9話 ギルド
目が覚めると、暖かい日差しが入ってきていた。
久しぶりによく寝られた気がする。
外にいるときは気が張っている。
(安心して眠れたのは、いつ以来だろうか?)
勇の脳裏にふとシルフとハープの顔が過る。
ここ最近、何かがおかしい。
何かは分からない。
けれど。
ドアがドンドンと叩かれる。
勇は警戒して、剣を取ろうとする。
検問所に預けてあるんだった。
やっぱり、何かがおかしい。
「勇〜!お腹減った!」
ハープの声がする。
「朝食行こ」
その後にシルフの声が聞こえた。
勇は柔らかな顔でドアに近づいていった。
ドアを開ける勇。
その顔はいつも通りに戻っていた。
しかし。
「人の迷惑になる。
騒ぐな。
行くぞ。」
シルフとハープは目を見合わせる。
シルフが勇の背を叩く。
「今日、優しくない?」
ハープも勇の周りを飛びながら
「優しい!」
勇は怪訝そうに二人を見る。
「うるさい。」
そう言って歩き出す。
後ろから二人が駆けてくる足音が聞こえた。
勇は振り返らなかった。
勇一行は朝食会場につく。
そこはバイキングになっていた。
色とりどりの料理と飲み物が並べられている。
シルフとハープは目を輝かせる。
「こんなの見たことない!」
シルフはそう言いつつ、料理の並べられたテーブルに行く。
ハープも勇の周りを飛びながら聞く。
「どれが私たちの?」
「ここにあるのは、全部食べていい。」
勇は会場を指さす。
「皿を持って取っていくんだ。」
ハープは目を輝かせ飛んでいく。
「これ全部!?」
二人は嬉しそうに皿によそっていく。
しかし、勇は不審に思う。
(こんな食料を何処で調達してる?)
壁が出来てから、土地がなくなった。
それはつまり、畑も牧場もないということ。
なのに。
勇が二人に目を向ける。
皿は山盛りになっていた。
勇は溜め息をつき、止めに行った。
「食べれない程とるな。」
勇が注意する。
「勇が全部良いって言ったもん。」
ハープが文句を言う。
「食べれるって!」
シルフがドヤ顔で言う。
数分後
「お腹いっぱい…。」
二人はもう入らないといった様子だ。
「だから言っただろ。」
勇は頭を抱えた。
勇は壁に手をつける。
これだけ食ったのも久しぶりだ。
自分の分を取らないで正解だった。
シルフとハープの後片付けは目に見えていた。
「うぷ…。」
勇一行は今日の目的。
ギルドに向かう。
シルフとハープはケロッとしていた。
周りにあるもの全てが新鮮のようだ。
シルフが勇の腕を掴んで聞く。
「勇!あれ何?
みんなが持ってる平べったいやつ。」
シルフの指差す先を見る。
行き交うスーツ姿の人々が持っている。
「スマホだ。」
まだ、10年では進化できるほど余裕はないらしい。
勇は10年前と変わらない安心感を覚える。
ハープも勇を掴んで揺らす。
「あれは?あの大きな箱。
外にもあったけど、なに?
ピカピカ光ってる。」
勇はハープの羽根の先を見る。
自動販売機だ。
確かに外では動いてないだろう。
「自販機だ。」
勇は実演して見せる。
小銭を入れて、ボタンを押す。
カコンッ…!
飲み物が落ちてくる。
ペットボトルを開けてやる。
二人は驚いて飲んでいく。
「美味しい!」
「もっと!」
二人は勇を揺らす。
「揺らすな。」
勇はギルドにいつつけるのだろうと思いつつ気持ち悪さの危機も訪れそうだった。
勇一行はギルドにたどり着く。
同じビルに併設されているのに、たどり着くのに時間がかかった。
あれからもあれやこれやと説明させられそうになった。
なので、全部無視した。
シルフとハープは拗ねている。
「勇なんて知らない!」
と言いつつ、ついてくる二人。
勇はギルドのカウンターに行く。
そこの受付嬢に聞く。
「不思議な小槌についての依頼はないか?」
ないとは思うが、一応聞いてみる。
「不思議とは?」
受付嬢が素朴に聞く。
勇も確かにと思いつつ、周りを警戒して言う。
「振ると自分が願った物が出てくる。」
受付嬢が疑心の顔をしている。
それはそうだと思う。
しかし、受付嬢が依頼帳をめくり始める。
「不思議な小槌…小槌…。」
「ないですね…。」
受付嬢が残念そうに言う。
勇も期待していなかったので落胆はしない。
「ありがとう。」
切り替えて、飲んでる人に情報収集しようと振り返る。
「お主…。」
突然、声をかけられる。
そちらを向くと、杖をついた初老の男がそこに立っていた。
「何か?」
勇が怪訝そうに聞く。
初老の男は杖をつき、近づいてくる。
そして、椅子に腰掛ける。
「お主…不思議な小槌を探しておるとな?」
勇は目を見開く。
「いや、少し聞こえてしまいましてな…。」
初老の男はホッホッホと笑う。
「知っているのか?」
初老の男に促されて、椅子に座る。
「ここよりしばらく行ったところに村がありましてな。」
初老の男は遠い目で外を見る。
「そこに一ヶ月程前に現れたんです。」
勇は初老の男に詰め寄る。
シルフとハープは驚く。
勇のそんな姿を見たことがなかった。
「あったのか?それは今、どこにある!?」
初老の男は気に留めない。
「今もそこにあるかは分かりません。
しかし、確かにあった。」
初老の男は俯く。
「私が使いましたから…。」
「願いが叶ったか?」
初老の男はゆっくり頷く。
勇は確信した。
小槌の存在を。
「ここより東に2日ほど行ったところに村がありました。」
勇は感づく。
ゴブリンに襲われていた親子の証言と一致する。
「そこに突如、小槌が現れました。」
初老の男にあった最初の余裕はなくなっている。
「私はその小槌を使った…。」
苦虫を噛み潰したような顔になる初老の男。
「そして、億万長者になった。」
「…。」
勇は金を願ったのかと納得する。
「しかし、その金はモンスターを呼び起こしてしまった。」
勇は眉間に皺を寄せる。
「金を好物としたドラゴン。」
初老の男が続ける。
「ドラゴンは私の金を狙い、村を襲った。」
「村民は散り散りとなり、私も…。」
この話も親子の話と合致する。
親子はどうして村が滅んだか知らないようだが。
この初老の男。
自分のやってしまったことの罪の意識に虚勢を張っていたというところか。
勇は苦笑する。
「そこであなたに依頼があります!」
(本題か…。)
勇は感づく。
「その村に私の一人娘が残ったままなのです…。」
勇は驚く。
(なんでそんなことになった?)
「皆、逃げおおせた。
しかし、私の娘だけは何故かドラゴンに気に入られ、捕らえられたのです。」
初老の男は勇の手を握る。
「何度か依頼は出したのです!
しかし、あの村から帰るものはいなかった!」
涙ながらに勇に訴える。
「どうか!どうか、娘を救い出して下さい!」
勇は考える。
どっちみちその村には行く。
しかし。
(厄介なことになった…。)




