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トーナメントで負けた者が王都からいなくなっても見た目の人口密度は変わらない闘技場は賑わっていた。
実力に大きな差があればすぐに決着がつく試合もあるから順調に進む。
「隊長、大丈夫かな?」
「ユーリーン、どうしました?」
「次の相手、第三百六特攻部隊だよ」
「特攻部隊は面倒な相手ですね」
戦争になれば真っ先に前線に立ち、そのまま命を懸けて敵を殲滅していく。
この特攻部隊だけは配属ではなく志願という形で異例だった。
生きて帰ることが恥と考えて戦場で死ぬことこそが誉だと信じていた。
「中途半端な戦いでは納得しないでしょうね」
「隊長が切れないといいですけど」
戦いとなれば隊長は気が短い方ではなかった。
一撃必殺を信条に敵を制圧していく。
ユーリーンのように肉体系“スペル”なしで脅威の速度で動く。
「それでは今日も張り切っていきましょう。第三百六特攻部隊のスヴェルド!戦場では誰よりも先陣を切ることから旋風王の異名を持つ!そしてそして一度も鞘から抜かずに戦う子ども隊長!速さは負けず劣らずでしょう」
戦いの合図の鐘が鳴ると同時に二人の姿が消えた。
金属がぶつかる音で互いに切りかかっていたことが分かった。
「なかなかの速さだね、子ども隊長」
「そう呼ぶな、虫唾が走る」
「そう言わずに、似合ってるよ。それにしてもレイピアの鞘も金属なんだね」
「それがどうした」
「いや、いつ抜くのかと思ってさ。木の鞘だと僕のサーベルで砕いちゃうからさ」
「お前如きに抜く必要があると思うのか?」
隊長の挑発に眉を若干動かしたスヴェルドはサーベルを鞘に仕舞った。
ベルトに吊り下げていた鞘ごと構えた。
「なら条件を同じにしてやるよ」
「同じ?旋風王の名が聞いて呆れるな」
「子どもだからと言って手加減はしない」
勢いよく踏み込むとスヴェルドは上からサーベルを振り下ろした。
隊長と同じように鞘が金属でできているから石板にめり込み、すぐには抜けない。
いたはずの隊長の姿がなく、スヴェルドが探すころには真上に跳躍していた隊長がサーベルの上に立った。
「攻撃の仕方が一辺倒なんだよ。初戦の奴と変わらないだろうが」
「言わせておけば」
「力任せな戦い方は好きじゃない」
「このっ」
サーベルを引き抜くことに成功したスヴェルドは鞘からサーベルを抜いて切りかかった。
上に飛ばされた反動を利用して空中で後転していた隊長はレイピアでサーベルを受け止めた。
力を受け流しながら着地すると、同じようにレイピアで切りかかった。
同じように鞘に入れて戦うのは分が悪いと判断して抜いた。
「くっ」
「ちっ、飛ばせなかったか」
「ぐっ」
「三割程度だと耐えられるな」
何とかサーベルで防いでいるが勢いまでは殺せずにリングの端へと追い詰められていた。
あと一息でリングの外に出せるというのに隊長は攻撃の手を止めた。
「なぜ、止めた」
「よく見てみろ」
サーベルの一点に視線を向けた。
そこには大きなヒビが入っており、次の一撃で折れてしまうだろうことは誰の目にも明らかだった。
「そんな情けをかけられるくらいなら最後まで戦え!」
「ちっ」
無謀だと分かっていてサーベルを振り上げて隊長を切ろうとした。
流れるように避けてから舌打ちをしてレイピアをスヴェルドの首に叩き付けた。
気を失ったスヴェルドは折れたサーベルと共に倒れこんだ。
「勝者、子ども隊長」
観客は沸くが楽しそうでもなく隊長はリングを降りた。
「お疲れさま、隊長」
「本当に面倒な相手だった」
「その面倒な相手のプライドまで砕くところが凄いですよね」
我武者羅に攻撃しているように見せてサーベルの同じところばかりを叩く。
逆恨みもできないくらいにプライドを粉々にする。
「次の試合は楽しいと思いますよ」
「どういうことだ?ユーリーン」
「第十三暗殺部隊ですから」
「どんな状況でも標的のみを殺すという部隊か」
時として暗殺部隊は戦闘というものができないと思われがちだが、戦いが出来なければ隙というのも感じられない。
戦いというところで言えば、警邏部隊、巡回部隊、特攻部隊よりは上だった。
「得意な獲物は仕込みワイヤーだそうですよ」
「ワイヤーか」
「そして暗殺部隊の中でも珍しい女性の隊長です」
「あら、それは大変ね」
「隊長、女子どもには手を上げないのが信条ですからね」
初めて戦いたくないという表情を表に出した。
今までは戦うのが面倒だと口で言ってはいたが表情は楽しそうだった。
「隊長、始まりますよ」
「はぁ気が乗らないな」




