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【第27回】 管理人の存在

 ※


 ベソイミカの隣にはチクノクサが立っている。ベソイミカが話している最中、チクノクサは一言も発していない。

(そういえば、ここの管理人って、元々、どういう存在なんだ? 選ばれた人間の魂? それとも……)

 二人の顔を交互に見ながら、俺は、そう考え、口にしようとした瞬間である。その質問を倉見が先に発した。

「うーん、それは難しい問題ですね」と、ベソイミカは言って、チクノクサの顔を見る。そこには困惑の表情が浮かんでいた。同時に、(お前が答えろ!)とも捉えられる鋭い視線をベソイミカに向ける。

 それを受けた彼は苦笑いを浮かべつつ、話し始めた。


「僕達……、いや、死直界しちょくかいだけではなく、真現界しんげんかい救痛界きゅうつうかいの管理人も、『解っていない』というのが本当の処なんだ。

 少なくとも僕達は人間の姿として捉えられるから、何だかの形で『人間の魂』と関係があるのは間違いないだろう。でも、その程度しか理解していないんだ。

 僕達は気が付いた時、既に『管理人』としての役割を任され、それを、そのまま遂行して来たと言って構わない。その事実に対して、疑問に思う事もあるけど、詮索はしない……、正確に言えば、その件を考え様としても、『その問いに関連する回答は出ない』と、自らが自らで説得を始めるんだ。

 それでも、死直界と真現界の管理人は情報交換を行う機会があるし、頻度は少ないけど、救痛界の管理人とも会う。その際に得た情報を基に自分達がいる世界に関して、ある程度という注釈は付くものの、理解はしているつもり。だけど、それ以上……、特に『自分達の存在』という話題になると、『さぁ?』としか答えられないんだ。

 その一方、『それは、それで構わない』とも考えているから『自分達の存在』という事象が僕達を苦しめる事もない。僕達は日々、自分に与えられた任務を遂行するだけ。

 管理長が人間に対して『向上心』という単語を、よく口にするけど、僕達には、それが〈ない〉とも言えるんだ。

 まぁ、『管理長』や『副管理長』という〈役職〉の様なものに関しては、死直界そのものが任命するから、従っているだけで自ら、『管理職になりたい」とは思っている管理人は、いないし……。

 更に、それで何の問題も、ない訳だから、逆に倉見さんが発した、『この世界の管理人は、そもそも、どの様な存在なのですか?』との質問には、『さぁ?』としか答えられない。

 ここで一つ付け加えると、僕達は『人間の魂』に関係する管理人。例えば、『犬の魂』が関係する真現界には、おそらく、『犬の姿をした管理人』……、まぁ、『管理人』という言い方は変だけど、そこの管理者がいる筈だし、これは『猫の魂』が集まる真現界でも同じだろう。僕達は『人間の魂が関与する世界』しか知らないから、これは想像になるけど、各々の管理者に『自らの存在』という質問をしても僕達と同じ答えを戻すんじゃ、ないかな……」


 ここまでベソイミカが話した処で別の管理人が近付く。その管理人は、「管理長」と言いながら、チクノクサの隣に立ち、耳打ちをした。それに対して、チクノクサは、「解った」とだけ告げた後、俺達の方を向いて、「少しの間、失礼する」と言い残し、この場から離れてしまう。

 俺はベソイミカに、「管理長って、やはり忙しいんですか?」と尋ねていた。それに彼が答える。


「そうでも、ないよ。ただ、些細なトラブルが発生した時に〈形として〉相談に乗る程度かな。そもそも、管理長は四年半も、ここを離れていたんだ。

 更に、この世界へ戻っても、僕以外は誰一人として声を掛けない……、正確に言えば、倉見さんと入谷君の二人がいるから、『声を掛け難い』というのが本音じゃないかな。

 でも、君達が仮現界に戻った後は、質問攻めとなるだろう。仮現界の最新情報が聞けるチャンスでもあるけど、『あの二人は誰だ!』って話になるのは目に見えている。何しろ、『生きた人間の魂』に死直界を説明しているんだから……」


「それって、珍しい出来事なんですよね?」と、倉見が口を挟む。

 俺自身も、その件に関しては相当、気になっていたが、ここで不思議な事態に気付く。

(倉見って、俺が疑問に思った事柄を、ほぼ同じタイミングで口にしている……)

 これまでも彼女に対し、会話という点で「相性が良い」とは感じていた。時には彼女が言いたい事の一部を〈先読み〉出来たのも事実である。同じ様な話を倉見も俺に対して告げた。だが、第三者との会話で疑問に思う内容と、そのタイミングまでが一緒なのには驚く。

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