7話 ハンター
勇は殺気に目を覚ます。
「何だ…?」
こんなに殺気を出しているのも珍しい。
そして、脇に置いた剣に手を伸ばす。
(5人ほどでしょうか?)
剣が勇に情報を与える。
「分かってる…。」
シルフは羽毛の気持ちよさに寝入っている。
ハーピィたちも同じのようだ。
勇は扉の向かい、警戒する。
「右に2」
(左に2ですな。)
お互いに状況を把握していく。
「後一人は、どこだ…?」
確かに5人いたはずだが…。
その時。
銃声が夜を裂いた。
火花が散る。
弾丸は、勇の剣によって真っ二つになっていた。
スナイパーはスコープで弾丸が斬られたところを見る。
「何…!」
スナイパーは驚いたが、直ぐに無線を入れる。
「ヤバイ奴がいる!
俺の弾丸を斬りやがった!」
スナイパーの珍しく焦った声に、緊張が走る。
「これは…一筋縄じゃいかないな…。」
ボスが独りごちる。
そして、無線を入れる。
「スナイパーはあの剣士を足止めしろ!
俺たちはハーピィを押さえる!」
無線機を強く握る。
「一匹でも捕まれりゃいい…!
俺たちは一気に行くぞ!」
「人間か…!」
勇は2つに割れた弾丸を横目に警戒する。
(どうやらそのようですな…。)
「スナイパーが厄介だな…。」
クロークを頭まで被る。
そして、闇夜に隠れる。
今回は剣を使えない。
相手は人間だからだ。
勇は物陰から飛び出し、スナイパーの位置を探る。
銃声。
直ぐに飛び退く。
「ちっ!正確だな…。
こちらが見えてる…か。」
(暗視装置か……。いや、熱を見ている可能性もある。)
装備が充実している。
位置は捉えた。
しかし、只者ではないと思い始めた。
ハンターは連携して、ハーピィ達に近づいていく。
手練の奴はスナイパーがいる。
しかし、警戒は怠らない。
「やつの位置を把握しろ。」
ボスは指示を出し、ハーピィたちに近づいていく。
このテナントは、裏から入れる構造になっている。
そして、広い。
「これだけの数のハーピィを守りきれるわけがない。」
ボスと部下は、マシンガンを構える。
足音を殺しながら、ゆっくりとテナントの裏口へ迫る。
マシンガンの安全装置を外す音だけが静かに響いた。
勇は考える。
これだけの数のハーピィやシルフを守る方法。
スナイパーが狙っている。
裏からは実働部隊。
(俺一人では厳しいか…。)
勇は二択を考える。
一人で制圧するか。
皆を起こすか。
後者はパニックを起こし、焦った奴らが撃つ。
そういうことが想定される。
(けが人がでる…。)
シルフはベッドの上で気持ちよさそうに眠っている。
(信じてみるか…?)
勇は駆け出す。
スナイパーの弾を避けつつ、裏口に向かうように見せかける。
そして、シルフのベッドに近づいていく。
「右後方。
月の下の大きな建物の屋上だ。」
シルフは頼られたことに心躍る。
「了解。」
シルフは弓を強く絞る。
ここからでは矢が届かない。
勇に標的が向いている内に、闇夜に隠れて近づいていく。
「ここからなら…。」
弓を引き絞る。
標的を定める。
キラリと光るものが見えた。
「見えた…!」
(外さない……!)
シルフは矢を放った。
「何だ…?」
矢が近づいてくるのが見えた。
(ヤバい…!)
直ぐにスコープから目を離す。
矢が頬をかすめる。
「ちっ!」
直ぐに無線を取る。
「やられた!そっちに行ったぞ!」
無線を入れる。
しかし。
ヒュン…!
矢が飛んでくる。
「くっ…!」
スナイパーはそこらの鉄板を構えて退避する。
後は仲間に任せるしかなかった。
勇は裏口に走る。
(ボスは一番後ろ…。)
手下は都合よく並んでいる。
剣を抜く。
そして、人が捉えれる速度で剣を振る。
「おっと…!」
手下が軽々と避ける。
そこで後ろ手に隠した鞘で顔を殴打する。
顔の痛みに転げる手下。
(一つ…!)
(何故、私を使わないのです!)
剣が不満そうに言う。
「黙れ…!」
飛びかかって来た手下2を剣の柄で殴打する。
そして、鞘で鳩尾を殴打。
苦しむ手下2が地面にのたうち回る。
勇は俊足で駆け寄り手下3を鞘で連打する。
顔。
鳩尾。
足の関節。
手下3が倒れ込む。
(後はボスのみ…!)
その時。
バシュ…。
その音ともに、クモの巣のようなロープが飛んできた。
勇はロープを斬り刻む。
しかし、もう一度。
バシュ…!
勇とは別の場所に飛んでいくロープ。
ロープはハーピィを捕らえていた。
それを引き寄せるボス。
「これでお前は攻撃できねえだろ?」
ロープを持って、逆さのハーピィを突き出す。
「俺たちを殺さねぇ、優しいお前のことだ…。」
クククッと笑う。
「コイツを犠牲に向かってこれねぇよな?」
ハーピィが暴れる。
「ヤダ…!」
手下が起き上がる。
勇は後ろの殺気を確認する。
「剣を捨てろ!」
ボスの指示に従い、剣を捨てる。
「拾え!」
ボスが手下に指示を出す。
手下が剣を拾い上げようとする。
しかし。
「お、重い…。
持てねぇ…。」
ボスは驚愕する。
「待てよ…。その両刃の剣…。そして、独特の紋様…。まさか…!」
その時。
ヒュン…!
矢がハーピィのロープを切る。
勇は素早く駆け寄り、ハーピィを助ける。
ハーピィを小脇に抱え、足元のパイプを蹴り上げる。
「勇者…!」
パイプを掴んで、肩を殴打する。
肩が外れる。
「ぐっ…!」
勇は隙を与えない。
肩の流れから首を打つ。
屈み込んだところに顔を打つ。
そして、腹に連打していく。
ボスが倒れ込む。
勇はハーピィのロープを解いてやる。
「あ、ありがとう。」
勇は無言でゆっくりボスに近づく。
そして、捕獲アンカーを奪う。
後ろからバサバサと音が聞こえる。
手下4人はハーピィたちが始末してくれたようだ。
ハンター達を一箇所に集める。
そして。
「俺を勇者と呼ぶな…!」
バシュ…!
勇は捕獲アンカーを使う。
ハンター達はロープで絡め取られた。
気絶しているハンター達の武器を奪っていくシルフ。
「これでしばらく大丈夫でしょ。」
シルフが勇にハイタッチを要求する。
勇は無言で背を向ける。
「もう…!さっきまで、いい感じだったじゃん!」
シルフが勇の背を叩く。
ハーピィたちがその姿を見て笑い合っていた。
「はあ…ここ気に入ってたのになぁ…。」
外に出たハーピィたちは、名残惜しそうにショッピングモールを見る。
「でも、ここにいるとまた、奴らみたいのに狙われるよ。」
シルフが心配そうに言う。
「わかってる。
また、新しい住処探すよ!」
ハーピィたちが飛び去っていく。
シルフは両手を上げて、手を振る。
「バイバ~イ!またねぇ!」
叫びつつ別れを惜しむ。
勇は背を向け、歩き出す。
「あ!待ってよぉ!」
シルフが後ろをついていく。
「待って!」
振り向くと、勇が助けたハーピィがいた。
「うちもあんたらと一緒に行く。」
何やら、モジモジしている。
シルフは勇とハーピィを交互に見る。
「まさか…!」
「うち、あんな助けられ方されたの始めてだし…。」
頬を染める。
「良いでしょ?」
勇は無言で背を向ける。
そして、歩き出す。
(厄介なことになった…。)
「ちょっと! 勇は私が先に見つけたんだから!」
「知らないし! 助けてもらったのはうちだし!」
「順番とかないから!」
勇は前を向いたまま、
(また、厄介なことになった…。)
そう思いつつ、喧嘩を背に旅を続ける。




