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「そろそろ来るぞ。備えておけよ」


「そろそろって、視認できる距離に船団はありませんよ」


「船団なんて必要ないだろう。たった一人で船のひとつやふたつ沈められる力を持つ者がいるんだからな」


「そんな人いるわけっ」


「くっ」


空から滑空する人影が迷いなくルーアンを狙った。


アネットは持っていた刀でレイピアを受け止めるとルーアンを背に庇う。


「たい、ちょう?」


「チッ」


「相変わらずの攻撃だな」


「無駄話をしに来たわけじゃない。軍人の賊落ちは理由如何に関わらずに極刑だ。なら今ここで殺しても問題ないだろう」


剥き身のレイピアが太陽の光を受けて鈍く光った。


隊長のレイピアはルーアンを一撃で亡き者にできるだけの力があった。


互いに攻撃の間合いと呼吸を知っているから出方を窺う。


「かわいそうにな。簡単に切り捨てられる程度にしか信用されていなかったようだぞ」


「仲間に知らせるために何もしない軍人を信用するほどお人よしじゃない」


「レオ、お前、少年姿だと口が悪いな」


「死にたいらしいな」


「くくく、心配で急いで来たと言ってやればいいのに、子ども隊長のときは素直でいいと評判らしいな」


「・・・第一手・紅雨(べにさめ)


速さを追求したレイピアはアネットの服を切り裂いていく。


意図したことではなく、急所を狙った攻撃を避けているうちに服まで避けきれないだけだった。


ほとんど裸に近い状態になったアネットは避けることを諦めて動くことを止めた。


「・・・軍人の賊落ちは理由如何に関わらず極刑じゃないのか?」


「あぁそうだな」


「だから法務局の連中に捕らえられ晒し者にされて家族にまで汚名が及ばないように知られる前に葬る」


「今殺すのも後で殺すのも変わらん」


「変わるさ。今死ねば任務中の殉職扱いで家族には見舞金が支払われ、英雄となる」


隊長のレイピアはアネットの首の皮一枚のところで止まっていた。


それは隊長の意思だった。


「口は悪くても甘ちゃんだな。その甘さが私の勝ちだ」


「何を?」


「あぁ!何をしているんだ!女に剣を向けるなんて男の風上にも置けないやつだな」


緊張感のない声は面倒なことを引き起こすことにかけては天才的な男の声だった。


レイピアを鞘に収めて声の主を見ると変わらない姿があった。


「どうしてお前が・・・?」


「拾ったんだ」


「面倒なものを・・・」


「アネット!その格好はどうしたんだ!?裸じゃないか!」


上着を脱ぐとアネットの体を隠すように被せた。


その行動にアネットはアルベンスから目を外し、体を震わせる。


「どうしたんだ!アネット!ひどいことをされたのか!?」


「ふふふ」


「女を辱めるようなことをするなど最低だな!子どもと言っても俺が許さないぞ」


「そいつを女扱いするのか?」


「そいつなんて言い方をするな!だいたいちょっと四神帝に似てるからといってコネでのし上がったくせに大きな顔をするな」


面倒なことになったと本気で嫌悪を示す隊長が四神帝とは思っていないアルベンスはアネットを守ろうとする。


守られているアネットは体を震わせて涙まで浮かべているが、それはこの茶番がおかしくて笑いを堪えているにすぎない。


「女を泣かせるような男はこの俺が成敗してくれる」



「アルベンス・・・ふふふ」


「お前の涙は俺が止めてやる」


体の震えが大きくなったのは嬉しさだと勘違いしたアルベンスは隊長に殴りかかった。


面倒な者が面倒なことをしたと、ひたすらに避ける。


一撃で沈めることはできるが、それすらもめんどくさいと感じてしまった。


「ちょっ、ちょこまかと避けるなぁ」


「避けるだろう」


「ふっ、お前のために手加減してやったが、一撃で終わらしてやる。こい!」


「はぁ面倒だな」


「なんだと!」


逆上してアルベンスは隊長に殴りかかったが船が大きく揺れて足を踏み外し、ひっくり返った。


後頭部を甲板に強打し、そのまま気を失った。


「静かになったな」


「それは良いが、やってくれたな」


「何がだ?」


「降りてくるとき、いや、落ちて来るときにマストの先端に狼煙を付けたな」


よく見ないと分からないが、遠くからは必ず分かる白い煙だった。


この煙を頼りにヴィヴィたちが船を走らせて威嚇砲弾をした。


先ほどの船の揺れは砲弾が近くに着水したことによる揺れだ。


「はぁ本当に何なんだ?陸専門の第三だろ?」


「海は専門外だが、できないとは言っていない」


「あっ!アネット!久しぶり!」


船を寄せてセルラインが乗船してくる。


軍服を着ているのに、体のラインがはっきりしているため軍人には見えない。


「おぉ久しぶりだな。セル」


「えっと、あれ以来だしね。どうして?裸なの?」


「それはな、おたくの隊長が情熱的にひんむいたからだ」


「それは!ヴィヴィ副隊長!隊長が他の女に手を出してますよぉ」


「なっ!誰がこんな女相手にするかっ」


セルラインの話を曲解した報告により笑顔だが怒りを抱えたヴィヴィが乗船してきた。


強気の少年姿でもヴィヴィには弱い。


「隊長?」


「いや、待て、誤解だ」


「なら、どうしてアネットの服が破れているのですか?」


「どうしてって、避けるから」


ヴィヴィの追及を避けようと後ろに下がるとヴィヴィが間を詰める。


その繰り返しで隊長の足は気を失っていたアルベンスを踏んだ。


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