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「ぐはっ」
「あっしまった」
「いって」
「あら?ずいぶんと縁がありますわね」
痛みに呻いているアルベンスは視線の先にいるセルラインを見て目を丸くした。
セルラインは特に驚いた様子を感じさせずにアルベンスに近づいた。
「久しぶりね、アルベンス」
「セイレン」
「驚いたわ、あなたがこの船に乗っているなんて」
「セイレン、踊り子じゃないのか?その服は」
「あぁそうね。私はあのとき任務で潜入捜査中だったのよ。あなたがいてくれたおかげで怪しまれることなく任務を達成できたわ」
アルベンスの腕を取り下から覗き込む。
胸を当てることも忘れない。
「あぁ」
「それでね、お願いがあるの」
「お願い?俺がセイレンの願いを叶えないなんてあり得ない」
「良かった。安心したわ」
笑顔でアルベンスを抱きしめた。
突然の抱擁にアルベンスは対応に遅れる。
「っう」
「残酷だな」
「起きてていただくと面倒なので」
一瞬で首を支点に気を失わせた。
セルラインの容姿で警戒をしない男はいない。
「海で漂っているのを拾ったんだが面倒でな。そろそろ捨てようと思っていたところだ」
「残酷だな」
「この船の法律は私だ。それにこの男が死んでも困らないだろ?アルベンスと言えば山狩りをした極悪人だろう。どうしてここにいるのかは知らんが」
「仕方ないな。これを連れて撤収するぞ。ルーアン」
「・・・・・・はぃ」
「選べ。残るか行くか。覚悟の無い者は死ね」
何を選ぶのかアネットは面白そうに眺めた。
格好はアルベンスの上着を着て辛うじて隠れているだけだ。
「私は、できるなら軍人でありたいです」
「くくく、振られたな」
「そうか」
気を失ったアルベンスを連れて引き上げるつもりだったが船が急に揺れた。
真っ黒な船が砲撃してきた。
「ブラック・ロジャー!!野郎ども出撃だ!」
「待て待て待て、どこの海賊が軍人連れて出撃する!」
「久しぶりの獲物でしかも相手はS級だぞ。仕留めないでいつ仕留める!この広い海原で出会える確率がどれだけあると思ってる!?」
「なら、せめて着替えろ!」
そのまま出撃しようとしたアネットを宥めて服を着せる。
降りようとした隊長たちだが、その時間すら惜しいと言われて何故か共闘することになった。
「ここで会ったが百年目!その首、貰った!」
「どうして俺が」
「・・・すみません、隊長」
「何のための謝罪だ?」
「それは」
「ギリギリ及第点だな。おかげでブラック・ロジャーを捕まえることができる」
帰る場所と仮だったのが取られるだけで認められたと思えた。
どうして周りにつっかかっていたのかは、認められている人たちが羨ましかったのだ。
だから認めて欲しくて空回りしていた。
「ヴィヴィ!」
「これが第三特務部隊の腕章よ。普段は付けないけど式典のときには必要だから無くさないようにね」
「はい」
船は正面を向けて距離を縮めていた。
どこまで真っ直ぐ進むかが勝負だった。
「怯むな!突っ込め」
「・・・相変わらずの戦い方だな」
先に音を上げたのはブラック・ロジャーだった。
船の横を無防備に晒すとそこに船首が追突した。
それを皮切りにアネットを先頭に乗り込んで行く。
「相変わらずだ」
「あっ!」
「どうした?」
「アルベンスが落ちた」
船が衝突した衝撃で滑り落ちた。
気を失っていたから何の障害もなく落ちたのだろう。
「そのまま捨てろ」
「いやいやダメでしょ」
「大丈夫だ」
「えっ?」
何かが登ってくる音がした。
気を失ったアルベンスを抱えてマグドラが登っていた。
「隊長、だめですよ。海にゴミを捨てたら」
「・・・不可抗力だ」
「それと“破壊”の効果が分かりましたよ」
「そう言えば、そんな指示があったな」
「思考の方向性、言葉で誘導していくものですね。あとこれは制御できないものです」
制御できない“スペル”は危険しかない。
「その場の空気感というものを壊すものです。これは封じた方がいいかもしれませんね」
「上層部に報告しておこう」
船に乗り込み盛大に暴れているアネットはブラック・ロジャーを制圧した。
食料や水というものはアネットが、海賊たちとアルベンスは隊長が引き取り寄港した。
「隊長」
「何だ?」
「アネットさんたちは捕まえないんですか?」
「そうだな。捕まえる必要がない。ちょっとルーアン、潜入して来い。レディ・ブルーのところに」
「へっ?」
拒否権も何もないままルーアンはアネットに捕獲され連れて行かれた。
一体、何があるか分からないまま任務の内容も分からないまま船に乗せられた。
今度こそ軍服は目立つということで着替えさせられ、いつ終わるとも分からない任務が始まった。




