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白玉楼の門番  作者: 結音
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新しい自分

「…こんな私、認めたくなかったのに…。」


数秒で戻ってきた私は、そう呟きながら自身の存在を消そうとする彼女の攻撃を避けた。


そんな中でも、一度弾けた私の感情による思考は止まることを知らない。


知っていた。

気付いていた。

こんな力を私が持っていること。


…この力は人間だった頃からあり、確か中学校だったかな?


美術の時間に絵を描いているとき、綺麗な絵を描きたいと思った。

数日後には、描けていた。


その綺麗な絵を先生は才能があると、褒めた。

けれど友達は違った。


「あれってこの絵を真似ただけじゃないの?」


「しっ!聞こえちゃうよ。」


誰一人、私自身を見る者はいなかった。

そして、そんな私に更なる追い討ちが加わった。


最も信じ、愛していた家族に…私は、捨てられた。


原因は、私の力。

気味が悪いと捨てられた。



「避けてばかりで、つまらないわね。

せっかく楽しめそうないい目になったのに…。」


思考は続く。

それ以来、私は自身の能力に鎖をつけ記憶は封じ込めた。


もう、二度と大切なものを失わない為に…。


攻撃が止んだ。

彼女は呟く…飽きたと。


私は言う。

もう少し…もう少しだけ、付き合ってと。


「なら、反撃の一つでもしたらどう?」


「…わかった。」


彼女は私の言葉を聞いて、笑い出した。


「ははははっ!

逃げるので精一杯だった貴女が今、その縛られた腕で何ができるの?」


「…ごめん。」


すみません。隠していた訳ではありません。

ただ、気付けなかっただけ…いや、気付かないふりをしていただけだから。


だから、私を嫌いにならないで下さい。


風が私を包み、鎌鼬が縛っていた縄だけを切りほどいた。


「…風を操れるのかしら?」


彼女の笑い声は消え、代わりにもっと楽しませなさいと言わんばかりの、嫌な笑みがそこにあった。


「わからない…

けれど多分、望めば手にできる。」


そう言って私は、刀を何もない空間から造り出した。

…妖夢さんから教えていただいた剣術。

思い返せば、白玉楼に来て様々なことを妖夢さんに教わっていたときには、無意識のうちに力を使っていたのかもしれない…


だから、今の私は存在している。


「私は、貴女を倒してここを出る!」


「あら?あまり調子にのると後悔するわよ?

…そうね。私が勝ったら、土下座。それと…スキマが来るまで、ペットを続けてもらいましょう。」










……










「すみませんでした…」


「駄目、感情が込もってないわ。

もっと許しを乞うように惨めに謝りなさい。」


結果を言おう。私は負けた。

能力だけなら私が上だっただろう。

だが能力に対して思考が追い付かず、更に戦闘経験など一ミリも持たない私と、そうでない彼女との差は歴然かつ明確だった。


そして、今に至る…。


「う、う…ごめ、なさい。」


「あら泣いてるの?

顔を上げてみなさいな。」


そう言われ、私は彼女の顔を見上げる。

涙で視界がぼやけ、見えはしないが彼女の顔を見る。


「いいわぁ!

その顔が見たかったの。

ゾクゾクくるわね~。」


こうして、私のペット生活一日目は無事に(色々と無事ではないが)幕を閉じた。



一人の少女が私に対して言った。

私を恐れるどころか、なついて私の家に留まっている、私の友人。


「幽香さん随分楽しそうでしたね。」


「貴女の目には、そう映った?」


はい。と彼女は頷く。

長いこと一緒に居るせいか、彼女は私の妖力に耐性を付け、今では半妖に近い存在となっている。

もう、何年一緒なのだろうか…。


「後で、私からお礼を言っておきますね。」


やはり誰かに読まれてしまうのは慣れない。

…彼女は、今となっては家族同然で…彼女だから大丈夫なのかもしれない。


私は安堵のため息をついた。


「久々に、疲れたわ。」










……







●神社の境内裏



「ねぇ紫。いい加減閉じないとヤバイんじゃない?

この穴…。」


一人の少女が、現世と幻想の境界に空いた大穴を見て言った。


「大丈夫よ。」


「ついこの間まで、焦ってたくせに…。

私達じゃ時間がかかりすぎるって。」


紅白の巫女は疑惑の目を私に向けた。


万能の力を見つけたのよ。

私の言葉に対して彼女は、無関心に「あっそ」とだけ言って神社へと戻って行った。










…










●白玉楼にて…


「お久しぶりです。

管理の方いつもありがとうございます。」


白玉楼の主、西行寺 幽々子に幽霊の管理を一任している存在。

四季映姫・ヤマザナドゥ


彼女は、白玉楼を訪れていた。


「八雲 紫が、何処に行ったか…御存知ですか?」


「えーとあの子を連れて、何処かに行ってしまいましたわ。

まぁでも、二日後には戻るはずですよ?」


私の言葉に、彼女は紫に対して呆れていた。


「はぁ…また勝手なことを…」










さて私のペット生活二日目が幕を閉じたわけだが、一日を通して白玉楼にいたときと大して変わりがなかった。

違うといえば、彼女との戦い?が命がけであることだ。


…しかし驚いた。

まさか彼女の他にも、この家に人がいたとは…。


その人を見て、驚いたところ「私の他に人が居てはいけないのかしら?」と言いながら、平手打ちをかまされた。


正直なところグーパンチだったような気がするが、そこは記憶が曖昧で憶えていない。

ただ、今でも頬に残る痛みがその時の威力を物語っていた。


…そういえば名前、幽香さんと同じだったな。


「優しい花で優花です。」


彼女はそう言っていた。



明日は勝てるだろうか…

無理だろうなぁ。

私は、自分の能力も力も把握しきれていない。

そんな存在が自分のほとんどを把握している、幽香さんに勝てるはずがないのだ。


…けれど、生きる為にはいつか彼女に勝たなくてはいけない。


彼女はスキマが来るまでペットと言っていたが、そのスキマがいつ来るかなんてわかったもんじゃないからである。


…絶対に、必…ず。


いつしか、睡魔に飲み込まれていた。

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