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第一王子のカムダムとて王座が積極的に欲しいわけではなかった。
それでもこれ以上の失態は目に余った。
「・・・国王は急な病にて蟄居された。これが残された手段にございます」
「覚えておれ。わしはこのままでは引き下がらんぞ」
最悪な結婚式は国王が蟄居するということで幕を下ろした。
即位した息子はすぐさまヴィヴィの結婚相手が国であることを撤回し、英雄である四神帝との婚約を発表した。
「・・・カムダムお兄様」
「父と同じことはしまいと誓っていたのだけどな。ヴィーネリアを分かりやすい宣伝に使うまいと弟や妹たちとも話していたのだけどな」
「仕方ありませんわ。国王の蟄居と共に周りに攻め入ることが不毛であると思わせなければなりませんもの。正しい選択ですわ」
政策が失敗するたびにヴィヴィに新しい婚約者を宛がい大々的に発表するというのを繰り返してきた。
それに振り回されてきたヴィヴィの苦労を見てきたからこそ同じ轍を踏むまいと誓った。
王妃は自国の公爵家令嬢であり、三代前と五代前に王女が降嫁しており歴史の長い家だ。
国王であっても軽んじることはできない家であり自分の子どもだとしても好きなように扱えない。
その点で言えば家柄では格段に劣り見目だけで選んだ側室の子どもであるヴィヴィは国王にとっては都合が良かった。
「それに悪いばかりではありませんのよ」
「ヴィヴィ?」
「それよりも乱入した平民、いえ、刑期三十五年の労働犯罪者のアルベンスの処分はどうされますの?」
「まったく面倒なことをしてくれたものだな。法のせいで如何なる理由があっても殺してはならぬ。本来なら不敬罪で処刑にでもしてくれたのだがな」
さらなる刑期を増やそうにも体がまともに動かないから増やすことに意味は無かった。
問題を起こすしかなく、反省もしていない者を国外追放にして国際問題に発展させるのも避けたい。
「モルドリア女侯爵は引き続き身柄を預かると言っているが制御できないようでは無意味だ」
「処罰はお兄様にお任せしますわ」
「はぁ父上のしたことの尻拭いというだけでも頭が痛いのに、困ったことだな」
「わたくしはこれで失礼しますわ。そろそろ第三特務部隊が王都を出立するようですので」
「ヴィヴィ、良かったのか?いくら四神帝だと言っても子どもの姿だ。お前が望むなら他の男でも良いぞ」
「フフ、レオニエール様でなくてはいけないのですよ。わたくし、少年性愛者ですのよ」
「そうか・・・ちょっと待て、どういうことだ!?」
「では御機嫌よう」
最後に更に頭を痛めるであろうことを発言してヴィヴィは部屋を出た。
事実かどうか曖昧にしてヴィヴィは立ち去った。
「ククク、妹が少年性愛者とは新国王も苦労しそうだな」
「あら、聞いていらしたの?」
「俺は嫉妬深いんだ。いくら兄と雖も男と二人きりを長々と許すほど寛容ではないぞ」
「わたくしはレオニエール様だけをお慕いしておりますわよ」
「知っている。さぁ帰るか」
「戻ったらセルラインに盛大に揶揄われそうですわね」
セルラインとワルナーの二人が拗らせていると散々言ってきたが自分たちも拗らせていた。
両想いでありながらお互いの立場から隠していたのだから十分に拗らせていただろう。
馬車には帰る準備ができているユーリーンとフィアットとセルラインとワルナーがいた。
セルラインは機嫌が悪いというのを隠さずにいる。
「お待たせしましたわ」
「もう!せっかくヴィヴィ副隊長の結婚相手をいびり倒してやろうと急いで帰って来たのにあの茶番は何よ!」
「わたくしに言われても困りますわ」
「分かってるわよ。だいたい隊長と結婚できる奇特な女なんてヴィヴィ副隊長しかいないんだから、さっさと結婚してれば良かったのよ」
廊下を歩いていたときは大人の姿だったが今は子どもの姿に戻っている。
どちらが本当の姿か分からないくらいに馴染んでいた。
「そうかしら?」
「隊長の“魅了”が効かない女なんて早々いるわけないじゃない」
「確かにね。私も一瞬くらいなら耐えられるかな?」
「“解除”かけ続ければ何とか」
「とにかく、今夜は寝かさないわよ。隊長との馴れ初め話を聞かせてもらうんだから」
セルラインが楽しそうに笑うからヴィヴィは旗色悪く後ろに下がった。
誰もが隊長を慕っているが二人の邪魔は絶対にしないという不文律を守っている。
隊長の大人の姿を見た隊員の中には恋に落ちる者もかつてはいたが、それとなく違う隊へ異動させてきた。
「それでアルベンスの処分はどうなったの?」
「新国王に一任してきたわ」
「どんな処分になると思う?」
「おそらく長くはないでしょうね」
犯罪者を労働させる場所が水路だけとは限らない。
もっとも過酷と言われている場所があり、そこに送られた犯罪者は絶対に生きて帰れない。
更生の見込みのない犯罪者を送り込むところであり、国民には秘匿されている場所だ。




