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【第28回】 死直界へ連れて来た理由

 ※


「それって、珍しい出来事なんですよね?」

 倉見が発した、その疑問は俺も尋ねてみたいと思っていたのだ。

 チクノクサは、「過去に何人か『死んだ人間ではない魂』を死直界しちょくかいへ連れて来ている」と言った。しかも、この様な状態を、「例外中の例外」とも告げている。

 俺達を死直界へ連れて来た理由として、「何しろ二人は『死語の世界』に興味があるらしいからな……」と、俺達に説明した一方、ベソイミカには、「この二人に『一肌脱いで貰おう』とは考えていないが、死直界や救痛界きゅうつうかいに関して、正確に理解して貰った方が良い筈だと判断している」と話した。

(俺達は特別?)という感想は、死直界へ招待された時から持っていたが、「超」が付く程の「特別扱い」であると強烈に感じていたのだ。

 その問いにベソイミカが応じる。


「第一点目として、管理長の『お礼』という意味合いが強いと思う。おそらく、君達二人は『死後の世界』に興味を持っていたと思うけど、そこに管理長が関係してしまった。しかも、管理長は自らの力で死直界へ戻れない身。でも、二人が協力してくれれば、この世界に戻って来られる。こうなれば、その〈お礼〉として、『死直界の案内』を考えても不思議じゃない。

 だけど、はっきり言ってしまえば、『その程度の事で……』という感想を僕は持っているんだ。

 別に死直界や真現界しんげんかいの話は『秘密事項』でない。確かに仮現界かげんかいにいる時の人間は、その存在を一時的に『忘れ〈させられて〉いる』状態だけど、魂に戻れば、ここの世界は『常識』に過ぎないんだ。

 半面、仮現界から見た死直界や真現界……、つまり、『死後の世界』に対して、仮現界にいる人間達は『誤解』をしている様に感じている。これは僕だけの感想じゃない。実際に仮現界へ研修に行った管理人全員が感じているのは間違いないだろう。

 実は、この点に関して、他の管理人と話した事があるんだけど、どうも、人間は『死直界の存在を無視しているのではないか?』と、僕達は考え始めたんだ。

 仮現界での人間は『死後の世界』について色々と考えている……、まぁ、これも当然の事だろう。死直界や真現界の事は忘れているのだから……。しかも、『輪廻転生』という話だけではなく、『魂』という点に関しても、忘れている……、いや、正確に言えば、『死が関連する事項について話題にする』ものの、『事実は忘れ〈させられて〉いる』訳だから、『死後の世界が気になって仕方ない』という状態になるのも当然と言えよう。

 僕が仮現界に行った時も、人間は死後の世界について、様々な考えを持っていたけど、『死直界』の様な概念が組み入れられた死後の世界を説く者はいなかった。これは僕にとって、驚きでもあった半面、疑問にもなったんだ。

 そこで第二点目だけど、管理長は君達に死直界を見せた上で説明……、しかも、出来る限り丁寧な説明をして、死直界を『理解して貰いたい』と考えたんだと思う。

 その一方、管理長は君達を『意図的に利用しよう』とは、していない様だ。僕に、『この二人に『一肌脱いで貰おう』とは考えていない』と言ったのが、その証拠と捉えている。

 管理長……、これは僕自身も仮現界で見ているけど、死後の世界に関して、他人に話した時、興味を持って聞いてくれる場合と、反感を持たれる場合とに別れるんだ。まぁ、反応としては、『無視』というのもあるけど……。

 そして、反感を持たれた場合、『命を奪われる』場合があるのも事実。昔の話だけど、僕が仮現界に行った時、死後の世界を語った者が私刑リンチになった場面を目撃している。それ程、『死後の世界』は、仮現界の人間にとってデリケートな問題とも言えるだろう。それにも関わらず、『死直界の話は誰もしない』。この事は僕らにとって、歯痒い問題なんだ。

 そんな時に管理長は二人と出会ってしまった。

『死直界に対する正確な理解を!』と思った筈だ。結論を言ってしまえば、そんな処だと思う。まぁ、後は管理長に直接、聞いてみて欲しい。

 ちなみに、以前、死直界を案内された人間達は仮現界に戻った後、その話を誰にもしなかった様だ。その理由は知らないけど一応、その事は付け加えておくよ」

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