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水晶の世界 〜世界のコードを書き換えて敵を倒すのも楽じゃない〜  作者: ゆずさくら


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「捜索」




「起きろよ、おい。起きろって」

 とセイトは言った。

 ベッドの上には女がいた。

 女はセイトの声で目が覚めると、いつもと勝手が違うことに気づく。

「ぐっ」

 猿ぐつわとして布を捻ったものがかまされていて、声をあげれない。

 手も、足も布を捻ったもので縛り上げられていた。

「起きろとは言ったが、大声を出されても嫌なんだよね。だって、お前モブだろ。モブは黙って殺されろよ」

 女は何故こうなるまで気がつかなかったかを考えていた。

 酒場で酒を飲んで…… 確かに今日は、酔うのが早かった。不思議なほど回りが早い気がしていた。

 それで酒場で寝てしまって…… そうだ。この男に運ばれている記憶が微かだが、ある。

「お前に質問がある。この男を知らないか? ドラゴンの世話をしている男だ」

 男は似顔絵の紙を広げて見せた。

 緻密に描いてはあるが、紙はくしゃくしゃにシワが寄っていた。

 今は夜で、部屋のランプでは、絵を確認するのに光量が足りない。

「おら、よくみろ」

 男は広げた似顔絵を顔に寄せてきた。

 ボサボサの髪。適当に切ったように長さがバラバラで、しかも四方八方に広がるように伸びている。顔は童顔で、目つきが鋭い。

 女は必死に似顔絵を見て、その人物のことを思い出すが、全く記憶がない。

「ダメだな。お前も転生者なのに、こいつのことを知らないのか」

「んっ、ん……」

「用済みだ。『はい、お終い』ってやつだ」

 男の口元が笑ったように歪むが、目は鋭いままだ。

「そうだ。あんたさ、殺されるのと犯されるの、どっちが先がいい? 俺は殺してからするのが好きなんだが、今日は特別にお前の好きな順番にしてやるよ」

「ぐっ……」

「悪りぃ、やっぱりこっちのやりたいようにさせてもらうわ。血だらけの内臓に差し込んだりもしたいし」

 セイトは持っていた短剣を女の首に突き立て、切り裂いた。

 声にならない息が、吹き上がる血を撒き散らした。

 赤く染まっていくベッド。

 服を丁寧に切ってから、腹を割いて、内臓を引っ張りだす。

 セイトは服を脱ぎ下半身を露出させた。その時、すでに男性器がそそり立っていた。

 屍姦。

 殺すことと性的な興奮が入り混じって、例えようのない快楽がセイトの頭の中に溢れていた。

 女が完全に動かなくなって、セイトが果てた。

 その夜が終わった。


 翌日、セイトはリムの街を彷徨いながら独り言を言っている。

「全く手がかりがないってのはどういうことなんだ」

 日が沈み、街が暗くなると、セイトは酒場に入った。

 酒場に他に男はいなかった。

 カウンターで飲んでいる女に近づくと、言った。

「酒を奢るから、ドラゴンの世話をしている奴がどこにいるか教えてくれないか」

「何言ってるの?」

「ドラゴンの世話をしている男だ」

「先に酒を奢ってくれないかしら」

 女は持っている酒を飲み干し、器をドンとテーブルに置いた。

「知っているのか?」

「酒を奢ってくれるんじゃないの?」

 女が器を差し出すと、セイトは奪い取るようにそれをとり、テーブルに金を出すと、酒場の女主人に酒を注げと言った。

 女は器を受け取ると、クィッと一口流し込むと、カウンターの向こうにいく女主人に言う。

「地図ある?」

 カンター越しに主人が紙に書いた地図を渡した。

「どこにいるか知りたいのよね」

 女は笑った。

「けど、男はみんな戦争に出て行ったわ」

「……」

「だから、行っても誰もいないわよ」

「戦争に行ってないかもしれないから、家だけでも教えろ」

 女は、地図の上で、大まかな場所を示した。

 セイトはイラッとした表情を見せると、短剣を出した。

「えっ!」

「もっと細かくわからないのか」

 短剣が首元にくるのを押し除けながら、

「私も大体しかわからないのよ。この近所に行って聞いてみなさいよ」

 セイトは、下げていた汚い袋から一枚の似顔絵を出した。

「もう一つ聞く。この女の居場所を知っているか?」

「……」

 客の女は何も言わなかったが、眉が動いた。

 Codeの読みで、セイトは客の女が似顔絵の女のことを知っていると判断した。

 短剣が再び喉元に近づいていく。

「言えよ」

 カウンター越しに女主人が止めに入った。

「お客様」

 静止しようとした女主人の手をぐいと引っ張ると、女主人の顔に短剣を当てた。

「言わないなら、女主人(こっち)を傷つけてもいいんだぜ」

「……あんた、何考えてんの。教えるから、やめなさいよ」

 女の客は震えながらも、似顔絵の女の住まいのだいたいの場所を指し示してしまった。


 翌日、セイトはまずドラゴンの世話をしている男が住んでいると聞いた家に向かった。

 あたりの家はさほど件数がなく、全てを当たっても時間は掛からなかった。

 どの家もきれいに片付けられていて、戦争に駆り出されたことを裏付けていた。

 扉の辺りに微かに残ったCodeの欠片を読むと、家の住人がハルバルトの指定した『ケイゴ』に間違いないことがわかる。

「遅かったか……」

 ただ単に軍に入ったのではなく、ケイゴのところには女王が来ていた。どこに向かったのかはわからないが、ここを去ったのは間違いなさそうだった。

 だが、セイトの表情は落胆しているわけでも、悔しがることもなかった。

 セイトはケイゴの家を出ると、酒場の客に教えてもらったもう一つの家に向かった。

 似顔絵の束の中にあった転生者の一人。

 セイトの中で、転生前の記憶が蘇っていた。

 セイトは、幼い頃から小動物を殺したりバラしたりすることを繰り返し、人も傷つけ、少年院を出たり入ったりしていた。親や親族にも見放され、一人で上京して来て、初めて人を殺した。

 そして、初めての屍姦。

 それが似顔絵の女だった。

 もちろん、殺した後、死体はバラして少しずつ処理をしてバレないようにした。

 初めて人を殺してから、その部屋で最終的に八人殺した後、ついに足がつき、裁判にかけられセイトは死刑になった。

 だが、死刑のある国に生まれたことを恨みはしなかった。

 自らを死刑という扱いにすることで、八人殺した自分と、偉そうに説教をし、判決を下した社会のすることが同じ程度(レベル)だと思うことが出来たからだ。

 そして死刑の後、セイトは転生した。

 転生した同じ世界に、殺した相手が転生しているとは思っていなかった。

 似顔絵の束からこの女を見つけた時、セイトは思った。

『もう一度、こいつに同じことをしてやろう』

 思い出すだけで、初めての時の興奮が、セイトの体を駆け巡った。

 家に着くと、あたりの様子を伺いながら、身を隠した。

 日が暮れ、暗くなったところで再び家に近づき、音を立てずに部屋に入る。

「……」

 居ない。

 じっとテーブルに手を触れ、Codeを読み出す。

「また、女王だ」

 セイトはそう言うと、Codeから情景を思い浮かべる。

 女は、何か女王と話をしている。

 ケイゴと同じなのだろうか。

 何か女王の命を受けて、この女もどこかへ行ってしまった。

 セイトは短剣を抜くと、自らの手の甲を傷つけた。

 そしてドアを蹴るようにして開け、リムの街を走り出した。


 セイトは警察の建物につくと、叫んだ。

「ハルバルド。ハルバルドはどこだ」

 警察もほとんど軍に人員を取られ、夜ともなると殆ど人がいなかった。

 半分眠りかけていた警察官が立ち上がろうとすると、奥から片目の男が現れた。

「ハルバルド長官。あんなのに構う必要は……」

「いや、いい。俺が出る。お前は疲れているから、しっかり休息をとっているんだ」

「しかし」

「任せておけ」

 ハルバルトが制すると、警官はまたウトウトと寝てしまった。

 階下に降りると、ハルバルドはセイトに外に出るように合図する。

 しばらく街を歩いた後、ひと()のない川沿いのエリアに着くと言った。

「警察に直接くるなと言ったろう」

「いねぇんだ。ケイゴも、女も」

「直接くるなと……」

「うるせぇ。女王は何を指示した?」

「なんのことだ」

 ハルバルトはセイトから話を聞いて、状況を整理すると、言った。

「おそらく、女王は戦争を止めるためにケイゴを使うつもりだ」

「もしそうなら、どこに行く」

「俺の予想が正しければ、オークの国の首都ダウンチューブ。そこの中心。アンプ城だ」

「……」

 セイトはそこまで聞くと歩き出していた。

「どこへいくつもりだ」

「追いかければ、間に合うはずだ」

「今は戦争中だぞ、いくら俺だってオークからお前を守ることはできない」

「知ったことか」

 建物の角を曲がり、姿が見えなくなってしまった。

 ハルバルドは追いかけるわけでもなく、川を見つめていた。

「女王め。ゴブリンの王の洗脳を見抜いたか。だが、そう簡単にやらせるか」

 ハルバルドは指で顎をなぞるように触れると、何かを企むような表情を浮かべた。




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