侵入
ロゼッタ姫が告げる。
「……わたくし、陛下にお目にかかろうと思います」
「密書は燃えちゃいましたけど……どうするんですか?」
疑問を浮かべるフェリス。
「密書はなくとも、対話するほかありません。陛下もわたくしの顔はご存じですし、誠意を持って話せば分かってくださるはずです。フェリスたちはここで待っていてください」
「ど、どしてですか!? わたしもついて行きます!」
「こういう状況になってしまった以上、王宮に近づくのは危険すぎます」
「だからです! ロゼッタさんを一人で危ない目に遭わせるわけにはいかないです!」
フェリスは懸命に訴えた。ジャネットが凜々しく宣言する。
「わたくしも地獄の底まで、ロゼッタ様にお伴いたしますわ!」
アリシアがうなずく。
「どのみち帰れないのなら、用を済ませてしまった方がいいわ、ロゼッタ様」
「皆さん……」
ロゼッタ姫は胸が締めつけられた。自分とさして年も変わらない少女たちなのに、王国のいかなる軍隊よりも頼もしく見える。
フェリスたちは、ロゼッタ・ジ・バステナを助けてくれているのではない。ロゼッタという一人の女の子を愛し、支えてくれているのだ。
それが嬉しくて仕方なくて、ロゼッタは友人たちに飛びついてしまう。
「ふあっ!? ロゼッタさん!?」
「ロゼッタ様!? くすぐったいですわ!?」
フェリスを胸に抱き締め、ジャネットに頬ずりし、アリシアを抱き寄せる。甘くて、優しい匂い。血縁よりも濃い絆を、彼女たちに感じる。その暮らしを守るためにも必ず平和を実現させなければならないと、ロゼッタは心に誓う。
「正面から乗り込んでも、捕まって処刑されるか、人質に利用されるだけでしょう。プロクスの国王陛下に直接お話しする必要があります」