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S級の海賊のブラック・ロジャーを壊滅させたことは街にも知れ渡り、一気に英雄になった。
それでも変わらず猫根子亭で食事をしていた。
「英雄なんだからさ、他の店にも行けばいいのに。歓迎されるよ」
「必要ない。歓迎されたくて店に行くわけではないからな」
「はい、食後の金平糖」
甘いものを大量に食べることで隊長だけ特別に金平糖が出されるようになった。
焼き菓子を食べるように消費する姿は少しだけ和ませていた。
「さすがに準備も何もないまま海賊を連れて帰ると警備も抜けがあるよね」
「そうだな」
「もともと海賊じゃないから微妙なところでもあるけどね」
「そうだな」
アルベンスは海賊たちと同じように連れて来られ王都への輸送まで牢屋に入れられていた。
だが、ブラック・ロジャーの一員でもない拾い物のアルベンスに対して警備がやや疎かになったのは確かだ。
一瞬の隙にアルベンスは脱獄した。
幸いにも“破壊”は引き取りに来た法務局の人間に封じられた後だったから残った“スペル”は“魅力”だけだ。
こちらも封じる予定だったがアルベンスが“魅力”の存在をしっかりと認識しており、なかなか封じれなかった。
「どこかでハーレムを作ってるだろう」
「お金はないからパトロンの女性がいないとだめだしね」
「今回はアネットが面白がって保護していただけだからな」
「面倒なことをしないといいけどね」
その願いは届かず関係ないと言い切れないところでアルベンスは問題を引き起こした。
そのせいで第三特務部隊は忙しい日々を送ることになる。
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「いやです!絶対に嫌です!」
「でもね、セルライン」
「マグドラは黙ってて、貴女が説得に入ったら最終的には頷いてるんだから黙ってて」
絶対に拒否したいセルラインは必死だった。
ただ嫌だと言うだけで、理由がないから話も進まない。
「どうしてそんなに嫌なのよ。旦那の実家に行くだけでしょ?」
「絶対に嫌!あんな、あんな、あんな、クソガキがいるうちは絶対に嫌!」
「クソガキ?」
「セルラインって子ども嫌いだっけ?」
セルラインの言うクソガキが分かる旦那のワルナーはセルラインの頭を撫でる。
旦那の実家と軽く言うが、ワルナーは王族であり、しかもハーレムを持てるだけの財力もある。
「その『クソガキ』が何したのよ」
「私の、私の胸を揉みしだいたのよ!許せるわけないでしょ」
ワルナーの甥っ子にあたる王の息子の成人式にセルラインは何故か招待された。
国を通しての招待だったため断れず仕方なく足を運んだ。
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「本日はご子息のご生誕ならびにご成人おめでとうございます」
軍服をしっかりと着たセルラインは恭しく口上を述べた。
成人と言っても十歳だからまだ幼いが、本人は大人の仲間入りを誇らしく思っていた。
セルラインとしては祝いの言葉を述べて、さっさと帰ろうと思っていた。
「うむ」
祝いの言葉を受け取った少年は壇上を降りるとセルラインの正面に立った。
身長差はあるため見上げる形にはなるが少年は迷わずにセルラインの両胸を揉んだ。
なぜ触られるのか分からず立ち尽くしていると機嫌を損ねてしまったらしい。
「・・・なぜ喜ばん?」
「はい?」
「女は乳を揉まれると喜ぶのであろう。父上がそう言っておった。なぜ喜ばん?我に揉まれたのだから誉れであろう」
どういった教育をしたらこうなるのかは不明だが、セルラインに褒美をやっているつもりなのだろう。
多くの男を相手にしてきたセルラインは力任せに揉まれたところで喜ばない。
それがお気に召さなかったのか、軍服の合わせを力任せに引きちぎると同じように揉んだ。
「えっと」
「なぜだ!?」
「くくく、ふふふ、ははははははははは」
壇上から成り行きを見ていた王が笑いが堪えられないと肩を震わせていた。
隣に座っていたワルナーは急ぎ自分の上着を脱ぐと、セルラインの肌を隠した。
「これは傑作だ。傾国の踊り子を喜ばせることができると思っていたとはな。成人の祝いに何が欲しいと聞けば絶世の美女が見たいというから呼んだが、まさかそんな大それたことを考えたとは」
「父上ならできると言うのですか?」
「うん?無理だな。傾国の踊り子を喜ばせることができる男など一人しかおらん。なぁ?ワルナー」
「えっ?叔父上?」
「俺でもできる気がしないな。どうだ?一夜くらい共にしてみんか?」
「ふふふ、そうですわね。その王冠をいただけるのなら」
「・・・そう怖い顔をするな、ワルナー。ちょっとした言葉遊びだろう」
セルラインは始めから受ける気はないから絶対に手放すことのないものを指定した。
ワルナーの腕の中で幸せそうに微笑んでみせた。




