間に何かあるかもしれないから」
「お手を煩わせるのは…」
「待つ方が煩うから」
「それでは…お言葉に甘えて…」
片手でテュポンを持つ。
良い体しているのに意外と軽いんだな…。
「いくぞ」
「わ」
「ついたぞ」
「りまし…え?」
建造物がほとんど消えた。
港町のような場所から荒野に出た。
大聖堂のような作りに奉られているのか、一体のドラゴンがいる。
「さっき…港にいた気がするんですが」
「だから来たって。要件はあれでしょ」
「ええ…そうなんですが…ええぇ…」
「少しあの者と話してきますので少しお待ちいただいても良いでしょうか」
「一緒に行くよ」
「向こうが萎縮してしまう気がしますが…」
「眠っているし、大丈夫でしょ」
聖堂へ入ろうとすると防人のような人がいる。
「少し話してきます」
テュポンがそう言って魔族と話している。
魔族と言っても人と何ら変わりがない。
ツノが生えているわけでもなく、肌の色が違うわけでもない。
そういう風に見えるだけなのか、隠蔽みたいなものなのか…。それとも第二進化みたいなものもあるのか。わからないが、その辺は後で良いだろう。
思考を巡らせているとテュポンが戻ってくる。
「話が通じませんね。貢ぎものがないと通さないの一点張りです」
「果実でいいんじゃないか。話すだけなら実際貢がなくてもいいだろうし」
「一度、あの者たちに貢物を見せなければいけないとのことです」
「金色の果実…。怪しく思われそうだなぁ」
「そういうことです。話だけ聞いた感じですと何をするにもお金が必要みたいです」
「バレなければいいのかな」
「一緒に行きますよ」
「…神代様?いない…え?」
―
「こんにちは。って言っても通じるかな」
言葉の代わりに爪が振り抜かれる。
しかし、ドラゴンの前足が吹っ飛んでいった。
何もしてないんだけどな…。
「…」
痛みも感じる暇がなかったのかな。
体液を流しながら、目を開け閉めしている。
「言葉わかるかな」
通じなさそうだなぁ…。オック、端の方まで来れるかな。オックの分体だろうし。
貢物がたくさんある。
金みたいなものもたくさんある。
これを少しでも貰えれば嬉しいんだけどな…。
流石に烏滸がましいか。
「お待たせしました。神代様。我が分体が失礼を…」
オックが一撃…殴ったら死なないか…?
「腕片方飛んじゃったけど…大丈夫かな」
「そのうち回復すると思いますので、ご心配されなくても。自身の能力と相手の能力を判別できない愚図が悪いのです」
「とりあえず話してもらっていいかな」
「かしこまりました。少々お待ちください」
―
「ジャバー、挨拶しなさい」
「神代様、大変申し訳ございませんでした。ここにあるもの全てお持ちしていただいて構いません。ですが、魔竜と呼ばれここにいるためご一緒はできません。申し訳ございません」
「ありがとう。一樽もいらないかな。一人10枚くらいでいいよね。オックはレブレに渡しておいて。お金無いとこの辺じゃ無理らしいから。あと果実を一つ。食べさせれば大丈夫でしょ。その代わりこの辺の果物貰ってもいいかな?」
「全て持って行ってもらっても大丈夫です…。金色の果実。ありがとうございます」
一口で食べる。
うん、もう手が生え始めているね。さすが。
「これ…貰って良かったのでしょうか…」
「いいよ。こっちこそ急に来ちゃってごめんな」
大きな頭を下げ、見送ってくれた。
―
空から降り、港町に来た。
すでに諦めがついたのかレブレも戻ってきていた。
「やはりお金がないとダメみたいですね」
「そのことですが、こちら一人10枚と言うことで」
「これの価値は如何程ですか?」
『…』
「適当に貰ってきたからよくわからない…」
「金銭感覚の欠如…」
知識を得るにも金が必要か…?
「一枚渡せば確実に教えてくれるかもしれないけど…。それでその人の生活を狂わせたくないしなぁ…」
「これ一枚ほどで狂うのでしょうか?」
「いや、それがわからないからね。これがとんでもない価値があったら悪いものは狙ってくるでしょ」
「そちらは天貨。それ一枚だけで街が一つ買える値段です」
いつの間にか、知らない者が居た。着飾っているところを見るとお偉いさんかな。
「これは失礼致しました。魔帝ギガンズ様の四天王が一人。エレンツと申します」




