6話 ハーピィ
勇とシルフは旅を続けていた。
相変わらず、無許可でシルフがついていく。
たまに拒否されているが…。
シルフは「はいはい」といつも受け流す。
勇はもう何も言わなくなった。
それを許可が出たと喜ぶシルフに辟易としていた。
大きな街に出てきた。
(ここは、壁ができる前に壊滅したんだな…。)
そう思いつつ、足を踏み入れる。
後ろをついてくるシルフはお上りさんのように街を見渡す。
「わぁ~。私、こんな大きな街初めてだ!」
勇は構わず、歩いていく。
「待ってよ〜!」
シルフは小走りで後につく。
勇はこういう崩壊した街を歩くと、気分が沈む。
割れて散らばったガラス片。
草に覆われた車。
ツタが絡まったビル。
嫌でも、自分のしたことを突きつけられる。
勇が歩いていると、何かに気づく。
「いるね…。」
(6匹か…。)
この世界になってから、よくゴブリンと出会う。
ゴブリンは生息域が広い。
こんなに広いとは初めて知ったことだった。
ゴブリンは森や洞窟に住んでいるものだと思っていた。
食料が街に集まっていたかもしれない。
「来る…!」
ギャギャッと飛び出してくるゴブリン。
クロークを翻し、剣に手をかける。
「うるさぁ〜い!」
空から何かが飛来する。
それは人型だった。
しかし、腕に羽根が生えていて空を飛んでいる。
「ハーピィか…!」
ハーピィは群れでゴブリンに襲う。
一匹はハーピィの足で引っかく。
一匹は空に持ち上げられ落とされた。
次々と、ハーピィ軍団にやられていく。
ゴブリン退治を終えたハーピィたちは、ショッピングモールの大きな看板に次々と降り立つ。
一人のハーピィが翼をたたみ、勇たちを見下ろした。
「あなたたちも騒ぐ?」
勇たちはハーピィたちに案内され、ショッピングモールに入っていく。
そこはハーピィたちの住処になっていた。
服でおしゃれを楽しむハーピィたち。
どの服が飛びやすいか見比べている。
雑貨屋にもハーピィたちが商品を見ていた。
これが可愛いとキャラクターグッズを漁っている。
美容院は経営しているのか、ハーピィがハーピィの羽根を手入れしていた。
シルフは目を輝かせて、辺りを見回す。
これだけ店が並んでいる姿が物珍しいのだろう。
「うちら、ここにこないだ来たばっかり何だけど、超気にいっちゃった。」
そう言いつつ、自分の自慢の羽毛についているネックレスを見せびらかせる。
「うあ!綺麗…。」
シルフはそのネックレスに食いつく。
「うちのだからあげないよ!
でも、興味あるなら連れてってあげる。」
ハーピィはシルフを連れて宝石店に入っていった。
やっと一人になれると椅子に座る。
シルフとハーピィたちがキャッキャ言いながら、一軒一軒回っている。
「腹減ったな…。」
勇は飲食店の中に入っていった。
厨房に入ると、食べられそうなものを探す。
食べられそうなものと言えば、缶詰くらいだが…。
10年も経てば、何もない。
大抵の食料は腐るか食べられている。
缶詰を見つける。
すると、ハーピィが近づいてくる。
「それ、どうするの?」
「…。」
勇は無言でフォークを取り出す。
「それ、食べ物じゃないわよ?」
勇はハーピィを一瞥して、缶を開ける。
蓋のプルタブを持ち上げる。
ハーピィの凝視する。
カコンッ…。
軽い音。
その音ともに、肉の匂いが広がる。
「え!?」
驚くハーピィを尻目に食べ進める。
「なにそれ!なにそれ!」
驚いて勇の周りを飛ぶハーピィを鬱陶しく思う。
「まだ、あるぞ。」
そう言ってハーピィを追い払う。
しかし。
ハーピィの騒ぎを聞きつけて、一斉にハーピィたちが集まってきた。
バサバサと羽根が舞う。
ハーピィたちが物珍しそうに、勇の周りを飛び回る。
さっきより鬱陶しくなった。
先程のハーピィが缶詰を見つける。
「これ食べもの!」
いや、まさかまさかとどこぞのノリをやっている。
「本当なんだって!」
しかし。
羽根でプルタブが開けない。
足でやろうにも、難しい。
ハーピィが勇を見る。
しかし、知らないフリをする勇。
そこにシルフが現れる。
「この人無口なの。」
と言って、シルフが缶詰を開ける。
ここしばらくの旅で、勇に教わった。
教わったと言うか、缶詰を開けるところを見て技術を盗んだ。
シルフが英雄のように褒め称えられている。
皆が勢いよく食べ始める。
「うま~い!」
「何でこの中に肉が入ってるの?」
口々に感想を言い合い、食べている。
勇はここの食料もすぐなくなるなと思い始めた。
すっかり仲良くなったシルフとハーピィたち。
と勇。
ハーピィたちはすっかり気をよくしている。
勇は旅に必要そうなものを探す。
雑貨などは、旅に必要なものが置いてある。
勇はエスカレーターを登ろうとして、転けそうになる。
それをシルフが後ろから笑う。
10年経っても、動かないエスカレーターは錯覚を起こす。
「階段で転けそうになってる」
ゲラゲラ笑いながら、普通に登るシルフ。
勇は違和感が取れなかった。
勇は買い物を済ました。
必要のあるものを買い揃えた。
店の中でも騒がしかった。
「これ何?」
「これは?」
「どうやって使うの?」
質問攻めで鬱陶しく思っていた。
夜も更ける。
今日は久しぶりにベッドで寝れると思う。
勇は歩き出す。
「今日はここで野宿?」
シルフが聞く。
ハーピィたちが集まって言う。
「泊まっていけば?」
シルフはハーピィたちに向かう。
「いいの?」
「あなたたちならいいよ!」
シルフは喜んで報告する。
「ああ。」
短く答えて、奥の寝具屋に行く。
カビているかもしれないが、仕方ない。
ベッドに入る勇。
「これ…寝る時に使うやつなの?」
恐る恐る腰を下ろす。
「わっ!」
身体が沈み込む。
「なにこれ!?」
シルフは目を輝かせた。
そして、ベッドの中に入る。
シルフは直ぐにベッドの虜になった。
「ハーピィを見つけたぞ…。」
男が望遠鏡を覗き込む。
仲間の男がスナイパーライフルを磨く。
「確実にやるぞ?」
男は舌なめずりする。
「生け捕りならもっと高く売れる。
貴族どもには珍獣好きも多いからな。」
「ハンター稼業。いい時代になったな。」
仲間たちは声を押し殺して笑う。
「俺たち、はぐれものには良い商売だぜ。」
「城壁都市じゃ仕事がねぇ。
街で楽して暮らせるぞ…!」
男が立ち上がる。
「さあ、狩りの始まりだ。」




