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後ろから声が上がり、車椅子に乗ったアルベンスが出てきた。

 

この状態で国王に発言するのは不敬であるし、もし何か重大なことがあるのなら発言の許可を求めなければいけない。

 

そんな手順を全て飛ばしたアルベンスは冷ややかな目で見られても仕方がなかった。

 

「本人が嫌がっている結婚を無理強いするのは間違っている!」

 

「・・・誰だ?」

 

「俺はアルベンスだ。いくら国王でも嫌がる結婚を無理強いするのは間違っている!」

 

ただでさえ、ややこしい状況になっているところに面倒にしかならない発言をするアルベンスが乱入した。

 

ヴィヴィは頭を抱えることになり、このまま退場したくなった。

 

「父親であるわしが娘の結婚相手を決めて何が問題だ!衛兵!そいつをひっ捕らえろ」

 

「待て!話は終わっていないぞ!彼女は幸せになるべきだ!おい、聞いているのか!」

 

車椅子から降ろされて身動きが取れないまま衛兵に連れ出された。

 

アルベンスを愛しているモルドリア女侯爵も国王の前に出てまで庇うことはできない。

 

沈黙を貫くことにした。

 

「何が幸せになるべきだ。幸せに決まっているだろうが、ばかめ」

 

「・・・幸せ・・・そうですわね。今までは幸せでしたわ。いきなり戦場の前線に送られても、褒章品代わりに下賜されても、それでも幸せでしたわ」

 

「そうだろう。わしの目に狂いはないのだ」

 

「狂っておりますわ」

 

「なに?」

 

ヴィヴィは静かに告げて深く息を吐いた。

 

何人かいる国王の子どもの中で側室の子はヴィヴィだけだ。

 

そのことで国王はヴィヴィを思い通りにできると思い、好きにしてきた。

 

「国王ともあろうものが、結婚式の当日に結婚相手を発表するなど愚の骨頂だということにお気づきではないようですので、狂っていると申し上げたのです」

 

「それのどこが悪いというのだ」

 

「結婚式とは家と家との繋がり、国と国との繋がりを確認するためのものですわ。それを我が国の王女は嫁がせることもできないほど無能だと、わざわざ他国に宣伝したようなものです」

 

「それは・・・」

 

「そして、国王である貴方様は、その行いを堂々となさいました。他国の方は思ったでしょう。本来なら隠すべき王家の恥とも言えることを宣言されるほど現実が見えていない王だと」

 

王族の者が国と結婚するというのは、王族としての資質がないということであり、同盟国からは価値なしと思われることだということに漸く思い至った。

 

自分を愚王だと自ら宣言したも同然のことだった。

 

「すぐに撤回しろ!」

 

「もう!遅いですわ。すでに他国よりの賓客は陛下の宣言を聞かれて自国に帰られています。手紙を送り弁明したところで意味のないものでしょう」

 

「どっどうすればいいのだ!わしは娘の身を案じて!」

 

「残されている手段はひとつです。今日このときを以て退位なさるのが宜しいかと存じます。それで少なくとも国の体面は保てます」

 

現実を見たところで遅く、地位というものに拘っている国王が退位を選択することはまずない。

 

同盟国からの援助は打ち切られ、先の戦争で煮え湯を飲まされた国は連合軍で攻め入ってくるだろう。

 

そうなれば今のこの国では迎え撃つことはできない。

 

「退位だと!ならんぞ!わしは国王でなければならない」

 

「ならば再び戦争になりますわね」

 

「何だと!?」

 

「属国にされ恨みを持っている国々は手を取り合って我先にと攻め入って来ますでしょう」

 

「同盟国がいるではないか。何も問題ない」

 

その同盟国も価値のない国王に手を貸すほどお人好しではない。

 

対岸の火事とばかりに静観を決め込むのは手に取るように分かる。

 

「同盟国も手を貸す価値のある国であれば兵を差し向けてくれるでしょうが今の状況では難しいでしょう」

 

「ならば策は?」

 

「国王陛下が退位なされば宜しいかと」

 

「それ以外だ!不敬であるとして平民に降格するぞ!」

 

「それは、わたくしにとっても望むところではありますわ」

 

王族という立場がなくなれば国王からの一方的な命令に振り回されることはない。

 

身分が無くなっても軍に在籍することは可能だから生きていくことにも困らなかった。

 

「ムゥ、総裁!総裁はおるか!」

 

「ここに」

 

「今すぐ軍を率いて出兵せよ」

 

「どの国に、ございますか?我が国には平穏な生活を営む力はあれど他国と戦争をする余力などありませんよ」

 

「四神帝を使えば良いであろう」

 

「一人で万の兵と戦わせるおつもりですか?」

 

攻め入られるなら先に攻め入ってしまえば良いという考えから出兵を命じた。

 

今の国の疲弊具合を何も分かっていなかった。

 

「国王陛下」

 

「うん?あぁカムダムか、あとにしてくれ」

 

「いいえ、同盟国の方々より同盟破棄の申し出の書状が渡されました。他の国も追って書状にて認めるとの言伝を預かっております」

 

「なんだと!」

 

「国王陛下!一刻の猶予もございません」

 

国王という立場に固執してはいるが国が滅びることを良しとはしていない。

 

打ち出す政策が悉く裏目に出てはいるが民を大切には思っている。


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