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恐怖の二人乗りから解放されて馬車に揺られるようになった隊長とフィアットは安眠を享受していた。
二日間、馬を走らせていたヴィヴィとユーリーンも疲れたように眠っていた。
馬車を操縦しているのは軍お抱えの辻馬車だった。
「っん、ふわぁ」
「起きたようね」
「ヴィヴィ、もう起きてたのね」
「それでも先ほどよ。隊長とフィアットはまだ夢の中のようだけど」
起きる気配のない二人はそのままにしてヴィヴィは行程を見直した。
ヴィヴィとユーリーンも強行軍で馬を走らせたことから体力の消耗は激しかった。
「あとは馬車で進むことにしましょう。これ以上、馬に乗ると町に着いたときに何もできそうにないわね」
「同感ね。それに隊長とフィアットにも難しそうだしね」
途中の宿で仮眠を取りながらアルベンスが見つかった町まで順調に進む。
まだ町にいるかどうかは賭けだった。
※※※
「第三特務部隊です。アルベンスの身柄を確認しに参りました」
「はっ、入町してから外に出た記録はありませんので、おそらく町にいるものと思われます」
「ご苦労さま」
逃げ出したのだから追われることはすぐに気づきそうなものだった。
それともここまで離れたら追手は来ないとでも思っていたのだろうか。
「アルベンスは冒険者と一緒にいるのよね」
「ならギルド?」
「そうね。聞いてみるのが早いかもしれないわね」
冒険者ギルドもそうだが、ギルドと名の付くところは仲間意識が強く犯罪者であってもギルドに損失を与えない限りは見て見ぬふりをする。
軍人が正面から行ったところで追及をのらりくらりと躱すのは目に見えていた。
それも方法次第というところではあった。
「軍人が何の用だい?」
「人探しよ。アルベンスという男を探しているの」
こっそりと大銀貨一枚を机の上に置く。
それを見た受付の女は指を一回打ち付けた。
「この町に入ったという記録はあるのだけど、それきりなのよ」
「そうかい」
「知っていることがあったら教えてくれるかしら?」
銀貨を二枚追加した。
指を一回鳴らすのは足りないという合図だった。
「いくら軍人様でも教えられないというところだけどね。アルベンスという男は冒険者ではないからね。好きなだけ聞いとくれ」
「助かるわ」
「マンナと一緒に冒険者専用の宿に泊まっているよ。何でも遠くに行かないといけないから大商人が町を通るのを待っているそうだよ」
「ありがとう」
「それと気をつけな。あのアルベンスとかいう男は手が早いよ」
「ご忠告感謝するわ」
アルベンスが町に留まっていた理由も分かり、所在も簡単に判明した。
このまま気が変わって町を出られても困るからすぐさま突入した。
泊まっているのは冒険者ばかりだから軍人である隊長一行を見て戦おうとしたが、特務部隊であることに気付いて止めた。
「あっ!ユーリーン!会いに来てくれたのか?」
「そうよ。貴方を確保するためにね」
「確保?もしかして、あの女に命令されたのか?あいつは俺に暴力を振るっていたんだ。自分の身を守るための行動だ」
両腕に痣がある程度で逃げなければいけないほどの暴力だとは認められない。
それにアルベンスは査問期間と言っても犯罪者であるから暴力を受けたと申し出ても受理されない。
「どんな理由があっても身元保証人の元から逃げた以上は脱獄よ。査問を強制停止して強制収監になるわ」
「あんな女がいるところには戻りたくないんだ。助けてくれ、ユーリーン」
「安心して、貴方はモルドリア女侯爵のところに戻らなくていいの」
「本当か!ありがとう!ユーリーン」
無邪気に喜びを表すアルベンスだが本当に助けられたかどうかは分からない。
犯罪者が脱獄をして罪が軽くなったことは一度もない。
「一緒に来て欲しいのだけど、良いかしら?」
「もちろんだよ」
「アルベンス!」
「マンナ、ちょっと行ってくる。すぐに戻るよ」
すぐに戻れると思っているあたりは楽天家だが簡単に許すつもりはない。
大人しくついて来るのを確認して宿を出た。
外では隊長がおやつ代わりのバナナを食べて待っていた。
「隊長、お待たせしました」
「隊長?ユーリーンを不当に扱っているやつか!」
「はぁ?」
「おっ!」
「まぁ!」
どこまでもお目出度い考えができるアルベンスは隊長へ殴りかかった。
素人の攻撃くらい簡単に躱して隊長はアルベンスを見つめた。
「急に何を」
「お前がユーリーンを泣かした張本人だろ!子どものくせに隊長とか言って、どうせ金に物言わせたんだろうが」
「うわっ!僕が何をした・・・うわっ」
「避けるな!うわっ!」
アルベンスの攻撃を避けたときに手に持っていたバナナの皮を落とした。
何度も殴りかかってくるから逃げるが、そのときにバナナの皮を踏んで滑って後ろに転んだ。
勢い余ってアルベンスは前に転んで近くの壁に激突した。
「いっつぅ」
体を起こしたアルベンスが見たものは女たちに囲まれている隊長の姿だった。




