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打ち出の小槌を鳴らしたら、現実世界が異世界化した件  作者: さく


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7/11

6話 ハーピィ

勇とシルフは旅を続けていた。

相変わらず、無許可でシルフがついていく。

たまに拒否されているが…。


シルフは「はいはい」といつも受け流す。

勇はもう何も言わなくなった。

それを許可が出たと喜ぶシルフに辟易としていた。


大きな街に出てきた。

(ここは、壁ができる前に壊滅したんだな…。)

そう思いつつ、足を踏み入れる。


後ろをついてくるシルフはお上りさんのように街を見渡す。

「わぁ~。私、こんな大きな街初めてだ!」


勇は構わず、歩いていく。

「待ってよ〜!」

シルフは小走りで後につく。


勇はこういう崩壊した街を歩くと、気分が沈む。


割れて散らばったガラス片。

草に覆われた車。

ツタが絡まったビル。


嫌でも、自分のしたことを突きつけられる。

勇が歩いていると、何かに気づく。


「いるね…。」

(6匹か…。)

この世界になってから、よくゴブリンと出会う。

ゴブリンは生息域が広い。


こんなに広いとは初めて知ったことだった。

ゴブリンは森や洞窟に住んでいるものだと思っていた。

食料が街に集まっていたかもしれない。


「来る…!」

ギャギャッと飛び出してくるゴブリン。

クロークを翻し、剣に手をかける。


「うるさぁ〜い!」

空から何かが飛来する。

それは人型だった。


しかし、腕に羽根が生えていて空を飛んでいる。

「ハーピィか…!」

ハーピィは群れでゴブリンに襲う。


一匹はハーピィの足で引っかく。

一匹は空に持ち上げられ落とされた。

次々と、ハーピィ軍団にやられていく。


ゴブリン退治を終えたハーピィたちは、ショッピングモールの大きな看板に次々と降り立つ。

一人のハーピィが翼をたたみ、勇たちを見下ろした。

「あなたたちも騒ぐ?」




勇たちはハーピィたちに案内され、ショッピングモールに入っていく。

そこはハーピィたちの住処になっていた。


服でおしゃれを楽しむハーピィたち。

どの服が飛びやすいか見比べている。


雑貨屋にもハーピィたちが商品を見ていた。

これが可愛いとキャラクターグッズを漁っている。


美容院は経営しているのか、ハーピィがハーピィの羽根を手入れしていた。

シルフは目を輝かせて、辺りを見回す。

これだけ店が並んでいる姿が物珍しいのだろう。


「うちら、ここにこないだ来たばっかり何だけど、超気にいっちゃった。」

そう言いつつ、自分の自慢の羽毛についているネックレスを見せびらかせる。


「うあ!綺麗…。」

シルフはそのネックレスに食いつく。


「うちのだからあげないよ!

でも、興味あるなら連れてってあげる。」

ハーピィはシルフを連れて宝石店に入っていった。


やっと一人になれると椅子に座る。

シルフとハーピィたちがキャッキャ言いながら、一軒一軒回っている。


「腹減ったな…。」

勇は飲食店の中に入っていった。


厨房に入ると、食べられそうなものを探す。

食べられそうなものと言えば、缶詰くらいだが…。

10年も経てば、何もない。

大抵の食料は腐るか食べられている。


缶詰を見つける。

すると、ハーピィが近づいてくる。

「それ、どうするの?」


「…。」

勇は無言でフォークを取り出す。

「それ、食べ物じゃないわよ?」


勇はハーピィを一瞥して、缶を開ける。

蓋のプルタブを持ち上げる。

ハーピィの凝視する。


カコンッ…。

軽い音。

その音ともに、肉の匂いが広がる。


「え!?」

驚くハーピィを尻目に食べ進める。


「なにそれ!なにそれ!」

驚いて勇の周りを飛ぶハーピィを鬱陶しく思う。

「まだ、あるぞ。」


そう言ってハーピィを追い払う。


しかし。


ハーピィの騒ぎを聞きつけて、一斉にハーピィたちが集まってきた。


バサバサと羽根が舞う。

ハーピィたちが物珍しそうに、勇の周りを飛び回る。

さっきより鬱陶しくなった。


先程のハーピィが缶詰を見つける。

「これ食べもの!」

いや、まさかまさかとどこぞのノリをやっている。


「本当なんだって!」

しかし。

羽根でプルタブが開けない。

足でやろうにも、難しい。


ハーピィが勇を見る。

しかし、知らないフリをする勇。

そこにシルフが現れる。


「この人無口なの。」

と言って、シルフが缶詰を開ける。

ここしばらくの旅で、勇に教わった。

教わったと言うか、缶詰を開けるところを見て技術を盗んだ。


シルフが英雄のように褒め称えられている。

皆が勢いよく食べ始める。

「うま~い!」

「何でこの中に肉が入ってるの?」


口々に感想を言い合い、食べている。

勇はここの食料もすぐなくなるなと思い始めた。




すっかり仲良くなったシルフとハーピィたち。

と勇。

ハーピィたちはすっかり気をよくしている。


勇は旅に必要そうなものを探す。

雑貨などは、旅に必要なものが置いてある。


勇はエスカレーターを登ろうとして、転けそうになる。

それをシルフが後ろから笑う。

10年経っても、動かないエスカレーターは錯覚を起こす。


「階段で転けそうになってる」

ゲラゲラ笑いながら、普通に登るシルフ。

勇は違和感が取れなかった。




勇は買い物を済ました。

必要のあるものを買い揃えた。


店の中でも騒がしかった。

「これ何?」

「これは?」

「どうやって使うの?」


質問攻めで鬱陶しく思っていた。

夜も更ける。


今日は久しぶりにベッドで寝れると思う。

勇は歩き出す。

「今日はここで野宿?」

シルフが聞く。


ハーピィたちが集まって言う。

「泊まっていけば?」

シルフはハーピィたちに向かう。

「いいの?」


「あなたたちならいいよ!」

シルフは喜んで報告する。


「ああ。」

短く答えて、奥の寝具屋に行く。


カビているかもしれないが、仕方ない。

ベッドに入る勇。


「これ…寝る時に使うやつなの?」

恐る恐る腰を下ろす。


「わっ!」

身体が沈み込む。

「なにこれ!?」

シルフは目を輝かせた。

そして、ベッドの中に入る。


シルフは直ぐにベッドの虜になった。




「ハーピィを見つけたぞ…。」

男が望遠鏡を覗き込む。

仲間の男がスナイパーライフルを磨く。


「確実にやるぞ?」

男は舌なめずりする。

「生け捕りならもっと高く売れる。

貴族どもには珍獣好きも多いからな。」


「ハンター稼業。いい時代になったな。」

仲間たちは声を押し殺して笑う。

「俺たち、はぐれものには良い商売だぜ。」


「城壁都市じゃ仕事がねぇ。

街で楽して暮らせるぞ…!」

男が立ち上がる。


「さあ、狩りの始まりだ。」

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