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結婚したからと言って変わるわけでもなく、婚約したからと言って変わるわけでもなく、今日も今日とて第三特務部隊は通常運転だった。

 

「隊長、アイスクリームはこの書類を見てからです」

 

「ヴィヴィ!一日一回のアイスは外せないよ」

 

一日一回で済まないからヴィヴィは制限を掛けている。

 

中身が立派な成人男性だと分かっているのにヴィヴィの隊長への扱いは完全に五歳児への扱いだし、他の隊員もおやつで仕事をさせている。

 

「隊長!新作のお菓子ですよ」

 

「セルライン、よくやった!」

 

「このセルライン、隊長のためなら火の中、水の中ですよ。はい、あーん」

 

結婚をしているが隊長に尽くすのは変わらないセルラインは人妻だとは誰も思わない。

 

本当に通常通りだった。

 

「それでアルベンスは真面目にしてるの?」

 

「さぁ?死体があがってこないから生きてるとは思うけどね」

 

「まさか戦争が終わっても地下道を掘ってるとは思わなかったな」

 

戦争が始まってすぐの頃に地下を掘り進んで敵国の王城に侵入し制圧すれば勝てると思い名案だと信じて計画は水面下で動いた。

 

過酷すぎる環境であったから元々処刑する予定の犯罪者を使い幹部の中でも極秘扱いにして進めた。

 

戦争が終結して地下道は不要になったが、犯罪者を表に出すことを嫌った軍部が秘匿し更生の見込みのない者を送る最後の手段として機能させた。

 

「平民が騒いだ程度でそこまでっていうのはやりすぎだろうけどね」

 

「お兄様はモルドリア女侯爵のところか冒険者ギルド預かりにするおつもりだったそうですけど、お父様が処刑を言い出したため変更したと聞いていますわ」

 

「犯罪者は如何なる理由があっても殺してはならない。表立って処刑できないからということか」

 

「お父様の無駄なプライドのせいで大変だったそうですわ」

 

大人しく蟄居している前国王のもとには各国から手紙が届いているらしい。

 

内容は同盟を破棄しない代わりに今までの貿易で不利益を被った分の損害を補償することを求めるものが書かれていた。

 

国に損害を補償する力はまだないから前国王が所有する領地から得た税収で長期的に返済することになった。

 

「お兄様に代替わりをしたことで多くの国から支援を受けられるようにもなりましたし、蟄居しているお父様は自分の政策が如何に杜撰であったか思い知っているところでしょうね」

 

「ヴィヴィもこれで振り回されることなくなったしね」

 

「そうですわね。それが一番ですね」

 

アルベンスに振り回されるということはあったものの穏やかな日が戻ってきた。

 

「新しい人が来るの?」

 

「第六特務部隊にいた方だそうですよ」

 

「わざわざ第三に異動しなくても良いと思うけどね」

 

「あのときの騒動を知っていて四神帝のもとで学びたいと申請したそうですよ」

 

「あれか」

 

闘技大会の本戦で隊長が大人になったときのことだ。

 

その姿に惚れて異動をしてくる隊員も少なくない。

 

それでもそう長く持たずに違う隊へと移動していく。

 

「今度はどれだけ持つだろうね」

 

「一週間かな?」

 

大人の姿の隊長と仕事ができると思って異動した隊員は日常は子ども姿だということに落胆して戻っていく。

 

物見遊山気分で来た者は打ちのめされて帰っていく。

 

新しく配属されるたびに仕事が滞るから歓迎できるものではなかった。

 

「それもあと少しでしょうね」

 

「そう簡単に隊を異動されたら困るしね」

 

第三特務部隊に隊長が就任してからも同じことが繰り返されていた。

 

ユーリーンやフィアットが落ち着くまでヴィヴィがピリピリしていた。

 

「失礼します。本日より配属されることになりました。ルーアン=モシェットです」

 

「・・・配属は明日のはずだけど?」

 

「一日でも早く隊に慣れるために前倒しさせていただきました」

 

「そう」

 

尤もらしいことを言っているがルーアンの視線は隊長にだけ向けられていて目的が何か手に取るように分かる。

 

扉を叩いて入室の許可も求めずに入る行動は誉められたものではない。

 

「さっそく仕事だよ」

 

「はい!レオニエール隊長!」

 

「モスリスク地区に山賊が居着いたという報告があった。殲滅してきてくれ」

 

「えっ?まず町の様子を見て慣れてから、とか」

 

「期待してるよ」

 

一緒に仕事ができると思っているが甘い考えだった。

 

第三特務部隊の隊員は能力の高さから単独行動が多い。

 

「山賊か」

 

「私の時は盗賊だった」

 

「私は薬の元締めだったな」

 

入隊試験代わりに犯罪組織を壊滅させるのが決まりだった。

 

全員がそれくらいは簡単にやってのけてしまう。

 

「頑張ってね」

 

「本当に駄目だったら引き返しておいで」

 

「こちらが詳細になります」

 

顔を引き攣らせてルーアンは任務について書かれた書類を読むが何一つ頭に入らなかった。

 

辛うじて討伐のための準備をしたが同時に異動届も用意していた。

 

「てか、入隊試験厳しくない?」

 

「それくらいできないでどうするの?」

 

「絶対に何か違う」

 

「隊長、この報告書間違ってますよ」

 

第三特務部隊は今日も通常運転だった。


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