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試合が進めば強い者同士の戦いになってくる。
軍人同士ということで命を取り合うということはないが、それでも十分に迫力はあった。
「次の試合に参りたいと思います!第四巡回部隊のレマーシー!高速突きを得意とするレイピアの達人!第三特務部隊の子ども隊長!こちらも同じくレイピアを使っていますが初戦は鞘から抜かずに叩いていました」
さすがに軍人相手に体中を穴だらけにすることはないが眼前にレイピアを突きつける攻撃は戦意を奪うには、うってつけだった。
「子ども隊長とは何とも秀逸だね」
「俺が言い出したわけじゃない」
「見た目が子どもだからと言って油断はしないよ」
「はぁ」
戦いの合図の鐘が鳴ると同時にレマーシーは高速突きを繰り出した。
その軌跡を見切っている隊長は紙一重で避けていく。
「なかなかやるね」
「高速突きと言ったな」
「あぁ」
「遅いな」
「何だと」
レマーシーは激高し、レイピアの構えを変えた。
その隙の無い構えを見ても隊長は表情ひとつ変えることなく迎える。
「そのレイピアを抜くなら今のうちだぞ」
「予選の間は抜かないことにしているんだ」
「その減らず口を叩けなくしてやる!」
突きの速度が上がるが隊長は焦ることなく避ける。
むきになって数を繰り出すが全て見切られて掠ることもできなかった。
「その程度で高速突きとは笑えるな。今度はこちらからいこう」
「なっ」
目で追うこともできずに右頬を鞘に入ったレイピアが通った。
空気の動きで通ったことは分かるが避ける動作すら許されない。
「いくら鞘に入っているからと言っても避けないと死ぬぞ」
「このっ言わせておけば」
「初手・流星」
かろうじて目で追える速度で繰り出されるレイピアをレマーシーは紙一重で避ける。
意図して紙一重なのではなく、本気で避けて紙一重だ。
一瞬でも気を抜けばレイピアの突きが入り、骨折は免れない。
「避けるだけではなく反撃をしたらどうだ」
「くっ」
「まぁ終わりだけどな」
後ろに下がって態勢を整えようとしたレマーシーは踏み出した先に石板がなく、そのまま落ちた。
リングの端にまで追い詰められていたことに気づかなかった。
「勝者・子ども隊長!」
得意の技を返されて、さらに仕掛けられたことでレマーシーは悔しそうだった。
リングから降りれば自動的に負けになる。
圧勝とも呼べる勝ち方は観客の心を掴むことはできたが、対戦相手からは不評だった。
「お疲れさまです」
「予選は何試合ある?」
「残り十五試合ですね。今日はあと一試合ですけど」
こんな調子で半年ほど続き、本戦が行われる。
本戦まで進むのは猛者が多いから戦いもより白熱する。
「手加減をしなければいけないのは大変だな」
「隊長、巡回部隊隊長程度に流星は勿体無いと思いますけど?」
「戦意を失ってくれたら有り難いと思ったが上手くいかないものだな」
「そりゃ、本来の流星の速度の十分の一以下にしてたら無理だと思いますよ」
同じ隊長としても戦闘能力には大きな差があり、特務部隊隊長クラスになれば一撃で相手を殺すことくらいは造作もないことだ。
それを手加減しなければならないということで隊長の機嫌は悪かった。
「それでも見えていなかったようだがな」
「もっと手加減したらどうですか?」
「徒に試合を長引かせる趣味はない」
「はいはい、子ども隊長の試合が次ですよ」
ユーリーンは適当にあしらい、隊長を送り出した。
闘技大会も出るつもりはないが、成績によっては隊長の任を解かれることもある。
第三特務部隊隊長であり続けるためには出て勝つしかなかった。
「次は、第十三警邏部隊のアンガーソン!華麗な鞭捌きで相手を間合いに近づけないようにする鉄壁の防御を持つ!対するは未だに鞘からレイピアを抜かない第三特務部隊の子ども隊長!いつ抜くのかも見ものですね」
中距離の攻撃に対して接近戦のレイピアは不利だったが、隊長には脅威でも何でもなかった。
戦いの合図とともにアンガーソンは鞭で隊長のレイピアを掠め取った。
「獲物が無ければ負けも同然!大人しく・・・っ!」
「馬鹿が」
「うぐっ」
「獲物がない程度で戦闘力が落ちるわけねぇだろ」
掠め取ったレイピアを掲げて優越感に浸っているアンガーソンの背後に跳躍して後頭部に蹴りを入れた。
その一瞬に反応できずにアンガーソンは倒れた。
「勝者・子ども隊長!鮮やかな一撃でした。今の勝負、何が起きたか観客の方の中には見えていない方もいらっしゃるようですので、特別解説員の総裁にお願いしたいと思います。総裁、よろしくお願いします」
「ただいまご紹介に与りました総裁です。今の攻撃は膝の屈伸を使って跳躍し、相手の頭上を越えながら後頭部に蹴りを入れるという技です」
「そんなことが一瞬で行われていたのですね」
「跳躍力がないと大変難しい技ですので、日々鍛錬が必要になります」
「そうなんですね。あんなに小さいのに苦労しているんですね」
「小さくても隊長ですから」
「以上、総裁の実況解説でした」
解説がされている間に隊長は早々にリングから降りて闘技場も出ていた。
今日の試合はすべて終わっているから帰っても問題ない。
たいていは次の対戦相手の試合を見て対策を練ったりするが隊長はそんなことをする素振りもなかった。




