表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶の世界 〜世界のコードを書き換えて敵を倒すのも楽じゃない〜  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/39

「思い出」




 軍がどれくらいの被害だったのかは分からない。

 俺は草原の中で寝てしまい、起きた時には夕方になっていた。

 森から襲いかかったオークの軍は、女王の軍隊が殲滅していた。その代わりに、女王の軍の側にどれだけのダメージがあったかは分からない。

 既に夕方で、今日は全く先へと進めなかった。

 その上、多足虫を失い、キズンにも逃げられてしまった。

 俺は服を着込んで草っ原に寝転ぶと、夜空を見上げた。

 ソウタの顔が夜空に浮かぶ。

『キズンが言ったことが正しかったのだ。軍隊同士の戦いに干渉せず、自らの目的を達成するよう動くべきだった』

「……」

 確かに、そうしていれば多足虫もキズンも失わなかった。超加速を使う必要もなかった。

「ソウタ?」

 俺はソウタがそこにいるような気がして、声を出した。

 しかし誰も答えない。

『これからはキズンのいうことの聞くのじゃぞ』

「……」

 俺は周りを見渡した。

 転生者は死んでも他人に干渉できるような超能力者じゃない。だから、この言葉は誰か別の者が言っているに違いない。

 背後に気配を感じ、振り返った。

 そこにはノームの姿があった。

「キズン。やっぱりお前か」

『近くにいるノームのいうことを信じるのじゃ』

「おい、見えてるぞ。今までどこにいた」

『お前が勝てる方法は例の超加速しかない。頭の上にいたら超加速の邪魔だろう? だから、俺は逃げた』

「……」

 誰がそんなこと信じられるか。

 確かに、頭の上のキズンがいたら、頭にかかる衝撃を考えて超加速を躊躇っていただろう。

 そして躊躇っていたら、対応の遅れでオークに殺されていた。

 結果としてはそうだ。だが、キズンが俺の超加速を知って脱出したとは考えにくい。

「なんで俺がこの能力を使えるって知ってた?」

 キズンは答えない。

『知っていたか、知らなかったかは問題じゃない。結果だ』

 最初にキズンがいなくなった時も、今回も、お互いが生き延びるために取らざるを得ない行動だった、とでも言いたげだ。

 まあ、女王が仲間と行けというのだから、従うしかない。

 俺は袋に入れた荷物から布切れを出して切り、肩に結んだ。切った残りをキズンに渡し、肩の上で寝たり起きたりできるように工夫してもらうことにした。頭の上にいられて、今度、どちらかの判断が遅れれば致命的だ。肩の上なら、俺も躊躇せず行動を取れる。

 だが、この能力はギリギリまで使わないようにしないと、必要な休憩や睡眠が長くなり、時間を無駄にする。

 ゴブリンの王がいる首都ダウンチューブ、その中心にあるアンプ城に早く侵入し、改心させなければ、この戦争は終わらない。長引けば戦争による被害が拡大してしまう。

『あの超加速だが』

「何だ?」

『もっと何度も使えるようにならないのか? あるいは、反動が少なくなるようにすることは出来ないのか。お前がオークに立ち向かう方法があれしかないのなら、この先、ずっとオークの領域だ。もう何度かああ言った場面に会うことになる。下手すりゃ、トロルに会うかも』

 ソウタが言っていた。

 Codeの書き換え量に比例して睡眠などの反動がくる。Codeの書き換え量をなくすには……

 ソウタのツインテールが思い出された。

『同じことを実現するCodeをまとめる。まとめ方は色々ある。メソッド、関数、最悪、マクロでも良い』

 そう言えば、ソウタが大切なことをいう時には癖があった。

 背を向けて話し始め、強調したいところで振り返る。

 綺麗にツインテールが横に広がった。

『絶対通らないCodeがないか、よく考える。これを緊急時に突然やるのは無理だ。普段からCodeを見て、考えておくことだ』

 あとは右手の人差し指を突き出し、左手を腰に当てるポーズだった。これもソウタのお気に入りらしく、よくやっていた。

『再利用可能なCodeを使うことだ。書き換えなくても、呼び出せば機能するCodeが埋め込まれている。さっきと同じで普段から考えておくんだ』

 つまり、普段から何度もCodeに触れておくこと、ということだ。

 いつだったか、ソウタが女王のことをこう表現していた。

『その点で、女王に敵うものはいない。あの方は天才としか言いようがない。修練でモノにした人とは全然違う。書き換えたCodeの量は極小なのに、効果は絶大だ。あの方こそ、この世の支配者に相応しい』

 支配者という言葉には少し違和感があったが、あのソウタがそれほど賞賛する人物だと考えると、女王の能力は想像を絶するものがある。

 俺は自分自身のCodeを読み始め、読んでいる内に寝てしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ