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極力抑えようとしているが強力すぎて本人の意思とは関係なく効果を発揮してしまう。
もともと精神系“スペル”にかかりやすいユーリーンはフィアットと手を握って効果を半減させていた。
「隊長の戦う姿はいつ見ても素敵ですわね」
「そりゃ四天王すら束ねる人だからね」
「隊長!応援してますわ!」
セルラインの声が聞こえたのだろう片手を上げて応える。
それだけでセルラインは喜びのあまり気を失いかけた。
ワルナーはしっかりと支えているが内心は複雑な思いのようだった。
「でもどうするんだろうね」
「あっ!衛兵が回収していったね」
「それが妥当だよね」
乱入者がいなくなり、それが水路労働を科せられた犯罪者だということで観客は誰も同情しなかった。
むしろ試合を早く再開して欲しいという声が上がった。
「乱入者もいなくなったので、試合を再開します。まさかまさか、子ども隊長が四神帝だったとは夢にも思いませんでした」
「彼は正体を隠すことに余念がなかったし、部下たちも徹底して隊長呼びだったからね」
「対する朱雀は戦場で背中を預けた友との思わぬ再開に動揺が隠せないようです」
「友ではないかな?」
「それはどういうことですか?」
隊長ことレオニエールは四天王よりも強い力を持ち君臨していたが、四天王を信用していたわけではなかった。
戦場での戦い方を知っている総裁からすればレオニエールと四天王との関係が良好でなかったことは明らかだった。
「まぁ見ていれば分かるよ」
レイピアの鞘を探しているレオニエールは完全に朱雀へ背中を向けていた。
それなのに朱雀は攻撃を仕掛けることができずに躊躇っていた。
「・・・攻撃しないのか?」
「子どもの姿でも避けられたのに今の姿ならもっと避けられるだろうが」
「俺は避けないさ。避ける必要もない」
自信を持って答えてレオニエールは鞘探しを続ける。
朱雀はレオニエールに爆弾を直接当てるつもりで投げた。
だが当たったのはレオニエールの側の瓦礫でそれも不発に終わる。
「くっ」
「あったあった。傷は、ないな」
戦いの最中だというのに何も気にしていない。
どれだけ朱雀が爆弾を投げても当たることなく、そして爆発することなく終わる。
「お前の攻撃は当たらないさ」
「ちくしょーーーーーー」
レイピアを鞘に納めると朱雀の胴めがけて振りぬいた。
攻撃を避けることもできずに受けてそのまま倒れた。
「気を失ってしまった朱雀!カウント十以内に起き上がらないと負けになります!これは本戦から起用されるルールです!」
「誰に説明しているんだ?」
「誰でも良いじゃないですか。気分ですよ気分」
カウントが始まるが朱雀は起き上がる気配はない。
誰もが四神帝の勝利を信じ疑うこともしなかった。
「十!勝者、子ども隊長!じゃなかったレオニエール!」
観客は大きく沸きレオニエールの勝利を祝福した。
疑う必要もないくらいの勝利だった。
それでも嬉しそうではなく、疲れたように溜め息を吐いてレオニエールは闘技場を出た。
「決勝戦は、四天王白虎対四神帝レオニエールの世紀の一戦になります。明日の午後一番となります」
安全が確保できないから違う会場で試合をしたいが、多くの観客を収容できるところがなく諦めて闘技場ですることになった。
観客にも観戦中の安全は保証できないという通達を出す異例のことになった。
観客が一般通路を潜るなかヴィヴィたちは軍人専用通路を通った。
「隊長!お疲れ様です!すごく格好良かったです」
「ありがとう、セルライン」
“変態”の効果で五歳児の姿に戻っている。
体形を維持するために食事をしなければいけないが、“魅了”の効果を広めるよりはましだった。
「いつも思うんですけどね?」
「何?ユーリーン」
「体の大きさが変わるのに服の大きさが合うのは不思議だと思うんです」
「それは俺も不思議に思ってるけど裸になったことはないんだよね」
このことについてはフィアットの“鑑定”でもマグドラの“辞典”でも解明していない。
闘技場の周りには四神帝のレオニエールを一目見ようと観客が出待ちをしていた。
「ここを出たら大変ですね」
「だから嫌だったんだ」
「隊長が“魅了”で言うこと聞かせたらどうですか?」
「嫌だ」
“魅了”を本気で嫌がっているレオニエールは効果を出さないために子どもの姿になっていた。
だがこのままでいても人がいなくなるということはなさそうだった。
誰もが四神帝を英雄として崇めて一目見ようとするほどだからだ。
「見える範囲は女性ばかりですからね。私たちでは無理そうですよ」
「それでも嫌だ」
貴族の女性はか弱いと思われがちだがダンスやパーティで立ちっぱなしということはよくある。
おそらくは疲れたから帰るというのは期待できなかった。
「ん?心なしか人が少なくなった?」
「あぁ、広場に立ったままという外聞を嫌った旦那や父親が連れて帰ってるみたいね」
「これなら待てば帰れるかな?」
時間はかかったものの人はまばらになり、貴族という外聞を気にする立場だったことを今日だけは感謝した。




