9話ー超成長と服
「神代様、よろしいでしょうか」
ん…?誰だ?
「あ、オックです」
???オックってもっと隆々だった気がするんだけど…。
かなりの細マッチョ…。最初に会った時に近いか…。
「少し来てもらってもいいですか?」
なんだ…?
オックに続いていく。
「トンネル…そんな進んだようには見えないが」
30cmくらいだろう。
拳でやっているからか、少し血が飛び散っているのが生々しいが…。
「よく見てみてください。壁の色を」
…?
薄紫色をしていた壁が少し…濃くなっているような?
「そうみたいです。超成長の血を吸っているみたいなのです」
「は?」
よくわからなかった。何を言っているかどうか。
「神代様の太刀でこの壁を切ってみてください」
言われた通りに壁に刃を立てる。
…全く刃が立たない。おかしい。全く切れない。
「やはりそうですか…」
レブレ…?
「この超成長は他の物にも影響を与えるみたいです」
オックが手を握り、透明な刃へ血を与える。
太刀が真紅に変わる。
たった一滴で…。
「これで壁を切ってみてください」
力を軽く加える。
すーっと刀が入っていく。
そして刀身が新しくなる。
「何色と言えばいいのでしょうか…黒くもあり…白くもある…灰色とはまた別ですね」
見る角度によって色が変わる。
万華鏡を覗いた時のような感覚だ。
「これが成長する刀です」
鼓動する感覚。
「カッケェ」その一言に尽きた。
それから器を作り、オックの血を龍脈水に混ぜ、散布した。
するとどうだろうか、林檎のような果実は金色の果実となった。
木もより硬くなった。オックの血により龍峰は一回り成長した。比喩ではなく。
「遠くなりましたね」
麓からトンネルの入り口まで前までは歩いて30分かかっていたのにも関わらず、大地に血を吸わせてから1時間ほどかかるようになった。
「素晴らしい成長ですね」
果実は一つでほとんど全ての気力を回復する。
それに空腹感も無くなる。
そして一定時間の気力も減らない。
「途轍もない異常です」
経過観察もしながら見ていると成長は止まったようだ。果実は変わり、一回り変わる程度だった。それでもかなりの変わりようだった。
龍峰の高さなど変わりはしなかったが、兎がさらに肥えたことは言うまでも無い。
そして美味となった。
鶏肉のような淡白な味にはなったが動物臭さが減った。
女性陣の反応が良かった。
タレと塩ダレが欲しい…。
兎肉を食べていると他の者も集まってきた。
「神代様。一つご提案がございます」
レブレだ。何事だろうか。
「昔から落ちている古代種様やドラゴン族の鱗がございます。そちらを神代様の太刀に吸わせるのはいかがでしょうか」
…?
「こちら許可をいただいて持ってきました。全ての古代主様達の鱗です。これを切っていただけますか?それで成長する太刀がどう成長するのか」
レブレって意外とこう言うの好きなのかな。無口だけど、いつも色々悩みとか聞いてもらっているし、できることをやってみよう。
一枚白い鱗を取る。
一刀。そして鱗が消え去る。
全て消え去った時、またレブレが鱗を持ってきた。
今度の一刀では鱗は消えなかった。
「なるほど…一定の量などを吸うとそれ以上は吸収しないようですね」
どうして吸収されないのか…しかしこれで粉々にして混ぜればそれはそれで新しい武器もできそうだ。しかし…それはやめておこう。彼女らの細胞だろう。これは取っておこう。
「本来であれば手に入らないものですからね。血を頂くよりはいいかと思いまして」
まぁ…確かに。
「それにしても素晴らしい太刀ですね」
色は変わりない。しかし光沢が出たようにも感じる。
レブレが興奮している。
「お前も欲しいのか?」
「いえ…滅相もありません」
「ハーカに頼んで作ってもらおう。これを使っていいから好きなものを作ってくるといい」
「よろしいんですか?」
ハーカ…暇な時頼むぞ。
「かしこまりました」
居たのかー。
「レブレ。ハーカ。この龍峰の鍛治兼武器制作を頼む。無理はするな。形が済んだら呼んでくれ、溶かすのはやる」
「かしこまりました」
「私が神代様の記憶から図式します。レブレはオックの血と龍脈水を運んでください」
「わかりました」
「頼んだぞ」
『はっ』
これで装備云々は大丈夫だろう。トンネルを作りにいくか…。
「私は果実を取ってから向かいます」
テュポンと別れ、トンネルへ向かう。
これでそろそろ開通するか…。
発動してしまえば半分でトンネルは開くだろう。
さて、魔族の世界への第一歩として。
―
「どうされました?」
えっと…。壁が硬くなって、距離も稼げなくなったし、おそらくトンネルの距離も伸びた。
「なるほど…。ちなみにどれくらい削れたのでしょうか」
「30cmほど」
「…。また長いことになりそうですね」
「疲れないからまだ楽だけど」
果実を食べながら、破壊する。
30cmほどしか削れないが、連続で使用しても問題はない。
「一気に掘らないのは念の為ですか」
「そうだな」
回復効果もいつ切れるかまだわかっていない。少しずつ体を慣らしていくしかない。
「こんな感じでどうでしょうか」
帰りついでにレブレ達のところへ戻る。
刀に大剣、盾に槍。
図式的には理解ができたが…できるのだろうか。
「やってみせます」
意欲的なことはいいが…。
「一度帰るぞ。また明日からだ」
―
今まで無口だったレブレが武器の話になると饒舌になった。
今までになかった知識、特に武器に対しての知識が嬉しいらしい。
武器などを集め、使おうとしていたが、とても脆かった。
人化した力で耐えられるものがなかった。
新しくできた武器はよほど嬉しかったらしい。
それなら渡そうと思ったが…。
「いえ、それはなりません。この武器は神代様用に新調された武器です。私には少し扱い辛く。新しい武器を作りますので」
そうか…。
面白そうだな。
どんなものを作るのだろうか…。
「お楽しみにしていてください」
オックにもグローブみたいなものを作って欲しいが…。
「薄くしても難しいものです。柔らかさなどは皆無です」
「だろうな…それができれば応用で鎧や服などが作れれば問題なさそうだな…」
「柔軟性が1番の問題ですね」
だろうな…。
「神代様の記憶にある、ガラス…のようなものですかね。物は違いますが。糸…でしたか、あのような状態にしてもおそらく折れるかと」
「龍脈水を多く含ませると言うのはダメなんだろうか」
「…なるほど。再生力が高い龍水脈を使えば折れる前から再生すると…果実の皮なども使えばさらに使えるかもしれませんね」
「龍脈水と果実の皮と果汁それにオックの血…いやオックの血はあまり使わない方がいいか、貧血になられても困る」
「いえ、私の血で変わるのであればいくらでもお使いください。器を用意していただけるのであれば毎日一定量をお渡し致します」
いつの間に…。でも血が…。
「いえ、超成長のおかげなのか拳が硬く、出血もしなくなりました」
オックの拳が一つの武器に見えてきた。
二つの武器…か。
あの硬い壁を殴り続ければそうなるか…。
グローブは必要なさそうか。
「少なくともトンネルは素手で頑張りたいと思います」
グローブと拳が一体化しても困るしな…。
「今何と…?」
「いや、グローブしかも成長する武器と一体化でもしたら相当強いことになりそうだなって」
「なるほど…。常に進化するオックならではですね…」
「自分の体の一部となるのであれば…面白いかもしれません」
「やってみるか」
「やってやるさ」
何か、勝手に話が進んでいるみたいだから勝手に出ていこう。
―
理論が合っていたのか、服ができた。
今まで龍脈水で洗っていたから問題なかったが…。
「金色の服はちょっとな…」
果実の皮の色なのか、金色だ。
触り心地はガラスのような感じだが、滑らかには動く。
ちなみに果実を切ったら太刀は吸っていた。
「鱗を使えば色を変えられるかと」
15種類ある鱗のうち目を瞑りテキトーに選ぶ。
服は真っ黒に染まっていた。少しの金色を覗かせて。
『美しい…』
着替えた服を見て皆、声を揃えて言う。
新しい物の開発に成功か…。
「よく頑張った」
頭を下げているみんなに声をかける。
そしてオックのグローブ、レブレの槍のようなものができた。
「持ち手の部分に盾を着けました。私は水色の服を頂きました」
レブレは水色の金の斜めの二本のストライプ。オックは赤色に金色の横線が一本。
何があるかわからないから女性陣には渡していない。
試用期間のようなもの。
問題がなければ常時作っていく予定だ。
壁がから掘れた土はまだたくさんある。




