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【第26回】 超現界への扉


 ベソイミカの話が続いている。


真現界しんげんかいの管理人が、ある時、気付いたらしい。『輪廻転生を拒む魂』がいる事を……。しかも、その魂は『消滅』を望んでいる訳じゃないんだ。その上、異口同音に、『別の世界へ行く』と話したという。

 そして、その様な魂だけが『未知の扉』を開ける事が出来、我々が超現界ちょうげんかいと名付けた世界へと消えてしまう。その魂は二度と真現界……、もちろん、仮現界かげんかいや、救痛界きゅうつうかいにも現れない。

 しばらくすると、第一級の魂が集まる部屋だけではなく、全ての部屋に『未知の扉』が発生してしまった」


(『別の世界に行く』……、この『別』という言葉を『神』や『仏』に置き換えられるなら、それは宗教が関与しているという意味か?)と、俺は思ったが、黙ったまま彼の話を聞き続ける。


「ここで、もう一つ説明を加えると、死直界で行われている研修は真現界の管理人も実施しているんだ。

 ある時、研修で仮現界に行った真現界の管理人が、『〈宗教〉という概念が仮現界で広まっている』という報告をした。

 ここから先は紆余曲折があったんだけど、最終的に『新しい概念を持つ人間の魂が発生し、それに対応する為、超現界が出来た』という事で落ち着く。

 本来、存在しなかった『死直界』や『救痛界』は『人間の行動』が要因で新たに出来たのを知っていたから、『超現界』の発生に対して、特段の違和感は覚えなかった。しかも、超現界が発生した処で僕達の仕事が増える訳でもなければ、それまで存在していた世界とは、全くと言って構わない程、接点もない。精々、真現界が超現界の入口になっており、しかも、その扉を開けられるのは、超現界へ行く事を望んだ魂だけ。正直に言ってしまえば、余り興味を持たなかったのも事実。

 誤解がない様に付け加えると、死直界は『魂の分類』を行う場所だけど、それは『魂の重さのみ』で決まり、僕達、管理人が魂に対して『直接、何かをしている』訳じゃない。また、真現界の管理人は『仮現界への転生を行う準備』をしているに過ぎないんだ。つまり、死直界も真現界も、その管理人は『魂そのものを管理していない』という点は把握して欲しい。

 ただ、救痛界の管理人は救痛魂きゅうつうこんを〈しっかり〉と管理しているけど……」


 この瞬間、俺は「死後の世界と宗教」との関係が、(理解出来た!)と感じる。しかし、それは一瞬の感覚であり、次第に、(あれ?)と思う様になり始めた。

 倉見も、『解った様な、解らない様な……』という不思議な表情を浮かべている。俺も同じ顔付きになっている筈だ。

 ベソイミカは俺達の方を見ながら、話を続ける。


「正直に言ってしまえば、死直界や真現界と宗教の関わりって、僕達も、この程度しか理解していないんだ。しかも、僕達が考える『宗教』……、研修で仮現界に行った管理人の報告だけでしか捉えていないけど、これと仮現界で言う処の『宗教』とは違うものかも知れない。

 ただ、輪廻転生を嫌い『特別な世界』へ行こうとする魂が多数存在するのも事実……」


 ここで、ベソイミカは何かを思い出した様に、「あっ!」と声を上げてから、言葉を発した。

「これ、余談になるけど、超現界が発生した時、その『呼び方』で真現界の管理人達は、かなりめたそうだ。いつの間にか『超現界』……、一説によると、『現状の理解を超えた世界』が語源になったと言われているけど、その様に呼ばれ出し、定着したんだ。一方、『そうなら、何故、『現超界』としなかった?』という疑問も残っているけど、それに答えられる管理人は一人もいない。まぁ、これは、これだけの話なんだけど……」

 そう言って、ベソイミカが軽く笑う。それに釣られ、何故か、俺も倉見も、その顔に微笑みを湛えた。

 同時に、(この人って、話し方が上手いかも……。軽めの口調も『理解し難い問題を、理解し易くさせる為』かも知れない……)と俺は感じている。

(こう言っては悪いけど、チクノクサが同じ内容を語っても、理解出来たか、どうか……。まぁ、ベソイミカの話も全て理解した訳じゃないが……)

 そう思いながら、まだ笑っているベソイミカの顔を俺は見た。

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