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アルベンスが町に立ち寄ったと初めて報告が上がった。

 

王都から馬車で一週間の町で冒険者のパーティとして入町していた。

 

その知らせが王都に届くまでに時間がかかっており、到着したころには町にいるかどうかすら怪しかった。

 

「門番の機転で本人には何も知らせずに報告を上げてくれたのは助かったわね」

 

「町に到着したのが今から一週間前」

 

「私たちが到着する頃には入町してから二週間は経ってる計算になるわね」

 

冒険者と一緒にいたということで王都には乗り合い馬車を使ったことと、日数を逆算して王都を逃げ出した当日あたりに出発していたことが分かった。

 

どれだけ王都を探しても見つからないことには合点がいった。

 

「冒険者の名前はマンナ」

 

「確かカナリアと、アルダンテと入町したときに同じ名前があったはず」

 

「また一緒にいるということ?」

 

「偶然出会って再燃ってところ?」

 

魅力(チャーム)”の効果の持続性は人によって違うが、かかりやすさも違う。

 

どれだけ注意していてもかかってしまう人は一定数いる。

 

ユーリーンもかかりやすい部類に入っていた。

 

「それかマンナが母性本能を擽られるような男を好きになりやすい性格か」

 

「あぁ」

 

納得をしてからエクレアを次々と消費している隊長を見た。

 

椅子は自力で座れないし、甘いものを食べるといつも口の周りを汚しているので拭いてあげないといけない。

 

成人男性であるのは百も承知だが母性本能が擽られて世話を焼いてしまう。

 

「そっそんなに見てもあげないんだからね」

 

「はいはい、クリームが落ちますよ」

 

「隊長待ちなんですから早く食べてくださいね」

 

急いで出発しようとしたが隊長のおやつ時間だったから思わぬ足止めを食らった。

 

そこでおやつを止めさせようとしないあたりに隊長への優しさがあった。

 

馬車でゆっくり進んでいる暇はないから馬に乗って急ぐことになった。

 

「じゃぁ行ってくるね。留守をよろしくね」

 

いつまでも駐屯所に代わりの部隊を残しておくわけにもいかないから隊員を半分にして帰還組と王都滞在組に分けた。

 

その分け方もいろいろと大変なことになったがくじ引きという手段で結果落ち着いた。

 

「途中で馬を乗り換えますので少し急ぎますよ」

 

ヴィヴィの先導で馬を走らせる。

 

隊長とフィアットは身長のせいで早く走らせられないから後ろに乗ってただしがみ付く。

 

ヴィヴィとユーリーンの手綱さばきは初乗りの馬でも見事なもので急な崖でも優雅に降りていく。

 

「ヴィヴィ!もっと平坦な道はないの?」

 

「黙ってください。舌を噛みますよ。真っ直ぐに進みますからね」

 

崖も森も関係なく真っ直ぐに進んだお陰で三日かかる距離を一日で進んだ。

 

馬を乗り換えるためには駐屯所がある町でなけば調達できない。

 

ここからは無茶な道を進むことはできなかった。

 

「ここから真っ直ぐは難しいですね」

 

「途中に峡谷があるからね」

 

「橋があるのは二か所」

 

「商人が通る道は広くて平坦だけど速度は出せない」

 

「もう一つは旧街道ね」

 

地図を見て早く進める道を相談する。

 

後ろに乗っているだけというのも疲れるので隊長とフィアットは地面に寝転がって休んでいる。

 

駐屯所では新しい馬の用意が急ぎ行われていた。

 

「距離だけなら旧街道の方が短いよね」

 

「ただ日暮れになると森の木々のせいで暗闇になるでしょうね」

 

「今からなら夕暮れ間近に次の町には辿り着ける」

 

「山越えが必要なのは次の町までだからあとは平坦よね」

 

「問題はもう一つ。隊長とフィアットの体力が持つかどうか」

 

起き上がるのも億劫だとばかりに寝転んで動かない。

 

ゆっくり進んでもいいが、そうなると森の中での野営になる。

 

隊長とフィアットは寝ずの番はできそうにないし、ヴィヴィとユーリーンも徹夜で馬を操るのは難しい。

 

「次の町からは馬車で移動するとして残りは頑張ってもらう?」

 

「そうですね。万が一、落馬しないように結んでおきましょう」

 

反論することも許されずに背中に荷物のように括り付けられた。

 

旧街道を進むことを選択した二人は誰にも気兼ねすることなく馬を走らせた。

 

用意された馬も体力自慢で気性の荒い性格をしており、ヴィヴィとユーリーンの望む以上の速度で走ってくれた。

 

「このままなら無事たどり着けそうね」

 

「ひと雨きそうだから早く着けるのは嬉しいわね」

 

背中に括り付けたことが功を奏し、かろうじて意識を保っている二人は抱き着く握力すら失っていた。

 

落馬を気にしなくて済んだ二人は喜々として馬を走らせた。

 

「ひぃぃぃぃぃ」

 

「隊長、煩いので気を失ってください」

 

ヴィヴィからの冷たい言葉に内心、気を失えるものなら失っていると思っていた。

 

フィアットも同様でこちらは悲鳴を飲み込んでいただけだ。

 

「もう少し速度を上げたら気を失うんじゃない?」

 

「それもそうね。さぁ急ぐわよ」

 

「のわっ」

 

「フィアット煩い!」

 

ヴィヴィとユーリーンの後ろには金輪際乗らないと心に決めた隊長とフィアットだった。


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