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試合は午後からだというのに観客席は満員になっていた。


姿を見せなかった四神帝を一目見ようと押しかけて、かつてないほどの盛況ぶりで立ち見まで起きた。


足場の確認に白虎は余念がないが隊長は一向に現れなかった。


「・・・では決勝戦を行います!四天王が一人、白虎!己の拳一つで勝ち上がった強者です」


「若さがあるから体力はあるだろうね」


「対するは、我らが英雄の・・・大人隊長じゃない!?どうして小っちゃいままなの!?楽しみにしてたのに!」


「彼は騒がれるの好きじゃないからね」


「きっ気を取り直して決勝戦開始です!」


実況は隊長が子ども姿であることに不満を漏らしたが観客も同じ気持ちで明らかに試合から興味を失った者もいた。


噂を聞いて来た婦人や令嬢の中には席を立つ者もいる。


隊長の応援にはユーリーンだけで他の姿が見えなかった。


「久しぶりだな、四神帝」


「その呼び名は好きじゃないな。今はただの隊長だ」


「ただの隊長ってことはないだろう。あれだけ無双してたんだからよ。で、お得意のレイピアはどうした?」


「お前相手にレイピアは必要ないだろう?」


「ふざけやがって」


白虎は小細工なしで真正面から殴り掛かった。


当たらなくても良い、ただプライドの問題だった。


「相変わらず直情型だな」


「どりゃ」


すでに破壊されているが、さらに細かくリングが砕かれる。


一度崩落しているからもっと崩れてもおかしくはない。


そのときは観客席ごとの可能性があった。


「・・・だから四天王は嫌いなんだ」


「避けてばかりだと倒せないぜ」


「ちっ」


白虎の拳が当たる寸前までひきつけると顎を蹴り上げる。


自分より小さい者に攻撃する態勢だったことで回避できなかった。


「ぐはっ」


「浅かったか」


足場が悪く力をかけにくいことが災いして一撃で落とせなかった。


これで白虎も警戒するから戦い方が変わる。


「ちぇ油断したぜ」


「良かったな。ここが戦場なら死んでいたぞ」


「次は、俺から、っと」


急に立つことができずに手をついて蹲る。


顎に入った攻撃は白虎の脳を揺らし平衡感覚を奪っていた。


「立てないとカウントされるぞ」


「言わせておけば」


「俺としてはどちらでもいい」


「このっ」


何度も立とうと挑戦するが体を起こすことすら叶わない。


無情にもカウントが入り、十まで数えられる。


「たった一撃でした!勝者、レオニエール!見事な勝利でした」


「そうだね」


「総裁には後程、詳しく解説していただこうと思います」


「それはいいけど、勝者がいないけど良いのか?」


「へっ?」


リングの成れの果てには立ち上がることを諦めて寝転んでいる玄武しかいなかった。


勝者のインタビューというものがあるが、それをする相手がいないのならやりようがなかった。


隊長がいないのは、勝者宣言と同時に観客席にいたユーリーンが“跳躍(リープ)”と“瞬発(モーメント)”を合わせて視認できる前に隊長を連れて闘技場を出たからだ。


試合時間が長くなればなるほど気になった人が集まり、身動きを取れなくなるから一分という制限をつけた。


隊長を子ども姿の第三特務部隊だと思ったままなら問題なかったが四神帝と知られれば悠長に王都にいられない。


「隊長が勝ったこと、もう知られているみたいですね」


「普通に町中を歩けないね」


「屋根の上を飛びますので捕まっててくださいね」


ユーリーンと同じだけの跳躍力を持ってはいるが、連続使用となると“スペル”が良かった。


肩に荷物のように担ぐと屋根から屋根へと飛び移る。


動くものに気づいても探すころには遥か彼方に離れている。


「うぅぅぅぅぅ」


「隊長うるさいです」


乗り心地は大変よろしくない。


王都の門ぎりぎりに馬車を待機させているヴィヴィたちと合流した。


「お疲れさまです」


「はい、お水」


「ユーリーンもお疲れさま」


「疲れたわ。しばらく歩きたくないわ」


“スペル”で動きが早くなったからといって筋力までは上がらない。


反動で筋肉痛に襲われることになる。


「セルラインはワルナー様と先に出発して関所の手続きを進めてくれています」


「試合が終わったこと知られ始めたみたい」


闘技場から離れたところの店でも噂が広まり出した。


急いで馬車に乗り込んで出発した。


「それで隊長は勝ったんですか?」


「勝ったよ」


「おめでとうございます」


「うっ、フィアット、そこ痛い」


「我慢してマッサージしないと悲惨なことになるよ」


酷使した足に薬を塗り込みながらフィアットは揉み解す。


日ごろから鍛えてはいるが“スペル”の同時連続使用は負担が大きい。


王都を縦断する距離ともなると悲惨なことになる。


「あとは総裁が取り計らってくださるでしょう」


「来年はもうでない」


「来年は開催されませんよ」


闘技場の破壊状況が思ったよりも悪く、来年までに修復は不可能という試算がでた。


それよりも壊れた水路の補修が優先となり、闘技大会の開催は見送られた。


馬車は順調に走り、第三特務部隊駐屯所まで問題なく到着できた。


代理の隊からは恨み節を言われたが不可抗力のため何とも言えなかった。


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