表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
打ち出の小槌を鳴らしたら、現実世界が異世界化した件  作者: さく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/11

1話 蔵

ーー10年前。


「いくぞ~。」

茂がカメラを構える。

カメラに映し出されたのは、勇。

カメラに向かって、おちゃらけたりする。


「おい!

お前のお祖父ちゃんの蔵に宝物があるって本当かよ?」

茂が勇を中心に収めながら、聞く。


「おう。お前の昔のもの好き欲も満たせるぜ!」


「昔のものじゃない。神話級のものがあれば最高なんだけどな。」

茂は古代文明や神話の研究が趣味だった。


勇の祖父は無類の骨董好きだった。

家には古い品が山のようにあり、そのほとんどがこの蔵に眠っている。

そのことを聞いていた茂は勇の祖父の蔵には興味があった。


勇は胸を張って、蔵へと歩き出す。


勇と茂の後ろを歩いているのは桜。

幼稚園のころからの腐れ縁だ。

呆れ顔でついてくる。


「でも、大丈夫なの?

勇のお祖父ちゃんから、危ないから近づくなって言われてるんでしょう?」

確かにそう言われていた。


物が沢山あって危ないと言われたからだ。

しかし、勇は祖父の考えを読んだ気になっていた。

コレクションを触られたくないんだと・・・。


祖父が亡くなってから、蔵は手つかずだった。

誰も蔵の存在を忘れていた。

ある日、茂が言った。

「勇のお祖父ちゃんの蔵ってどうなったんだ?」

と言う言葉から気づいて、冒険することになった。


勇は祖父の部屋だった和室の引き出しから、蔵の鍵を見つけていた。

「大丈夫だって! ついてこ〜い!」

いつもの調子で桜に答える勇。


「また、勇は・・・。」

桜が肩をすくめて呆れる。

「いつものことだろ。」

茂も桜も勇の特性を理解している。


蔵の前に立つ。


黒ずんだ木の扉。

錆びた錠前。

軒先には蜘蛛の巣が張り、何年も人が出入りしていないことが分かる。


勇自身も蔵の中身に興味があった。

「レアものがあったら、お小遣いにしよ!」

そして、最近はやりのヒーローもののラノベを買おうとしていた。


蔵の錠前に手をかける。

「いくぞ?」

勇はゆっくりと錠前にカギを差し込んだ。





重い音を立て、扉がゆっくり開いた。

勇が中を覗き込む。


中は埃っぽく、真っ暗だった。

勇は手探りで、照明のスイッチを探す。


次に茂がカメラを構えて入る。

その後ろから不気味な雰囲気に怯えながら、桜が入ってくる。

「本当に入るの?」


勇がスイッチを発見して、照明をつける。

「大丈夫だって・・・。」

蔵が明るくなる。


急に明るくなり、目が眩む。

しかし、次第に目が慣れてくる。

そして、蔵の全貌が明らかになる。


そこには、想像とは違い、丁寧に並べられた骨董品の数々。

お祖父ちゃんが骨董品を大切にしていたことが分かる。


最初に興奮したのは茂。

撮影するのはそっちのけで、骨董品の数々に食いつく。

「うぉ!これすごいぞ!」


茂が一つの骨董品の前で繁々と眺める。

手が触りたくてウズウズしている様子だが、葛藤しているのが分かる。


「なんだ?」

勇がその声を聞きつけて、近づいてくる。


「高いものなのか?」

勇は何も気にせず、持ち上げる。

茂はそれを慌てて止める。

「おい!貴重なものかもしれないんだぞ!」


その光景に呆れて見る桜。

明るくなって、少し安心したのか蔵の中を散策し始める桜。


桜の目を惹く宝石の類もある。

「きれい・・・。」


「持っていったらいいじゃん。」

いつの間にか、後ろに立っていた勇に驚く。


「バカ!そんなことできるわけないでしょ!」

桜は怒りつつも後ろ髪をひかれる思いでその場を後にする。


「おい!あれなんだ?」

突然、茂の声が聞こえる。


蔵の最奥。


そこに一際目立つ箱が鎮座していた。

他の骨董品は綺麗に並べられている。

しかし、その箱だけは乱雑に積まれた品々の奥へ押し込まれるように置かれていた。

まるで、誰かが隠そうとしたかのように。


3人は顔を見合わせる。


勇は口角を上げる。

そして、真っ先に手を伸ばした。




勇は両手で箱を抱え、ゆっくりと手前へ引き寄せる。

「重っ……。」


木箱は長い年月を経て黒く艶を失っていた。

表面には見慣れない紋様が刻まれている。


勇はニヤリと笑った。

「なんだと思う?」


茂を見る。

無言で首を横に振る。


今度は桜に目を向ける。

桜も首を横に振る。


勇もわからない。

しかし、中身が見たくて今の勇は止められない。

勇が箱に手をかける。


「おい!やめろよ。

やばいものかもしれない。」

そう言いながらも、好奇心で顔がにやける茂。

正直、中身が見たい。


桜も同様だ。

「2人とも見たいくせに。」

そう言うと、勇は箱を開ける。


埃が舞う。

咳き込む3人。


箱の中身が見えてくる。


そこには煌びやかに装飾されたハンマーのようなものが入っていた。

「これ・・・なんだ?」

振ると、シャンシャンと音が鳴る。


茂が顎に手を当てる。

「それって・・・。まさかな。」

疑わし気に悩み始める茂。


「なんだよ。」

茂のその様子に急かすように聞き返す勇。


「神話の時代に打ち出の小槌というものがある。」

茂は諦めたように答える。

こうなった勇はしつこいと理解していた。


「打ち出の小槌?何それ?」

桜が聞き返す。


「昔話に一寸法師ってあったの知らないか?

その最後に出てきた・・・。」

茂が2人を見つめて言う。

それに食い気味に勇が返す。

「一寸法師が大きくなる時に使ったやつ?」


茂は無言でうなずく。

勇は小槌を繁々と見つめつつ

「じゃあ、願いが叶うってこと?」


「嘘だぁ。」

桜が疑心暗鬼に答える。


「願いはかなわないかもしれない。

でも、この装飾。」

茂は勇から小槌を奪いつつ、観察する。


「神話で描かれた小槌に似すぎてる。」

桜も茂の持つ小槌を観察する。

「ふ~ん・・・。」


突然、勇が茂の小槌を奪い返す。

「振ってみようぜ」

そして、勇は目を瞑る。


勇は何を考えているのか動かない。


唐突に目を開け、小槌を振る。


シャラン――。


きれいな音が蔵に響く。


次の瞬間。


チャリン。

勇の目の前に、一枚の小判が落ちた。


三人は固まる。

目を見合わせる。


もう一枚。

また一枚。

気付けば、小判が次々と床へ降り注いでいた。


止めどなく小判が溢れる。

3人の足元が小判でいっぱいになる。

「本物だ!」


勇は小槌を手放し、小判を手にいっぱい掴み取る。

「これも本物か?」

茂に手渡す。


茂は小判を見つめる。

「本物に見える・・・。」


勇は小判をかき上げて、大喜びする。

茂と桜の目も輝いていく。

「次私ね!」

桜が小槌を取り上げ、振る。


ーーシャラン。


ボトリと限定もののバッグが落ちてくる。

そして、桜が欲しがっていたものが次々と現れていく。

アクセサリー。

化粧品。

桜はそれを大事そうに抱えて目を瞑る。


茂はそれを見ていてもたってもいられなかった。

小槌を拾い上げると、それを振る。


ーーシャラン。


今は現存しない書物がドサドサと落ちてくる。

茂は一冊を震える手で開いた。

目が輝いていく。

知識欲やわからなかったことが補完されていく。

茂は恍惚の表情で書物に目を通す。


勇は小判だけで満足できなかった。

叶えたい願いは金持ちになることではない。


勇の願い。


勇は小槌を取り、目を瞑る。

ファンタジーの世界。

ドラゴン。オーク。

エルフ。ドワーフ。


そして。


勇者。

勇の憧れは勇者になること。


ゆっくりと目を開ける。

小槌を見つめる。

「俺は勇者になりたい!」


シャラン――。


何も起こらない。

勇は苦笑する。

「やっぱり無理か。」


その瞬間。


ズンッ……。


蔵全体が揺れた。

三人は顔を見合わせる。


もう一度、地響きのような音とともに蔵が揺れる。


ズンッ。


外から、地面を震わせるような咆哮が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ